回り道
手
君は赤ちゃんの手をみたことがあるか
紅葉のような 小さなその両手を
高く高く 宙に突き出し したたかに握りしめて 開こうとしない
だれから教わったわけでもなく まるでそこだけが
小さな意思をもって生きている
握りしめた掌には 何もない
何もないからこそ 無限の可能性を切り開けるのかも知れない
あのささやかな意志を 君は覚えているか
ろうそく
ろうそくを知っていますか
たよりない明るさだけれど なぜか不思議に
それを囲む人々の心を暖かくしてくれます
ろうそくが あんなにも暖かく見えるのは
何の見返りも求めず ただ命を燃やすことが
自分の仕事だと信じて
あるがままに生きようとする ろうそくの優しさが
わたしたちに 見えるからです
道
たとえば 山奥の村へ行くには たいがい谷あいの道が一本
その道が舗装され アスファルトになると きまって村は過疎になるという
道が悪いのではない
村から離れていく若者が悪いのでもない
便利さと引き換えに 失うものがあるということを
真剣に考えてこなかった 私たちの社会が
一本の舗装された道と引き換えに
村から 若者を奪ってきた
やり場のない憤りを
残された老人たちは ただ黙って呑み込んでいる
回り道
やさしすぎるからといって
生きる道を誤ることはありません
ただほんの少し遠回りするだけです
コンクリートで舗装された まっすぐで固い道よりも
ぬかるみや石ころがあり
れんげやタンポポ 曼珠沙華 名もない雑草に包まれた
回り道の方が 私は好きです
大切なあなたと ともに歩きたいと思う道です