息子へ





風景



「そこまでは遠いよ。」と言われて

やっとたどり着いた先には 小さな ほんとうに小さな村があった

山の斜面にへばりつくように

肩を寄せ合って建つ数軒の家々

そこだけがまるで 時の流れに置き忘れられたような空間・・・・

不思議な静寂の中に その村は佇んでいた

人々の営みが 庭先に干された洗濯物からうかがえる

こんな 魂の柔らかくなる風景が

まだ私の身近にもあった



 

息子へ



父さんがちょうどお前たちの歳のころにも

胸が熱くなる 素敵な歌がいっぱいあった

何度も口ずさみながら 励まされ 生きる勇気をもらい

人生の一コマをまちがいなく刻んで 共に生きてくれた心震わせる歌があった

今 父さんにはお前が歌う歌の意味はわからない

でも きっとお前の心に響く何かがあるのだろう

昔の父さんがそうであったように・・・・・・・

今輝いているお前と同じように 父さんにもそんな時があった

いつの日か お前と二人で

そんな話でも してみるか



 

この道を




迷わずに この道にしてよかったと思います

ふりかえれば あの岐路で思案して

暗闇の中へ手さぐりで入っていく思いで選んだこの道は

まちがっていなかった

傷だらけになりながらも 何とかここまで歩いてきた・・・・

行き止まりになる道は

そんなにあるもんじゃありません

これからも迷わずに この道を進みたいと思います



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