ふつうの夢



ふつうの夢


 

ふつうのサラリーマンになりたい・・・・・・・・

それが将来の夢だという子どもたちへ

さびしい夢だなんていいません。

10年間生きてきた君たちの 

それが精一杯の洞察力だと思うからです。

ふつうの仕事

ふつうの幸せ

ふつうの人生

いいじゃありませんか。

胸をはってふつうに生きてください。

ささやかなふつうの生活を守るために 君たちの親は

どれだけ汗を流し 懸命に闘ってきたことか

君たちの父や母 そして先生がそうであったように

今は幼い君たちにも そのことがわかる日がきっとくる。

ふつうの先生からの 小さなお願いです。






小さな夏




10年前 きまぐれに裏庭に植えた1本の木に

この夏 初めて蝉の声を聞きました。

甘い樹液が出るわけでもなく 日当たりも悪いその木で 

彼は渾身の力をふりしぼり

生きていることを謳歌するかのように 鳴きつづけていました。

わたしにとっては 束の間の休息の日々が

彼にとっては 生きるべきすべての時間なのです。

そんな凝縮された かけがえのない時間を

私も持ちたいと思います。

プラタナス(鈴懸の樹)というその名の木に

今年 小さな夏をみつけました。





君は風を見たことがあるか


砂利道の向こうから ドッ ドッ ドッと腹に響く音が聞こえてくる。

見知らぬおじさんが ごてごての革ジャンに身を包み 

得意気な顔で単車にまたがって 通り過ぎていった。

坊主頭の中学生は 

風の中へ砂ぼこりとともに消えていく その後ろ姿を

まぶしい眼差しで見つめていた。

あれから30年・・・・・・・・・

今の私も まぶしく輝きながら

風になって走り続けているだろうか。

遠い昔の「憧れ」をどこかの少年に伝えながら・・・・・・・・

君は 風をみたことがあるか。



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