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6/SEP/2025 update | ||
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YouTubeの過去動画を見ると、自分のスキー技術の変遷がよく分かります。ここにあるのは16-15年前、つまり2010年頃の映像。この時期の僕は「ヒールフリーだからこそ可能な、パワーレスなカービングターン」を目指していたようです。 映像を見ると特徴は明らか。アルペンスキーで一般的な「上下動」がなく、リズムもなく、ただつるつると不整地を滑り降りています。外スキーが自然に大きな弧を描いているのも分かります。 当時よく話していたのが「X軸とY軸」。
ヒールフリーでは踵が解放されているため、一歩踏み出す動きがそのままX軸の操作につながります。包丁に例えるなら、上から振り下ろすのがY軸、刺身を引いて切るのがX軸。両方の組み合わせですが、ヒールフリーではX軸を主体にする方が合理的な可能性すらあります。 この頃の外スキーの弧は「オートマチック」な動きです。外足を意識して動かしているのではなく、内足の操作が外スキーを自然にX軸方向へ導いているのです。動画後半の床での動作説明をスローで見ると分かりやすいでしょう。 ターンの終わりで外足の足首は伸びた状態。そこから縮みながら内足が先に回旋し、その動きに引っ張られるように外スキーが円弧を描きます。しかも常に母趾球のサイドが接地したまま浮かないため、きれいな谷回りと山回りが生まれるのです。これはアルペンスキーではできない動きです。ヒヒヒ。 なぜ?そもそもターンの終わりに外スキーの足首なんて伸びませんからね。ここ大事。だからローカットブーツ履いてるんですよ。フフフ。 |
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前半は横滑り、そしてズラシについての着眼点です。 斜面上でスキーを横に向け、身体を真っすぐに立てた状態から始めます。脚は山側と谷側に分かれていますが、通例、山側の脚の方が曲がっています。その山側のスキーのエッジ角を緩め、進みたい方向に軽く押してあげます。ここで言う「押す」とは、体重を乗せることではなく、曲がっている脚を伸ばす動きのことです。山側の脚はすでに曲がっているので、そこから伸ばすことができます。エッジ角を緩め、押し出す方向はフォールライン方向、前方向、後ろ方向と様々。ここで身体や目線の向きは関係ありません。 そして、この横滑り/ズラシはブレーキの要素であり、圧雪斜面や硬い斜面でブレーキを調整しながらかける運動です。この「押してズラす」力加減を説明する時、僕がよく使うのがホールケーキの「ナッペ」の例えです。回転台の上にスポンジを置き、生クリームをステンレスのヘラで均一に塗っていく――あのヘラがスキーです。押し当てる繊細さやヘラの角度。これが横滑りのイメージです。決して力技ではありません。まとめると、横滑り=ズラシは**「山側のスキーの外側エッジ」をメインに使う**。傾けて押すのであって、乗るのではない。イメージはケーキのナッペです。 冒頭に示したアルペンスタンスとテレマークスタンスでの横滑りを比べてみます。両者に共通して見えるのは、身体が「くの字」に屈折していること。アルペン用語で言えば外向傾です。これは「谷側のスキーに体重を乗せている」時に現れる、もっとも一般的な形かもしれません。 しかしB-teleでの横滑りでは、身体は真っすぐに立っています。なぜなら山側の脚を押し伸ばしているからです。この「真っすぐな身体」が、後半のひねり・ひねり戻し・回転軸の動きにつながります。 後半では、アルペンスタンスとテレマークスタンスの二通りで、横滑りからの回転(スピン)を紹介しています。アルペンスタンスよりもテレマークスタンスの方が、フォールラインに対して体全体が強く捻られるため、ひねり戻しの際の開放パワーがより強く出力され、スキーがより速くスピンします。つまり、どちらのスタンスでもスピンは可能ですが、テレマークスタンスにする理由は、より強い捻りとひねり戻しの力を生み出すことにあります。その力さえあれば、スキーは90度以上、しかもオートマチックにスピンします。ヒールフリーもしくはローカットブーツであることのできる利点です。 ここから次のステップは、ズラシで押し伸ばした身体や脚が**「フッ」と縮む瞬間**です。この一連の動きで見られる特徴的な姿勢が、B-teleのアイコンスタンスです。 アイコンスタンスは、ブレーキで押し伸ばした状態から身体が瞬間的に縮んだスタンスで、以下の特徴があります。
イメージとしては、床に仰向けに寝て膝を立てる動作に近いでしょう。背中、お尻、両足が一直線上に並び、この一直線が回転軸となります。 テレマークスタンスでズラシにより溜めた捻りのエネルギーを、アイコンスタンスで縮むことで解放します。これにより強力なひねり戻しが生まれ、回転軸が真っすぐであるためスキーはほぼその場でスピンします。また、しゃがむのではなく「縮む」動きでスキーは瞬間的に空中に浮くため、スピンの速度も増します。 B-teleの連続ターンは、横滑りでの押し伸ばし/ブレーキ要素、身体を縮めてのアイコンスタンス(加速要素)、伸ばしひねりと縮めひねり戻し、真っすぐな回転軸という要素が組み合わさって初めて完成します。前半のブレーキ要素から後半の加速・回転要素へと自然に発展する一連の流れが、この動画で表現されている動きです。 |
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B-tele アイコンスタンスの説明B-teleのアイコンスタンスとは、ズラシで伸ばした身体(脚)を、縮めて元に戻した姿勢を表します。 見た目の特徴:
機能的な原理:
身体感覚・イメージ:
まとめ:
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皆さん、自分の滑りを動画で確認したことはありますか? 実際の滑走中、板の動きを目で追えている人はほとんどいません。僕自身もそうで、スキー板は視界に入らず、想像しながら操作しています。 今回の自撮り映像から得られた気づきをシェアします。NTN+ステップ板、少し雪が重いコンディション。滑り出すとすぐに内足(後ろ足)がふらつき、数ターン後に外れてしまいました。滑っている最中は感触で「おかしい」と思うだけですが、映像で初めてその原因が見えたんです。 僕の操作の基本は、内足テールを使ったブレーキ。硬い斜面ではズラシ、深雪では潜らせる。やっていることは同じで、テールを「1→2→3→4」と動かすことでスキーをコントロールします。その軌跡がシュプールとして雪上に残るわけです。 ローカットブーツではスムーズにできるこの動きも、NTNでは作用点がズレるため難しくなります。その結果、内足が不安定になったのですね。要するに、僕の滑りは「背後=内足テールでブレーキをかけている」ということ。これを知れたのは自撮りのおかげです。 2025年4月8日 |
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アルペンスキーでは「小回り」「大回り」という言葉をよく使いますよね。日本のスキーヤーやインストラクターにとっては、当たり前のように耳にする表現です。「次は小回りしてみましょう」「今度は大きく回ってみましょう」──つまり、自分から意図してターンの大きさを選ぶのがアルペンの特徴です。 ではテレマークではどうでしょう?「テレマークで小回りしてみよう」「テレマークで大回りしてみよう」と言うのも、もちろん成り立ちます。 ただ、今回の動画で僕がしているのはB-teleです。見た目だけで言えば「小回り」に分類されるでしょう。でも、ここが大事なところで、僕自身は「小回りしよう」と意図しているわけではないんです。むしろ自動的、受動的。斜度があり、落下の力に任せて左右交互にブレーキをかけていったら、結果として小回りっぽいリズムになった──それが現実です。 ではなぜスキーがクルッと速く回るのか?ポイントは二つ。「ブレーキ」と「回転軸」です。ヒールフリー、特にローカットブーツなら回転軸をまっすぐ保つことができる。その軸と、溜まった力、そして捻りが合わさることで板が軽快に回るのです。 整理すると──
こう考えると、テレマークって急斜面でとても便利だと思いませんか? |
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皆さん、まず僕の滑りの特徴をお話しします。私は腕を上げません。肘を前に出しません。肘がカクカクもしません。なぜか? それは肩を前にかぶせていないからです。 多くのスキーヤーに見られる典型的なシルエット──肩が前に出て、顔も前に出て、腕も前に突き出している──こういう姿、見覚えありませんか? アルペンでもテレマークでも、頑張ってターンしている人によく見られる姿勢です。 では、なぜそうなるのか。腰やお尻が後ろに下がってしまうからです。そのバランスを取ろうと、肩を前にかぶせ、腕や顔を前に出す。いわば「相殺の動き」です。 では、どうして腰やお尻が後ろに下がるのか?それは足首が動かないブーツ、踵を固定するアルペンシステム──ここ数十年の一般的なアルペンスキーですね──では、小さくなると自然と腰が後ろへ移動してしまうからです。 そして「小さくなる」動きの理由。多くの人は「膝を曲げながら荷重する」という動作をしているからだと思います。ですが、正直、僕にはこの動作の意味が理解できません。だから僕はやりません。 一方で、僕も動画では小さくなっています。冒頭でウェーブを越えたとき、確かに姿勢が沈み込んでいます。でも肩は前に出ていない。腕も動いていない。上半身は立ったままです。 なぜか?膝が前に出ているからです。ローカットブーツ(T4)で足首が動くから。テレマークなので踵が上がるから。結果として膝が前に出て、腰やお尻の真下に足をキープできる。沈み込んだ瞬間でも「上半身―腰/お尻―足」が一直線になっています。これはアルペンではできません。なぜならアルペンは膝が前に出ないから。だから前述の「典型的シルエット」になってしまうのです。 ここで整理しましょう。
板をたわませる力は「関節を伸ばす」ことで調整します。これがB-teleの動きです。一方で、足の前後差こそがテレマークの特徴だと言いながらも、やっていることはアルペンと同じ──それを僕はA-teleと呼んでいます。 どちらを選ぶかは、皆さんの好み次第です。 |
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皆さん、私がNZでクロスカントリースキーのインストラクター資格を取ったときに、ノルウェーの先生からいただいた忘れられない言葉があります。 「Walk on your ski, not on snow.」 考えてみてください。硬いアスファルトの上なら、酔っ払っていたって歩けますよね? スニーカーで硬い地面を歩くのと、柔らかく曲がるクラシカルブーツで硬いスキー板の表面を歩くのは、実は同じことなんです。これ、凄い発想だと思いませんか? 普段、私たちは靴底で「硬い」「柔らかい」を感じています。だからこそクロスカントリースキーにはビンディングが必要なんです。いつも靴底の下には硬い板がある。だから安心して、自然に歩ける。まるで日常と変わらない感覚で。景色を楽しみながら、隣の人と会話をしながらでも歩けるんです。 一方で、日本ではよく「道具は身体の一部」と言いますね。この場合、境界はスキーと雪面との間にあると考えがちです。でも、ノルウェーの方が教えてくれた境界線は違います。靴底とスキー(あるいはビンディング)の間。 これはスキーを「移動の手段」として育んできた文化があってこその視点なんだと、私は深く感じました。じぃ〜〜んと心に響いた瞬間でした。 |
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皆さん、今日はスピードコントロールについて話しましょう。 まずクロスカントリースキーを例に考えます。コースを走るとき、スピードを上げるには自分の力で出力しますね。そしてスピードを落とすにはブレーキ操作が必要です。車で言えばアクセルとブレーキ、自転車で言えばペダリングとブレーキにあたります。 では、ダウンヒルスキーはどうでしょうか?
そう、つまりスピードアップもブレーキの操作の延長なんですね。スピードを上げるために特別な力を出すのではなく、ブレーキをどのタイミングでどれだけリリースするかがスピードコントロールのカギになります。 ダウンヒルスキーでよく言われる「いかにスピードをコントロールするか」というのは、結局のところブレーキ操作をいかに上手に行うかということと同じです。 |
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皆さん、今日は「テレマークターンって何ですか?」という問いについて考えてみましょう。 僕の答えは、こうです。 「同じ部族であることを示す証(あかし)、あるいは入れ墨のようなもの」 ちょっと変わってる表現ですね。では具体的にどういうことか。 ヒールフリーの道具なら当然テレマークターンだろう、という思い込みの消し難さ、という点で僕はこれを“入れ墨”と表現しました。さらに言えば、「稽古における作法」と考えることもできると。 テレマークターンは、意図をもって表現される動きです。何も知らない子供が自然発生的にする姿ではありません。だからこそ「お稽古」という表現がピッタリ合うんです。上手下手も作法の一部。 そして面白いのは、テレマークスキーをしている人は自然とテレマークターンをしている人に目が向くこと。「あ、テレマーク発見!」と感じる瞬間です。僕の場合、それが嬉しい感情につながります。ラッキー!プラスの感情ですね。 一方で、テレマークの道具を履いてアルペンターンばかりしている人を見ると、どこか悲しい、残念な気持ちになります。でもこれは上手下手の問題ではありません。「同じ部族なのに…」という感情が根底にあるんでしょうね。。僕自身、A-tele人生が長かったのでよくわかります。 さて、次回は「B-teleはテレマークターンなんですか?」について話します。お楽しみに…? |
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皆さん、おはようございます。今日はちょっと**テレマークスキーって何?**というテーマについて、朝ジョグしながら考えてみました。 ジョグや自転車に乗りながら、ずっと何かを考えるのって、子どもの頃から好きなんですよね(←赤毛のアンか!?)。椅子に座って考えるより、建設的でスッキリするイメージがあります。 さて、テレマークスキーをどう説明するか。まずは順番を整理してみます。
まとめると、僕の結論はこうです。 「ヒールフリーのジャンルの中で、ダウンヒルに向けて進化してきたもの。そして現在はNTNに至る」 スッキリしましたね。ジョグ効果かも(笑)。 ところで、「ヒールフリーのジャンル」とは何でしょう? 僕がテレマークを始めたころは革靴でした。そしてすぐに75mm規格のプラスチックブーツが登場。さらに現在はNTN規格も。30年の変遷を見てきた者として言うなら、「ハード化の一本道だったなぁー」と感じます。 ただし、今からテレマークを始める人にとっては、現状が最初のテレマークです。「ハードになったなー」なんて感覚はありません。アルペンスキーと同じゲレンデで滑る、ダウンヒルのテレマーク。 ちなみに、数年前からロテフェラー社のHPを見ると、3pinビンディングはテレマークのページにはなく、バックカントリーに分類されています。BCクロカンやXPLORE、3pinはバックカントリー。NTNがテレマーク。 これを見るたびに、「うちのテレマークスキースクールって、本当にいいのかな?」とか、「看板の『楽ちんテレマーク』って再考すべきじゃない?」なんて、つい考えてしまう今日この頃です。 この調子で、次回は**「テレマークターンとは?」**に続きます(←大丈夫か…?)。 |
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皆さん、今日は「スキーが上手」って具体的に何でしょうね? 僕の場合、着眼点は大きく三つです。
この三つの要素が揃っている人を、僕は「スキーが上手だな〜」と判断しています。 面白いのは、「ターン」という要素はここには出てこないことです。そしてテレマークでも同じです。 あくまで、僕の場合の基準ですが、皆さんも自分なりの「上手の定義」を考えてみると面白いですよ。 |
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皆さん、スキーはターン弧を連続して描くものだ、と思っている方は多いかもしれませんね。 実は、スキーとは「ブレーキ」と「方向転換」の組み合わせで滑るものなんですよ〜。 まずブレーキについてです。
どちらも主にインサイドスキーのアウトエッジ、しかもスキーの後ろ半分を使ってバナナを描きます。 次に方向転換です。ここでは3種類を用意しています。
まとめます。練習すべきポイントは次の通りです。
これを身につければ、ゲレンデだけでなく山の稜線から滑り降りることも可能になります。 |
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皆さん、今日はA-teleとB-teleの違いについてお話しします。 まず基本的な考え方の違いです。
Aの場合、ターンにはブレーキ操作も含まれてしまいます。 ターンの入り方も違います。
その結果、ターン弧も変わります。
急斜面での操作も差があります。
板への力のかけ方も異なります。
ここまでの部分は、アルペンスキーもテレマークも共通です。 さて、テレマークの場合に話を絞ると、
見せ場の違いも面白いです。
ただし、複雑なコンディションの山で滑る場合、僕はB-teleモードで降りてきます。 |
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皆さん、今日はスキーと身体の力の出し方についてお話ししましょう。 まずは**center of mass(重心ではなく骨格の中心)**から考えます。 このcenter of massから同じ距離にある関節は、ペアで似たような動きをします。
例えば肘と膝を同時に曲げるのは簡単です。しかし、肘を曲げつつ膝を伸ばすと、一瞬戸惑いますよね。 さらに、center of massに近い骨は大きく、そこから離れるほど小さく細かくなります。筋肉や腱も同じ。 ホワイトボードに図を描くとわかりやすいですね。
なんとなくイメージできますか? ここからもう一歩。スキーを上達する時、腰や肩の向きに着眼する人が多いですが、これはあまり有効ではありません。 一方で、手や足はどうでしょうか。 さて結論です。 ダウンヒルスキーには大きな力が必要です。 正解は、出力のスイッチや目盛りを手や足に置くことです。 これが僕のB-teleの考え方です。 |
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皆さん、ちょっと考えてみましょう。テレマークスキーヤーって、テクニックの話をするのがあまり得意じゃないように見えませんか? では、テレマークスキーを始めた人の目標って何でしょう?いきなり「ゴール」とは言わずに、当面の達成目標としましょう。それはおそらく……テレマークポジションで安定したターンを完成させることではないでしょうか。そう、あの足を前後に開く滑りですね。 でも、ここがポイントです。その当面のゴール、案外行き止まりだったりするんです。そして十年以上経ってもそこからあまり成長していない……。
おそらく、薄々気づいているのではないでしょうか?スキーのゴールと、演じることのゴールは別物だと。 もしも、あの足を前後に開いた滑り方がスキーのゴールと同じライン上にあるなら、堂々と技術論を交わせるでしょう。でも現実はどうでしょう。YouTubeを見ても、演じることに努力している人が50%。残りの半分は、その段階を終えた後にアルペンスキーの力強さに近づこうと奮闘し、さらに半分は弱めの道具でまた演じ始めている……僕の見るところはそんな感じです。 では、本当のスキーのゴールとは何でしょう?僕はこう考えます。
例えば、固定されハイカットなアルペンブーツのアルペンスキーにはアルペンスキーならではのゴールがあります。 このゴールの周囲を、キャッチーなワンワードで表現できたら、と僕は思っています。 この住み分け、素敵じゃないですか? さらにもう一つ。テレマークにおいて、足を前後に開くことは道具の特性として可能で、アイコンのように思われています。でも、ダウンヒルにおいては必ずしも利点にはなりません。 さて、ここで皆さんに問いかけます。 |
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さて皆さん、ブレーキングの要素は二つあります。「ズラシ(skidding)」と「潜らせる(digging)」ですね。 硬い斜面ではズラシを使い、雪に厚みのあるコンディションでは潜らせるを使います。ここで重要なのは、どちらの場合も山側のスキーをメインに使うという点です。体の関節を伸ばしてスキーをたわませ、そこに力を押し込みます。着眼点はたわませるのはスキーの後ろ半分だけということ。トップからテールまで全体をたわませるわけではありません。テクニックの詳細はまた別の機会に説明しますね。 さて、ブレーキ操作が終わったら関節を縮めて戻します。関節を縮めて戻すと、一瞬スキーが空中に浮き、スピードがアップします。もし事前に体をひねっていれば、そこで瞬間的に回転も可能です。つまり、捻る方向で山側のスキーを押し伸ばしておけば、戻したときに板は自然に回るということです。それも空中で、しかも素早く。 その後は、別のサイドのアウトエッジの後半部分に徐々に力を加え、同じ動作を繰り返していく。これが僕の滑りの基本パターンです。 |
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皆さん、ダウンヒルスキーのテクニックでよく語られるのは「ターン」じゃないでしょうか? つまりターン弧のことです。確かにターンそのものに楽しさやスリルはありますし、僕もそれはよく分かります。でも、スキーインストラクターとして技術を眺めると、最優先で大事なのは「ターン弧をどうブラッシュアップするか」ではなくて、どのようにスピードをコントロールして降りるかなんですね。 驚くかもしれませんが、ターン弧とスピードコントロールには実は直接の関係はありません。なので、ここではスピードコントロールの要、つまりブレーキ操作について話します。ブレーキが効くか、また強弱を自在に操れるか。ここがポイントです。自然とスピードアップもついてきます。斜面では物理的に落ちますから、スピードコントロールとは要するに「減速のコントロール」と言えます。加速は勝手に起こりますからね。 ブレーキには二つのパターンがあります。一つは「スピードが落ちるのを待つパターン」、もう一つは「自由にスピードを落とせるパターン」です。前者はよくターン重視の方に見られます。スピードが自然に落ちるのを待ってから次のターンに入る。日本語で言う「乗る」という状態かもしれません。中級斜面までは快適ですが、急斜面では苦手です。そもそも40度以上の斜面でターンしますか? 多くの場合、横滑りでズリズリ降りるでしょう。 ここで使えるスピードコントロールテクニックが、汎用のブレーキテクニックです。硬い斜面ではズラシ(skidding)が有効です。圧雪ゲレンデもそうですね。一方で、パウダーやクラストなど、雪に厚みのある場合は板が沈んでズラシにくくなります。そんな時はどうするか? 板を潜らせる(digging)んです。板が沈むことでスピードが落ちます。急激なスピードダウンで転倒する方も多いと思いますが、原因は二つ。 一つ目は板全体が沈むこと。具体的には、板前半部分が抵抗になって急に止まるため、「うっ!」となるわけです。だから埋める場合は、板全体ではなくブーツから後ろの半分で十分です。ここをブレーキの強弱として操作します。 二つ目は「乗っている」状態です。体重が一定のままだとコントロール感が薄れます。そこで体重を圧に変換します。運動で言えば「押す」と「引く」です。これで埋め具合を調整でき、スピードコントロールにつながります。つまり埋めてスピードダウン、浮かしてスピードアップ。板のテールを使うという点はズラシでも同じです。テールをズラしてブレーキ、戻して解放。 ここで意外かもしれませんが、このブレーキ操作を主に行うのは山側のスキーです。谷側ではありません。山側スキーのアウトエッジ、しかも後ろ半分です。ダウンヒル側のスキーは別の使い方がありますのでまた説明します。 まとめると、ダウンヒルで大事なのはターン弧ではなくブレーキです。ブレーキの役割を果たすのは山側スキーのアウトエッジ後半。硬い斜面ではここをズラして、厚い雪ではここを埋めてブレーキ。ブレーキは待つものではなく、操作するものです。強弱を操り、伸ばして押し、戻して引く。この動きの変換がヒールフリーの長所を活かすポイントです。 |
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さて皆さん、アルペンスキーに比べて、ヒールフリースキーはより回転半径の小さいターンができます。なぜかというと、回転軸をより真っすぐに作れるからです。 例えば、体を縮める動作をすると、踵が上がることで膝が前に出せます。すると上半身の真下に両足をキープでき、そこから上半身と両足を結んだ線が回転軸になります。この回転軸が真っすぐだと、最小の円弧でターンできるんです。いわばその場でスピンするようなイメージですね。 ここで注意ですが、「縮む」動作と「しゃがみ込む」動作は違います。縮んだ瞬間、スキーは一瞬空中に浮きます。空中では、スキーが一番回りやすくなります。外から見ればショートターンに見えるかもしれません。でもこの動作をゆっくりにすれば、中回りや大回りにも応用できます。非常にシンプルです。 さらに、身体を縮める前には必ず身体を伸ばしておくことが必要です。以前もお話ししましたが、身体を伸ばすことでブレーキを掛けることができます。具体的には、山側の足の関節を伸ばすことで、くるぶしからスキーにパワーが伝わり、スキーのテールが**ズラシ(skid)**となりブレーキになります。深い雪では、テールを埋めることで同じようにブレーキになります。 つまり整理すると、ブレーキは身体を伸ばして、回転は身体を縮めて行う、これがヒールフリースキーの基本的な動きです。 |
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皆さん、まず最初にお伝えしておきたいのは、僕が勝手に「A-tele」と「B-tele」とでテレマークを区分けしているだけであって、これが日本全体の一般的な考え方というわけではありません。 重要な点として、B-teleは僕のオリジナルです。このアイディアに到達するまでに、テレマークスキー専門のインストラクターとして実に25年ほどかかっています。上に少し資料を添付していますが、理解の助けになればと思います。 さて、まずはA-teleについて。A-teleとは何かというと、B-tele以外のすべてのテレマークスキーテクニックの総称です。つまり一般的なテレマークはすべてA-teleの中に含まれます。技術論もティーチングメソッドも全部です。僕はAを否定してBを作ったわけではなく、正確には「AもBもある」という立ち位置です。 Aは長い時間をかけて存在してきたもので、その存在には理由があります。腰を落として足を前後に開く動作には、物理的に意味がある場合もあれば、楽しさやワクワク感、アルペンスキーとの違いを楽しむための理由もあるでしょう。僕自身も昔はAの中で活動していました。ターン弧をどう作るか、その中でテレマークポジションをどう安定させるかを考え、受講生に伝えるのがインストラクターの役目でした。当時は、ターン弧ありきだったんです。 ところが、B-teleを構築するきっかけとなったのは、ある疑問でした。「稜線直下の超急斜面で、本当にターンしたいのか?危なくないか?」というものです。アイシーで急な斜面では、まず横滑りで降りていくのが安全です。こんな状況で足を前後に開く必要はあるのか? 山側の足のかかとを上げてもいいのか? そもそもターンって何だろう? テレマークポジションは必要なのか? こうして急斜面での経験が、ターンそのものを疑問視するきっかけになりました。 そこで着目したのが、ダウンヒルで本当に必要なのはブレーキ操作だということです。ブレーキ操作が上手な人はスピードをコントロールするのも上手です。このブレーキ操作そのものに着目して体系化したのがB-teleです。Aは「ターン弧」、Bは「ブレーキ」。あらゆる斜面や環境に対応できるのはBです。Bがあれば、どんな斜面でも降りてくることができます。 さらに、Bを構築したことで気づいたことがあります。それは、アルペンスキーよりテレマークスキーの方が、いくつかの点で優位だということです。Aはターン弧を楽しめる条件の下で価値を発揮します。例えばリゾートゲレンデや快適な斜度、安心できる環境では、積極的な運動や大胆なターン、スピードを楽しむことができます。場合によっては力強さや暴力性さえ楽しめるでしょう。 一方、B-teleの世界では、より静かに、より柔らかく、より軽やかに滑ることができます。AもBも、どちらもあって良いのです。 というわけで、長々と話しましたが、まとめるとこうです。
両方の考え方を理解して、状況に応じて使い分けるのが、僕の提案するテレマークスキーの考え方です。 |
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皆さん、今日はLead Changeについてお話しします。 結論から言うと、B-teleにはその言葉も、意図的に行う運動も存在しません。え?動画を見るとワンターンごとに前後が入れ替わっているじゃないか? それをLead Changeと呼ぶのでは? と思うかもしれませんね。おっしゃることはよく分かります。でも、僕の体系では本当に意図した動きとしてのLead Changeは存在しないんです。 なぜかというと、B-teleではターン弧を前提にスキーを考えないからです。何度も言っている通り、B-teleの中心はブレーキ操作です。硬い斜面では「ズラシ」、雪に厚みがある場合は「埋める」。これがブレーキ操作の具体的な内容です。 では、皆さんがターンに見えている部分、その中の“Lead Change”と思われる部分はどうか? 僕の感覚ではこれは**「スピン」**と呼ぶ方が適切です。空中での素早い方向転換、両足同時に行います。その後は、山側のスキーを使って「ズラシ」と「埋める」を組み合わせてブレーキをかけ、速度を調整します。この時、山側の足首で斜め方向に圧をかけます。ですので、ハイカットブーツでは踵が上がって見えますし、ローカットだとほぼ足首の動き通りの見た目になります。踵が上がっているかいないかは、ブーツによるものであって、クローズスタンスやワイドスタンスの意識とは関係ありません。 ここまでがブレーキをかける山側のスキーの役割です。では谷側のスキーはどうなるのか? これは単純に前に押し出されるだけです。押し出された結果、自然に前に位置します。押し出す力を作るのは、空中でスピンした後に伸ばす山側のスキーです。山側のスキーを伸ばして押しずらすと、谷側の足は前方に逃げることになります。 ここで重要なのは、この「前方」という感覚です。自分の体の前方に足が位置できるということは、足首が伸びる動作が可能なブーツだとやりやすく、ローカットブーツが適しています。そして、この脚を伸ばす動作をしながら、必要な圧をかけて進行方向にスキーを滑らせるイメージです。まるで柳葉包丁でお刺身を切るような、滑らかで精密な操作です。 まとめるとこうです:
つまり、僕は直滑降の中でスピンとブレーキを繰り返しているだけです。ターン弧ベースの思考ではなく、AではなくBに分けた理由はここにあります。 |
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皆さん、今日はAとBという区分で説明します。これは理解を分かりやすくするための便宜上の表現です。 まず A-tele です。A-teleの基本は、板をたわませる力の主体が自分の体重であるということです。両足に体重をどう分散するか、と議論されることもありますね。「前の板に70%」「いや後ろの板に80%」など色々ですが、いずれにしても体重が主役です。そして、イメージのベースにはやはりターン弧があります。 一方、 B-tele では注目するのは山側の板だけです。力の源は押す力であり、どのくらい押すか、どのくらいズラすか、あるいはどのくらい埋めるか、という操作を板のテールのみで行います。そして後傾はせず、目的はブレーキ操作です。 このB-teleの操作は、ハイカフブーツよりもローカフブーツの方が適しています。なぜなら、足首の可動域が広いほど、押す力の微調整やズラす・埋める動きがしやすく、B-teleのアイディアがより機能するからです。 まとめると、Aは体重を使った板のたわませ、Bは足首の可動域を活かした押す力でのブレーキ操作、という違いになります。 |
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皆さん、自転車や車にはブレーキがついていますね。スピードが出たらブレーキをかけてスピードを落とします。緩やかにブレーキをかけながら坂道を下ることもありますよね。 スキーも基本は同じです。弱いブレーキをかけ続けながら、コンディションを確かめつつ斜面を下りる。これがB-tele的な考え方です。 ではスキーの場合のブレーキとは何か? それは板の向きと使い方によって操作する力です。僕の場合、硬い斜面ではスキーを横にズラすことで摩擦を作り、ブレーキとします。これを「skidding」と呼びます。一方、雪が深い場合は板を雪の中に埋めて減速します。「digging」ですね。コンディションに応じて、この二つを組み合わせて使います。 ここで重要なこと。自転車や車はターンを繰り返して減速するわけではありません。装置であるブレーキを操作して減速します。スキーも同じ考え方でよいのです。減速はターン弧ではなく、ブレーキ操作で行う。 僕の言葉で言えば、硬い斜面ではskidding、深雪ではdigging、これがブレーキ操作です。ターンの形ではありません。これって、もしかすると革命的な着眼点かもしれませんよ。 |