
| あるがまま |
| 止まることを許されない川の水の流れは |
| 地形の傾斜という厄介な自然の器に逆らうことをしない |
| 雨風の激しくあたる木の梢に巣をもった親鳥は |
| 選択の失敗を愚痴ることもなく |
| あるいは死をもたらすかも知れない自然の気まぐれを |
| 恨むことをしない |
| 逆らわず 手向かわず あるがままを受け入れて |
| 彼らの生は在る |
| ただ一人「人」と呼ばれる者のみが 右往左往しながら |
| 無謀な戦いやおろかな営みを続けている |
| 無心に母の乳首に吸いつく幼子を見ているうちに |
| 我もまた あるがままの雨風に打たれ |
| 我を支える地形に逆らわず生きていけたらと思う |
| 今朝 近くの森でフクロウの鳴く声を聴いた |
結菜へ |
| おまえをこの世に送り出すために |
| 母さんは わが身を切り裂く痛みに耐えた |
| 父さんは そんな母さんを必死で励ましながら |
| 生まれてきた おまえを 目に一杯の涙をためて迎えてくれた |
| おまえは 決してひとりぽっちで生まれてきたのではない |
| 覚えておいてほしい |
| 愛するもののために 命をかけて闘ってくれた父や母が |
| いつもおまえのそばにいたことを・・・・・・・・・ |
| そして 多くの人の祝福の眼差しがおまえを包んでいたことを・・・ |
| 誕生 おめでとう そして 感動をありがとう |
| |
| 人生には いくつかの峠があるという |
| いつたどり着いたのかは わからないが |
| 下り道にいるところをみると どうやら |
| 私の峠は すでに後方になってしまっているらしい |
| 登り道・・・・・・・ |
| 寒さや飢えから わが身や家族を守るために |
| 身につける装備が 一つまた一つ |
| まるでウロコのように付け加わった |
| 気がつけば とんでもない重装備を背負っての登りであった |
| 峠を過ぎた今 役目を終えた装備を一つずつ外しながら |
| 登り道では目に入らなかった景色を 楽しんでいる |
| 私の峠は さて どこであったのか・・・・・・・・・ |
| あともどりの適わぬ山道を振り返りながら 考えている |