
| 足元 |
| 見つけようと必死になって探していたものが |
| 気がつけば 自分の足元にあったという話はよくあること |
| 目に触れたとき 大切なものになる予感がはたらいて |
| 知らず知らずのうちに足元に引き寄せておいたのだろう。 |
| なんだ こんなところに在ったのかと一人照れ笑いをしながら |
| ここまで引き寄せておいた自分の周到さに感心する。 |
| 大切だと思ったものは |
| 心配しなくても自分の身近なところにちゃんとある。 |
| うろたえて 右往左往しながら探す前に |
| 手を伸ばして触れるものの中にあるはずだからと |
| 自分に言い聞かせることにしている。 |
| やさしさ |
| やさしい心の持ち主は |
| 人のつらさを 自分のつらさにすることができる。 |
| そうしたいと思わなくても |
| 心が勝手にそう思ってしまう。 |
| 悲しみや苦しみに 歯を食いしばって耐えている人を見れば |
| 心の奥で「がんばれ、負けるな。」とつぶやかずにはいられない。 |
| いったい どこでそうでない人とそんなに違ってきたのか・・・・・ |
| きっと 背負ってきた荷物や乗り越えてきた壁の分だけ |
| 心のひだが柔らかくなっているのだろう。 |
| 見せかけのやさしさと 決定的に違うのは |
| それを笑顔に包んで あなたの前に差し出さないこと |
| 見せかけのやさしさは 笑顔でくるまないと |
| ボロがでてしまう。 |
| 道 |
| 世俗の汚れなど持たない 純粋な生き方があるはずだと |
| 考えたくなるときはありませんか。 |
| そんな夢のような話はないと否定する自分のどこかで |
| かすかに蠢く 小さな意思を感じることが・・・・・・ |
| 生きていく指針となる 確固とした信念を求めて |
| 日々 右往左往していますが |
| そんなものは そう簡単に手にはいるものではありません。 |
| こんなふうに生きてみなさい と指し示してほしいから |
| 人は本を読み 話を聞き 誰かを頼るのですが |
| それで「道」を得る人は稀です。 |
| ・・・・朝に道を聞かば 夕に死すとも可なり・・・・・ |
| 古の人がそう考えたことも素直にうなづけます。 |
| 抜け殻 |
| 満たされないと感じる日々の暮らしの中にいると |
| どこか遠くに まだ自分に割り当てられた幸せが |
| 残っていると思うのは 仕方がないのかも知れません。 |
| 人は 小さな幸せを一つずつ手繰り寄せながら |
| それを糧として生きていくものだからです。 |
| 味わい尽くされた幸せの抜け殻ばかりを見ていると |
| どこかで踏ん切りをつけなくては、という気持ちが揺らぎます。 |
| 殻はどう見ても殻・・・・・・ |
| 潔く見切りをつけて 新しい糧を探すしかありません。 |
| 割り当てられた幸せがまだ残っていると思っている間は |
| 自分の手元にある小さな輝きと温もりは見えないものだと |
| 心得るべきでしょう。 |
| 夜空を飾る満天の星たちは |
| 誰かのために光っているわけではない。 |
| ロマンとは |
| 偉大な勘違いである。 |
| 「切ない」という言葉には |
| それはどんなに辛くても乗り越えなくてはならないという |
| 意味が付加されている。 |
| うれしい、悲しい、なつかしい、などと |
| 人の気持ちを表す言葉はたくさんあるが |
| 「切ない」という言葉の意味を味わったときから |
| 人は大人になる。 |
| 決意 |
| あきらめるための口実を探すのは 誰にでもできる。 |
| だが あきらめない決意を育むのは |
| そう簡単ではない。 |
| あきらめないということは |
| これから先の 気の遠くなる時間の流れに向かって |
| 決しておまえには流されないぞ という |
| 反逆の狼煙をあげること・・・・・ |
| 小さなことでもいいから |
| あきらめないと決めたことを一つぐらい持っていても |
| 人生 邪魔にはならないだろう。 |
| 負け犬 |
| 負け犬というのは |
| 自分より上位の犬に立ち向かったとき |
| 決して寝転がって腹を見せない犬を言う。 |
| 最大の弱点である腹を相手に見せることで |
| 服従の意思を表す犬が多い中で |
| たとえその結果かみ殺されることになっても |
| 決して自分の弱点で媚を売らないという決意の固さゆえに |
| 「負け犬」と呼ばれる孤高の生き物に感動する。 |
| 群れで生きる彼らにとって 力あるものに従わないことは |
| その群れに属することが叶わないということ・・・・・ |
| それを良しとする潔さは |
| 半端な覚悟ではない。 |
| 長所 |
| 自分の短所を挙げろと言われれば |
| 瞬時に十指に余る欠点を言うことができる。 |
| だが 長所となるとそうはいかない。 |
| 何ゆえ 自分にもあるはずの長所がすぐに思いつかないのか・・・・・ |
| 長年自分を育んだ教育の根幹には |
| よりよき人間になるには 短所を直せという教えがあった。 |
| 短所には目をつぶり 長所を伸ばせという指導は |
| 残念ながら記憶にない。 |
| 叱るよりも誉めろというのも 実は |
| そんな経験を持たなかった大人たちが |
| 自分をお手本にして遅蒔きながらようやく気づき始めてきたからだ。 |
| 他人から見ればすぐにも見えるはずの自分の長所が |
| 自分で見えないという 情けない事態を回避するためにも |
| 思いあがりや自己満足でもいいから |
| 自分をもう一度見つめなおしてみるべきかも知れない。 |
| 別れ |
| 大切なあなたへ贈る言葉が見つかりません。 |
| 思いは山ほどあるのに それを伝える言葉が見つからないのです。 |
| 交わした会話やともに過ごした時間の温もりだけが |
| 空白の心の中で点滅しています。 |
| 別れの哀しさは何度も味わっているはずなのに |
| それを定めとして呑み込むことに躊躇しています。 |
| 新しい道を歩き始める勇気をもらい |
| かけがえのない一度きりの人生に彩りを与えてもらいながら |
| 何のお返しもできないまま 今日まできてしまいました。 |
| どうぞお元気でお過ごしください。ご多幸をお祈りしています。 |
| 今日庭に5本目の梅の苗木を植えました。 |
| 共存 |
| 見渡すかぎりの草原を私たちは「草原」と呼んでいるが |
| 実は小さな名もない草や花たちが |
| 無数に集まって生きているだけ・・・・・ |
| 美しいと映るその景色の中にも |
| 明日の我が命を賭けた熾烈な生存競争がある。 |
| 我が目にどう映ろうと |
| そこに在るものはみなそうやって生きているということを |
| 忘れないでいると |
| 私と彼らが同じ地平にいることの凄さに胸が熱くなる。 |
| 踏みつけようとした雑草に |
| 声をかけたくなるのも そんなときだ。 |
| 絆 |
| 若い二人は お互いを見つめあう。 |
| 見つめ合っていないと 幸せが逃げていく不安に襲われるから・・・ |
| 年を重ねた夫婦は 並んで遠くにある同じものを見ている。 |
| 黙っていても それが絆の証しだと知っているから・・・・・ |
| 共有 |
| あの人は今ごろどうしているかなあ と思いを馳せる・・・・・ |
| そんな人が心の中にいる幸せを忘れてはいけない。 |
| 星の数ほどいる地球上の人間だが |
| 「わたし」とつながっているのはほんのわずか。 |
| つながりに深い、浅いはあっても |
| 今日という日、今という時間を共有して生きている友人たちが |
| 間違いなく私とともにいることのすばらしさを |
| 忘れまい。 |
| かけがえのない、一度きりの人生 |
| たった一人で生きていくには 少し淋しすぎる。 |
| 忘却 |
| 忘れるという心の作用は |
| おそらく人が生きていく中で編み出した傑作のひとつである。 |
| 痛みや辛さをみんな抱え込んでしまっては |
| どんな頑丈な精神でもたまらない。 |
| 二度と立ち上がれないと思える窮地に追い込まれても |
| やがて傷が癒えて立ち直れるんだと思えれば |
| 今日を生きる元気がわいてくるという事実・・・・ |
| 年を重ねた者の特権は |
| そんな忘却の効能を肌身に刻み込んで生きているということ。 |
| そうやって生きてきたという自信が |
| 迫りくる老いと闘う武器になっている。 |
| 天啓 |
| 人は何のために生きているのか・・・・・・ |
| 若いころ 友人と夜を明かして語り合ったことがある。 |
| 口角泡を飛ばしての激論が続いたが |
| 結局結論は見出せなかった。 |
| 今なら その答えは簡単に出せる。 |
| たとえ何が起ころうと 明日という日を迎え |
| 精一杯やれることをやるために 人は生きている。 |
| 生きるという営みに 人はいろいろと理屈をつけたがるが |
| 答えはこれしかない。 |
| その証拠に 眠りにつくとき |
| 明朝 この目が開かないとは誰も考えない。 |
| 明日もおまえらしく生きてみろという 天啓である。 |
| 意味付け |
| どんな仕事でも |
| その中に意味を見出しているから 続けられる。 |
| 意味を見出すと その仕事の中で自分が育っていく。 |
| そして 人間として大切なものが満たされていく。 |
| 人はそうやって大人になっていくものだ。 |
| 迫力のある人格を磨きたければ |
| いまやっている ささやかな仕事に |
| 最大限の意味付けをすること・・・・・・ |
| 特権 |
| 若者の特権は |
| 目の前にあるものに全力で立ち向かえること。 |
| そのことが何年か先に どんな形で自分に返ってくるかを |
| 考えたりはしない。 |
| 年を重ねた者の特権は |
| 今やっていることは 数年先には |
| きっとこんなふうに思い出されるんだろうなと |
| 思い描くことができること。 |
| その違いがあるから お互いに相手から学ぶものがある。 |
| 若いころ 困難な局面でも全力で立ち向かう経験があったから |
| その見返りに 今 将来を予見する能力を手にしている。 |
| 多くの場合 その仕組みの凄さには気づかないのだが |
| 胸に手を置いて考えてみるべきかもしれない。 |
| 去華就実 |
| 外面を気にするな 人間は中身で勝負だ・・・ |
| などと言うのは格好よいが |
| 外面がどうしても気になるのが普通の人。 |
| それはそれでいいのだろう。 |
| ただ 外面を磨くのと同時に内面を磨くことを忘れなければ・・・ |
| 内面を磨く秘訣はただひとつ |
| 感動する心を持つことだ。 |
| 身近なものの中に命の温もりを見出せる心を持つことだ。 |
| それができれば いずれ外面の体裁は気にならなくなる。 |
| 去華就実(華を去りて 実に就く) |
| 華やかに見える花びらが散れば |
| やがて実が太る。 |
| 再生 |
| たいていの人は過去の出来事の痛手を |
| 一つや二つは引きずって生きている。 |
| 今は笑い話ですむ話にも |
| 手痛い記憶が潜んでいることを忘れることはない。 |
| 時折 突然顔を出すその記憶におびえることはなくても |
| 生涯消えることはないだろうという予感だけは |
| 漠然と精神の深層部で息づいている。 |
| 最近 用心深くなった自分に気が付いたら |
| あの痛手から学んだものが再生を始めていると |
| 思うことにしている。 |
| 小鳥 |
| 早朝 自室の窓をあけると |
| 近くの林からいろんな小鳥の鳴き声が聞こえてくる。 |
| 名前や姿はわからないが 仲間を呼び 家族を探すあの声が |
| 私たちに心地よく響くのはなぜだろう。 |
| 同じ地表で 多くの生き物たちと共に生きているという実感を |
| 彼らほど鮮明に伝えてくれるものはいないから |
| あの鳴き声を聞くと どこかでほっとする気持ちになるのだろう。 |
| 花や雲や風、魚や小さな虫たちも同じ地表の仲間だが |
| 声でその存在を確かめることはできない。 |
| 一つだけ |
| 他の誰でもない たった一人の人のために |
| 一つだけできることがある。 |
| その人のことを忘れずにいること・・・・・・ |
| 共有した時のぬくもりを 時空を越えて何度も反芻し |
| 面影の輪郭をなぞってみること・・・・・・・・ |
| もはや届けることが叶わなくなった想いは |
| そうすることで増幅し 消えることはない。 |
| たった一つだけできることが まちがいなくある。 |
| 第二ラウンド |
| 今 同世代の人の中で眩しく輝いて見えるのは |
| 仕事をばりばりこなす有能な人ではない。 |
| 人生の第二ラウンドを求めて 未知の生活に飛び込んだ人たちだ。 |
| 安定した生活や収入に見切りをつけて |
| 温め続けてきた夢に向かって一歩を踏み出した その勇気に |
| 素直に感動する。 |
| 漠然とした憧れはありながら 自分にはできないことだと |
| あきらめかけているからだろう。 |
| 人生の第二ラウンドは |
| それを求めて リングに立った者にだけ |
| 与えられる。 |
| 後戻り |
| もう後戻りはできないとわかったとき どうするかで |
| 人は大きく二つのタイプに分けられる。 |
| その衝撃に打ちのめされ しばらくは立ち直れない人と |
| そっちが駄目なら 別の道を探そうと瞬時に考える人・・・・・・ |
| どちらもやがては目的地にたどり着くのだろうが |
| 途中で費やす労力には大きな差が出る。 |
| 今 後戻りはできない道にいるのだと心得ていれば |
| あわてふためく前に 視線は自ずと前方に向けられる。 |
| 新しいことを始めるのなら |
| もはや後戻りは叶わないと腹をくくることで |
| 今日を生きる力が湧いてくる。 |
| ルール |
| 子どものころに 缶けりという遊びがあった。 |
| 鬼ごっこの一つだが 鬼になった子が幼いと |
| 何度も缶を蹴られて 鬼が続く。 |
| しまいには 泣きべそをかきながら隠れた者を探している。 |
| そんな時に 年長者の子どもがわざと見つかって |
| 鬼を交代してやっていた。 |
| 遊びの中にも社会のルールが生きていた。 |
| 缶けりをして遊ぶ子どもを とんと見かけなくなった今 |
| 彼らはどこで 子どもの社会にもあるはずのルールを |
| 学んでいるのだろう。 |
| 空き缶一個あれば 何人でも遊べるあの遊びには |
| 先生や親が教えてくれない 共生の基本的なルールが |
| ぎっしりと詰まっていた。 |
| 今は遠い昔の話である。 |