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| 一つ | |
| うれしいことが一つあると、 | |
| やさしい言葉を一つ、周りの人にかけてやれる。 | |
| 自分では決して気付かないが、 | |
| まちがいなく、そんな言葉が自分の中で一つ生まれている。 | |
| だから | |
| うれしい、楽しいと感じる心には、 | |
| 人を結びつける力がある。 |
| 伝える | |
| 転んで泣く子どもに、決して手を貸さない。 | |
| 泣けば誰かが助けてくれるという甘えを覚えさせないために・・・・・ | |
| 傷つき、悲しみに沈む人に、手を差し伸べる。 | |
| 泣きたければ泣いてもいい、 | |
| きっと誰かが助けてくれるという甘えも許されることを伝えるために・・・・ | |
| 転んでも、傷ついても、最後に立ち上がるのは自分だが、 | |
| 立とうという意思を育ててくれるのは、手段はいろいろでも、 | |
| 「あなたは私にとって大切な人です」と、メッセージを届けてくれる人・・・・・ |
| 断ち切る | |
| 柵・・・・「さく」とも読むが、「しがらみ」とも読む。 | |
| 川の流れに杭を打ち、竹や柴をからみかけた柵には、 | |
| 流れに乗っていろんなものがからみつく。 | |
| 人生の激流から自分や大切な家族を守るために、 | |
| 気付かないうちに何本も打ち込まれた柵に囲まれて、 | |
| 今の生活がある。 | |
| その一つひとつにからみつくものは、 | |
| いわばこれまで自分の築いてきたものが確かに守られたという証し・・・・・ | |
| 「しがらみ」を断ち切るとは、 | |
| 安全のために作られた柵を取り払い、 | |
| 無防備となることを意味する。 | |
| それをよしとする覚悟がなければ、使える言葉ではない。 |
| 決断 | |
| 決断を迫られた場面を思い出してみるとよい。 | |
| 意を決して判断をしたと思い込んでいるが、 | |
| 実は | |
| 勇気で補えたのは2割ほど・・・・・ | |
| 残りは、逃げ出したい不安や、先の見えない怖れであったはず・・・・・ | |
| ならば、どうしてそれでも決断ができたのか・・・ | |
| たとえどうなろうと、 | |
| その道を選ぶしか事態の解決はないと考え至ったからであろう。 | |
| 胸の苦しくなるような不安や怖れ、圧力があっても | |
| 人には、それらをはねのけて前へ進む駆動装置が備わっている。 | |
| 逃げ出さず、誠実に向き合うしかないという覚悟が生まれると、 | |
| この駆動装置は、それに連動して静かに動き始める。 |
| 回り道 | |
| あの時もっと要領よく立ち回っていたら・・・・・ | |
| 私には関係ない、と厄介な誘いや仕事を断ることができていたなら・・・・・ | |
| 人のことなど気にせず、自分を押し通すことができる勇気があったなら・・・・・ | |
| 自分の人生はきっと思いもかけない方向へ進んでいたのだろう。 | |
| そんなことを平然とこなす人を横目で見ながら、 | |
| それらができずにずいぶん回り道をしてきた。 | |
| 「不器用にしか生きられない」というのは、 | |
| ドラマや映画の中のセリフだと意にも介さなかったが、 | |
| 気がついてみると、何の事はない、まさに自分そのもの・・・・・・ | |
| 確かに要領よく、最短距離を駆け足で一気に登る生き方はできなかったが、 | |
| そんな回り道を歩んでも、何とかここまで来れたのだから、 | |
| もうしばらくこの道を行ってみてもいいのだろう。 | |
| 回り道は、見てくれは悪いが | |
| 不器用で平凡な人間の足にはやさしい道である。 |
| 軌跡 | |
| どんな人の人生にも光がある。 | |
| ささやかで、つつましい日々であったかも知れないが、 | |
| 幾多の障壁を乗り越えて何とか生きてきた・・・という事実は、 | |
| 誰はばかることなく、賞賛に値する。 | |
| 自分の人生を振り返るにはまだ若すぎる人たちも、 | |
| そろそろ人生の後片付けを始めた人たちも、 | |
| 等しく光っている自分の生きた軌跡を、見失うことがあってはならない。 | |
| 1年、5年、10年・・・・・・を生きてきたというのは、 | |
| ほんとうにすごいことなのだ。 | |
| だれもそんな自分を褒めないが、 | |
| 我ながらよくやった・・・と、せめて一言つぶやいてもいい。 |
| 贈り物 | |
| 劇的な出会いがあったのではありません。 | |
| もちろん、計算や打算があったわけでもありません。 | |
| 彼が貴方に惹かれたのは、 | |
| 貴方が見せてくれた、あのときの小さな笑顔だったのです。 | |
| その微笑みでどれだけ肩の荷が軽くなり、 | |
| どれだけ明日を生きようという元気をもらえたことか・・・・・ | |
| 貴方はもうとっくに忘れているでしょうが、 | |
| そんなささやかな贈り物でも、人は幸せな気持ちになれるのです。 | |
| 彼は | |
| そんな笑顔の奥に、貴方の温かさを見たのです。. |
| 旅 | |
| 絵を描くときに、素人なりに心がけている。 | |
| 一体何が描きたいのか、それが見える絵であるように・・・・・ | |
| 花一本、道一本を描いても、 | |
| その中に何を見つけたのかが見えるように・・・・・・ | |
| 老年を生きていこうとする今、素人なりに心がけている。 | |
| 一体「私」とは何者だったのか、その答えを見つけられるように・・・・・ | |
| 出会った人、別れた人、今自分を取り巻いている人たちは、 | |
| 「わたし」に何を残し、「わたし」は彼らに何を与えたのか、 | |
| その答えを見つけられるように・・・・・・ | |
| もう余分なものはとうてい背負いきれないので、 | |
| それだけを見つける旅にできたら、と思う。 |
| 子ども | |
| 子どもは、とにかく笑って育っていくもの・・・・・ | |
| 笑い、はしゃぎ、ふざけ回りながら、 | |
| 周囲の大人たちの温かい視線を、「これが愛情なのだ」と覚えながら | |
| 育っていく。 | |
| 笑えない子どもは哀しい。 | |
| 笑って一日を終え、満ち足りて眠りにつけない子どもは哀しい。 | |
| そんな子どもたちにしたくないから、 | |
| 親たちは、せっせと明るく笑える環境を作ることに汗を流す。 | |
| そして、その褒美として | |
| 力いっぱい笑いながら育つ我が子に、 | |
| 明日を生きる元気をわけてもらっている。 |
| 卒業 | |
| 卒業し、巣立っていくのは子どもだけではない。 | |
| かかわって共に生きてきた周りの大人も、いっしょに卒業を迎える。 | |
| 卒業証書などはないが、 | |
| 何かが一つ、確実に終わったという深い充実感がその証し・・・・・・ | |
| 巣立つ子どもの後姿を見送る時間が、 | |
| そんな大人たちの、静かな「卒業式」になる。 |
| ハードル | |
| 人生というレースには、 | |
| 跳び越してもよいハードルと、跳び越してはならないハードルがある。 | |
| 前者は跳び越さないとその先の走路が見えない。 | |
| 後者を跳び越すと周囲に多大の迷惑をかけ、自分も傷つく。 | |
| そんな理屈が分かっていても困るのは、 | |
| 目の前のハードルがどちらなのか、ということ・・・・・ | |
| 経験や洞察で、多くの場合見当がつくのだが、 | |
| 長い人生、一度や二度の見間違えはあるものだ。 | |
| 後悔や悔悟という名のペナルティーを覚悟さえしておけば、 | |
| とにかく跳んでみること。 | |
| ゴールにたどり着き、レースを振り返ったときに、 | |
| 跳んでもよかったのか、どうかは自ずとわかる。 |
| 癒し | |
| 癒される・・・というのは、 | |
| 何かで紛らわせて、嫌なことを忘れてしまうということではありません。 | |
| 真正面から向き合うことのなかった自分と、 | |
| 静かに話ができるということです・・・・・・ | |
| こんな自分が今ここにいると気づき、自分を限りなく、いとおしく思い、 | |
| 私とつながった多くの人やものとの縁を思い起こし、 | |
| すべての流れを止めて、静かに、じっくりと、 | |
| 自分に話しかける時間を言います。 | |
| だから、癒しの深さは、 | |
| 自分を見つめ、自分と語り合った時間の深さに比例します。 | |
| 癒されていたと分かるのは、 | |
| そんな自分との会話が終わったあとです。 |
| 教訓 | |
| 落ち込んだときこそ、 | |
| 夢や希望を持たなければならないと、誰もが知っているが、 | |
| これは、思ったよりむずかしいこと・・・・・ | |
| 体や心に受けたダメージは、口で言うほど生易しいものではない。 | |
| だが、 | |
| それでも沈んでいてはだめだ、と思うなら、 | |
| 何とか気をとりなおして、立ち上がるしかない。 | |
| 頼みになるものなら、何だっていい、 | |
| それに寄りかかってでも、とにかく立ち上がれ。 | |
| そして、息苦しくても「今日」を精一杯生きろ。 | |
| 今日が生きぬけたら、 | |
| 明日はもう少し楽になる・・・・ |
| 勝負 | |
| 「北風と太陽」は寓話としてはおもしろいが、 | |
| 厳密に言うと、旅人の外套を脱がすという勝負を選んだ北風のミスであった。 | |
| 旅人に外套を着せるという勝負であれば、北風は確実に勝っていただろう。 | |
| 桜の花芽は、北風が運ぶ寒気で目を覚まし、 | |
| 開花の準備を始めるという。 | |
| 今年、北風のあまり吹かなかった南国では、寝ぼけた桜が | |
| 開花の時期を間違えて、、遅れるとのこと・・・・・・・ | |
| 太陽の暖かさだけで、桜を咲かせることはできない。 | |
| 自分にしかない個性や特徴、役割を忘れて、 | |
| 相手の土俵で相撲をとれば、勝てる勝負も逃げていく。 |
| 計測器 | |
| 「知性」の有無は、 | |
| 対極にある「感性」と共に、 | |
| その人の値打ちや輝きを計る、最も優れた計測器となる。 | |
| では、 | |
| 知性・・・とは何か。 | |
| 知識でもなく、知恵でもない。 | |
| もちろん、学校の成績や学歴から生まれるものでもない。 | |
| ものを知り、覚え、使いこなせるようになっても、 | |
| 知性がある・・・とは言わないだろう。 | |
| 自分がいったいどれほどの人間か、は、 | |
| この問いに答えてみれば、ほぼ分かる。 |
| 夢 | |
| 人間とは妙なもので、 | |
| とっくに結論は自分でもわかっているのに、 | |
| 何か起こらないか、何か方法はないかと考える生き物です。 | |
| いくら考えても徒労だとわかっているのに、 | |
| あきらめきれない、どうにも困った生き物です。 | |
| でも、 | |
| その執念深さのおかげで、 | |
| 100年前は夢物語だったものを現実にしてきました。 | |
| 夢のような話だけど、こんなことができたらいいなあ・・・・ | |
| そう思うことは、まんざら夢とは言えないかも知れません。 | |
| 思い続け、考え続けているうちに、 | |
| 実は実現に一歩ずつ近づいていることだってあるのです。 |
| 軍師 | |
| すぐれた軍師とは、 | |
| 主はどんな人間か、を誰よりも理解し、 | |
| 主の能力が最も発揮される道を誰よりも早く、正確に見出せる人物である。 | |
| そんな人間や部下を「軍師」とは呼ばない現代でも、 | |
| 組織を率いるリーダーは、 | |
| これぞと見込む人物を、「三顧の礼」を以ってでも手に入れるべきだ。 | |
| 自分の考えを押し付ける軍師を持った将は、やがて自分を見失い、倒れる。 | |
| 有効な作戦を立てられない軍師を持った将は、迷いの中で墓穴を掘る。 |
| タテと横 | |
| タテに伸びる竹は、割れるときもあっけなくタテに割れる。 | |
| 横に広がる竹の根は、 | |
| たとえ大地が裂けても、容易に切れることはないという。 | |
| より高みを求めて、ひたすらタテに伸びることばかりを考えていると、 | |
| わずかな揺れにも悲鳴をあげることになる。 | |
| 地味だが、横へ広がりながら根を張る生き方が、 | |
| いざというときに我が身を救ってくれるということ・・・・・・・・ |
| 回り道 | |
| 主要な道の近くに、回り道として作った「バイパス」と呼ばれる道が、 | |
| いつの間にか主要道となり、これまでの主役だった旧道が回り道となる・・・・・・ | |
| 身近なところでよく見かける光景だ。 | |
| より早く、より快適に目的地へ向かうために、 | |
| 人々が考え出した、選手交代のドラマである。 | |
| ゆっくり、のんびりと目的地を目指したいなら、 | |
| たとえ快適でも、そのバイパスを降りるしかない。 | |
| 回り道はたいてい、今歩いている道の、そう遠くないところにある。 |