雑感バックナンバーNo.7
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| 淋しがり屋 | 
| 自分は淋しがり屋であると だれもが薄々感じてはいても | 
| その事実を突きつけられる状況にならないと納得しようとしない。 | 
| この頑固さは 年とともに薄らいではいくが | 
| それでも かなりの強度で人間を縛っている。 | 
| 淋しがり屋は 弱い人間だという観念に打ち勝つためには | 
| 一人で生きるという状況の中で | 
| 次々に襲ってくる寂寥感を一つずつ乗り越えるしかない。 | 
| そうやって鍛えられた足腰で 多くの人が一人で生きている。 | 
| 一人がいい などと粋がるものではない。 | 
| 買います | 
| 大型テレビのプラズマディスプレーの開発に携わっている娘婿から「4月の終わりに | 
| 私がはじめて設計から関わった新製品が発売されます。」という知らせが入った。 | 
| 各メーカーとも5,6年後の地上波デジタル化に伴うテレビの買い替えに向けて | 
| しのぎを削っている最中、他社に負けてはならないと、新製品開発に懸命だ。 | 
| 家電店の店頭でみると、プラズマより液晶の方が画面が明るく、鮮明のような気が | 
| する。そのことを話すと、「確かにそうですが、液晶は店頭の明るさの中で見るから | 
| いいんですが、自分の家で長時間みていると目が疲れますよ。」と言う。 | 
| なるほど、と納得したところで、これは買わないわけにはいかないだろう。万一 | 
| 調子が悪ければすぐに直しますという彼の言葉を信じて、購入決定となった。 | 
| これまでに4,5回「プラズマとは何か?」の講義を受けたのだが、一向に理解で | 
| きない。そもそもテレビがなぜ映るのかがわかっていない困った義父だが、婿殿、 | 
| これに懲りずに買ったらもう一度教えてください。 | 
| 心 | 
| 心の働きは実は脳の働きである・・・などと無粋なことを言うのはやめよう。 | 
| 月にはウサギがいるという夢のような話ができなくなったのも | 
| 月に人間が立って その映像を私たちが見てしまったからだ。 | 
| 心がさわぐ 温かい心 心にしみる 心憎い配慮 恋心 ・・・・・・・ | 
| これらの「心」を「脳」に置き換えてみるといい。 | 
| どこにあるかは定かではないが | 
| 私たちの体の中にまちがいなく「心」があり 喜怒哀楽を司っている。 | 
| 考え 判断し 実行する部位は脳でよいが | 
| 感情の源は「心」だということにしておいてほしい。 | 
| こころ・・・・・数ある大和言葉のなかでも珠玉の響きを持つ言葉である。 | 
| 絆 | 
| 最近よく思うんです。 | 
| 46億年というこの星の歴史の中で | 
| ほんの一瞬でも ともに同じ時間を共有することができたんですね。 | 
| すごいことじゃありませんか。 | 
| あなたも私も やがて時空の彼方に消えていく運命ですが | 
| この大地に刻める記憶をほんの少しでも残せたことを素直に喜びましょう。 | 
| 出会うこともなかったはずのあなたと不思議な縁でめぐり会えて | 
| ささやかな絆を持てたことに感謝しています。 | 
| この絆が どうかあなたにとってもいい想い出でありますように・・・・・・・ | 
| 音 | 
| その昔 西洋音楽は数学で成り立っていると教わった。 | 
| 音符の長さや音程の違いは 実に見事な数字で表されることを知った。 | 
| ふだん何気なく歌ったり 聴いたりしている音楽の中には | 
| 驚くべき法則が隠されている。 | 
| だが もっと驚くのは | 
| 生まれたばかりの赤ちゃんの産声は | 
| ハ長調の「ラ」の音程で、しかも世界共通なのだという。 | 
| 今急にその音程の音を出してみろといわれて まともに出せる人は少ない。 | 
| しかし、遠い昔だれもが驚くべき精度でこの音を体内に持っていた。 | 
| 音楽を聴くと心が癒されるのは きっと | 
| 昔持っていたあの音にめぐり合えているからに違いない。 | 
| 後悔 | 
| 結果はうまくいかなかったが とにかく | 
| やれることはやったという思い・・・・・・・・・ | 
| 失敗してもいいから あのとき | 
| やれるだけのことをしておけばよかったという思い・・・・ | 
| どちらも日常の中で 誰もが経験するものだ。 | 
| この二つの記憶には 大きな違いがある。 | 
| 前者は やがて薄れていくが | 
| 後者は なかなか消し去ることができない。 | 
| 人は 行動した結果の後悔より | 
| 行動しなかったという後悔の方が | 
| 深く心に残るものらしい。 | 
| 真理 | 
| 終わりは必ずいつか来る。 | 
| その時期を自分で決めるかどうかは別にして | 
| 終わりは必ず現れる。 | 
| そして それまでの中身がどうであったのかは | 
| 終わりを迎えたときに否応なしにはっきりする。 | 
| 渦中にいるときには | 
| 決して見えない真理だが 終わりを迎えたときに | 
| 不思議にストンと胸に落ちる。 | 
| そういう真理もある。 | 
| 点 | 
| 喜びも哀しみも 過ぎてみれば一つの点でした。 | 
| ありったけの情熱を傾けた仕事も | 
| 持ち得るすべての愛情を注いだ恋も | 
| 人生では 一つの通過点だったのだとわかり始めたとき | 
| ようやく これから進むべき道が見えてきたという気がしています。 | 
| 何が待ち構えているのかは定かではありませんが | 
| とにかく 進む方向だけは指し示してもらったようです。 | 
| 思い切って この道を行ってみようと思います。 | 
| この決断も やがては一つの点になるのでしょうが・・・・・・・ | 
| 形あるものは やがて消えていき、何もなくなったところから | 
| また新しい生命が生まれる・・・・・・ | 
| 人の世はこの繰り返しだという教えがあります。 | 
| 色即是空 空即是色 | 
| そろそろ 色を捨てるときが近づいてきたようです。 | 
| 時間 | 
| あなたと共に過ごした時間があった・・・・・・ | 
| それだけで 頼りない私でも生きていけそうです。 | 
| いまさら「ありがとう」は陳腐だけど | 
| かけがえのない 時の流れの中で | 
| あなたに出会えたことに感謝しながら | 
| 生きてみます。 | 
| 未練 | 
| ふんぎりをつけなくてはならないのに | 
| なかなか決断ができない・・・・・・・ | 
| そんな状況を「未練」と言います。 | 
| 読んで字のごとく 「未だ 練られず」と解釈しましょう。 | 
| 異質のものを混ぜ合わせるときに | 
| よく練らないと均一にならないように | 
| 心の中にある いろんな思いや気持ちをうまく整理しておかないと | 
| それぞれが勝手に自己主張を始めてしまいます。 | 
| 折り合いをつけたり あきらめたり 理屈をつけて納得したりと | 
| 方法はどうであれ とにかく | 
| 心の中を均一にすること・・・・それが肝要です。 | 
| 惜別の唄 | 
| 古来別れを唄った唄はたくさんあるが、その中でも名曲だと思っている唄がある。 | 
| 「惜別の唄」・・・・・・・学生時代、酒席では必ず全員で歌った唄だ。そのときはこの | 
| 曲の謂れは知らなかったが、後日この唄は戦時中学徒出陣に際し、戦地に赴く学 | 
| 友のために作られた唄だと知った。歌詞は島崎藤村の「若菜集」からである。 | 
| 歌詞の中に込められた惜別の想いをその時々の自分の想いと重ねて歌ってきた。 | 
| いまどきこんな文語調のスローテンポの歌は流行らないのだろうが、そんなことは | 
| どうでもいい。おじさんたちにとっては、胸が熱くなる珠玉の名曲なのである。 | 
| 風呂でこの唄をうなっていると、「お父さん、それどこの民謡?」と娘が聞いた。 | 
| 岐路 | 
| 岐路に立っているんですね。 | 
| さて、どちらへ行こうかと思案が続いているんでしょう? | 
| 右へ行けば 心休まる景色はないけど、まっすぐな道が約束されます。 | 
| 左の道をとれば、野の草花に覆われた、先の見えない曲がり道が続きます。 | 
| 道を選ぶ決め手となるものがあるとすれば | 
| 本当は欲しかったのに、守るべきもののために | 
| これまで我慢してきたものはなかったのかと自分に問い直すことでしょう。 | 
| 欲しかったものはどちらの道にありそうか・・・・・・・・ | 
| それを考えてとりあえず一歩を踏み出すことです。 | 
| 夢 | 
| 卒業式が近づき、6年生が書いた卒業アルバムの原稿を読ませてもらった。 | 
| 「将来の夢」という題で全員が自分の夢を綴っているもの・・・・・・ | 
| プロ野球の選手になりたい、サッカーの選手になりたい、有名なピアニストに | 
| なる、お父さんの跡をついで建具屋になる、獣医になって怪我をした動物を助け | 
| たい、保母さんになって子供たちと遊びたい、競艇の選手になってお金を儲ける、 | 
| ・・・・・・無限の可能性を持ち合わせている子どもたちなんだと、あらためて胸が | 
| 熱くなる。10年後、20年後、この夢が叶っている子どもは少ないだろう。でもこの | 
| 時期だからこそ、とてつもない夢をもってほしい。たとえ叶わなくても夢を持ってい | 
| たという記憶は、人生の中で大きな力になる。 | 
| そういえば私はあのころどんな夢をもっていたのだろうか。少なくとも今ある自 | 
| 分の姿ではなかったはずなのだが・・・・・・・・・ | 
| 老い | 
| それまで普通だと思っていたことが | 
| ある日もうできなくなっていることに気づく・・・・・・ | 
| 認めたくはないが「老い」を悟る瞬間だ。 | 
| 気力、体力、情熱・・・・対象はさまざまだが | 
| まちがいなくその瞬間はやがて誰にでもやってくる。 | 
| 来るべきものが来たかと苦笑いするもよし | 
| 受け入れることを拒み 抗ってみるもよし | 
| そのうち自分の置かれている状況が次第にわかってくるのだから | 
| あわてて右往左往するのは無駄な努力だと心得たい。 | 
| 枯れていくことを嫌がる草花はない。 | 
| 貫く意思 | 
| 蔦(つた)は 遥かに見上げる壁でも上ることをためらわない。 | 
| 樹根は 厚い岩盤の下にある土を求めて伸びることをためらわない。 | 
| 上であれ、下であれ | 
| それを使命と心得るものは 一途に貫く意志をもっている。 | 
| こんな所は上れない、こんな所は掘れないとやる前から尻込みするのは | 
| おそらく人間だけではあるまいか。 | 
| 涓滴 岩をも穿つ(けんてき いわをもうがつ)・・・・・ | 
| 雨だれの一滴でも 一途に貫く意志をもてば岩にも勝る。 | 
| やると決めたらとことんやってみる・・・・・ | 
| 雨だれに負けるわけにはいかないだろう。 | 
| ロマンチスト | 
| 「おまえはロマンチストだ。」って言われたって? | 
| そりゃあ その人の言うとおり 痛い目に遭うこともあるけど | 
| ロマンチスト、大いに結構じゃないのかな。 | 
| 厳しい現実にあえて目をつぶって 遠くの夢にあこがれるのも | 
| ひとつの能力だと思うんだが・・・・・・・ | 
| 夢を持ち それに向かって歩くことのできない連中の | 
| ひがみだと思って 聞き流しておけばいい。 | 
| 君は今の君のままでいいんだ。 | 
| そして 死ぬまで君らしい夢を見続けろ。 | 
| 自分の人生が輝いていたかどうかは | 
| 人に決めてもらうのではなく 最期に自分で決めるものだ。 | 
| 楽しい夢を見させてもらった・・・・・ | 
| そう言い残せればいいだろう。 | 
| 目線 | 
| 上の雪 さむかろうな | 
| つめたい月がさしていて | 
| 下の雪 重かろうな | 
| 何百人も載せていて | 
| 中の雪 さみしかろうな | 
| 空も地べたもみえないで・・・・・ | 
| 金子みすず | 
| この稀有の詩人の感性のすごさは | 
| 最後の2行にある。 | 
| 上や下にあるものには 誰でも思いが至る。 | 
| だが | 
| 中にあるものがどんな思いでいるかという視点は | 
| 誰もが持てるものではない。 | 
| 生きることの哀しさを一度でも味わったものだけが持てる | 
| 研ぎ澄まされた 静かで温かい目線である。 | 
| 準備 | 
| 人は手に入れたくてもそれが叶わないとき | 
| その短所を見つけて自分を納得させようとする・・・・・ | 
| 「酸っぱいブドウの論理」と心理学では言う。 | 
| 食べたいのだが手の届かないブドウを見て | 
| 「あれは酸っぱいからだめだ。」と自分に言い聞かせて | 
| あきらめる心理のこと。 | 
| ブドウを「夢」に置き換えると 実によくわかる。 | 
| 自分で見つけた夢なのに | 
| それにケチをつけてあきらめることはよくあることだが | 
| 本当に手に入れたければ | 
| 遠回りでもハシゴを作る準備をすればよい。 | 
| 手が届かないのが原因なら | 
| そうするしかない。 | 
| 対話 | 
| 趣味や道楽が楽しいのは | 
| 自分の日常を支配している決め事から開放される爽快感であろう。 | 
| 他人にわかってもらう必要はない。 | 
| 権威あるその道の達人に誉めてもらう必要もない。 | 
| ふだん話すことの少ない自分と | 
| 静かに対話ができればいい。 | 
| 残されたもの | 
| 人は人生のゴールの灯が遠くに見え始めると | 
| 自分に残されたものが少しずつ はっきりと見えてくる。 | 
| 若いころは気にもしなかった我が身の余力が | 
| あと どれほどか、知らず知らずの間に推し量っているし、 | 
| 現役でまだばりばり仕事をこなしていても | 
| 心の深いところでは 人知れずひそかな計算が始まっている。 | 
| だが 落ち込むことはない。 | 
| ゴールにたどり着く準備は 必ずしなくてはならないのだから・・・・・ | 
| 残された時間、体力、気力、そして命と折り合いをつけながら | 
| 今日を生きればいい。 | 
| 風 | 
| 今日は今日の風が吹いています。 | 
| 昨日とはちょっと違うようです・・・・・・ | 
| 共感 | 
| 同情と共感はまったく異質のもの。 | 
| 同情されると傷つくことがあるが 共感されても腹は立たない。 | 
| いったい何が違うのか・・・・・・ | 
| 突き詰めれば 相手が自分と同じ土俵の上にいるかどうか | 
| 似たような境遇にいたり 同じ経験をしたりすれば | 
| 目の前の人にかける言葉はおのずから変わってくる。 | 
| 気休めの同情は 苦しい中でも必死で守ろうとしているプライドまで | 
| 容赦なく剥ぎ取ろうとする。 | 
| 相手が自分と同じ土俵にいるかどうかを | 
| 打ちのめされ 心に傷を負った人間が一番間違いなく | 
| 嗅ぎ分ける。 | 
| 伝言 | 
| まだ若い君にこんなことを言うのは気が引けるが | 
| 先輩からの忠告だと思って聞いてくれ。 | 
| 長い間仕事をやっていれば | 
| 何もかも放り出して 逃げ出したくなるときがあるもんだ。 | 
| 真正面からそのことに向き合う辛さが | 
| 誠実でありたいと思う自分を裏切ろうとする。 | 
| だがそんなときこそ ほんの少し勇気を奮って | 
| 逃げ出さずにぜひ立ち向かってほしい。 | 
| 解決など到底おぼつかないと思われた難事でも | 
| 自分が動けば必ず何とかなるものだ。 | 
| 人生 どんなにがんばっても後悔はついてくるものだが | 
| いずれ自分の足跡を振り返る時期がきたとき | 
| 少しでも肩の荷を軽くしたいなら あのとき | 
| 自分は逃げずに立ち向かったという記憶をぜひ刻んでほしい。 | 
| 大した役には立たない話かも知れないが | 
| 心のどこかに残しておいてくれるとうれしい。 | 
| 存在 | 
| 昔 哲学の時間に机の上にある本を指して | 
| 「ここに何がある?」と聞いた先生がいた。 | 
| 「本だ。」と答えると 「なぜ本があるとわかる?」という。 | 
| 目でも見えるし、触れば本だとわかるのに 馬鹿なことを聞くもんだと | 
| 内心あきれながら 先生の次の言葉を待った。 | 
| 「見える、触るという感覚は、本当に確かなものか?」・・・・・ | 
| 禅問答のようなやりとりの中で | 
| 先生はこう言った。 | 
| 人間の感覚なんてあやふやなものだ。 | 
| 本当に存在するものを五感ではなく、理性で探せ・・・・・・ | 
| 訳のわからない話だったが 妙に心に残った。 | 
| 仕事をするようになって | 
| 外観だけで人を見ることの危うさに気づく機会が何度もあった。 | 
| こんなことを言っていたのだと、勝手な解釈をしているのだが | 
| 先生、そういうことだったんですよね。 | 
| 知恵 | 
| 年末から6日まで、信州の山里で過ごした。今年は地元の人も驚く豪雪、 | 
| その降り方は半端ではない。一晩に70センチから80センチも積もり、家の | 
| 周りには3メートル近い雪の壁ができている。一冬に降る雪がすでに12月 | 
| だけで降ったのだという。除雪に当てる村の予算はすでに使い尽くし、あとは | 
| 県や国の補助に頼るしかない。 | 
| そんな豪雪の中で暮らす人々は、毎日降り積む厄介な雪に愚痴をこぼさない。 | 
| ただ黙って雪かきをする。「騒いでみてもどうにもならんだで。」・・・・黙々と | 
| スコップを動かすおじいちゃんがいう言葉のとおり、大きな相手に無茶な戦は | 
| 通用しない。じっと息を潜めて、やがて来る雪解けを待つ暮らしには、都会で | 
| 身に付けた知識や技術は何の役にもたたない。そのことを思い知らされた。 | 
| 背丈ほども積もった雪をどう処理するか、力任せにスコップを振るってもくた | 
| びれるだけで、一向にはかどらない。70はゆうに越えているおじいちゃんが | 
| 息も荒立てず、実にゆっくりと雪かきをしている姿を見て、ここに生きている | 
| のは知識ではなく、知恵なのだと悟った。 | 
| それなりに苦労して詰め込んだ知識が重荷になり始めている。 | 
| 輝き | 
| あのころを思い出せば 胸が熱くなる・・・・・ | 
| そんな時の流れの中の1コマを持っている人は幸せです。 | 
| 夢を追い求めて 一切の見返りを求めず駆け抜けた時間・・・・ | 
| 愛しい人に静かに想いを馳せ | 
| その人にふさわしい自分であるのかと問い続けた時間・・・・・ | 
| 友と語らい 酒を飲み | 
| ともにこれから立ち向かう「社会」という相手に闘志を燃やした時間・・・ | 
| 大切な人との別れの中で | 
| ともに過ごした時の重みに打ちのめされた時間・・・・・・ | 
| 一つひとつは断片的な思い出でも それらを全部ひっくるめて | 
| 実は「わたし」の人生だったのですね。 | 
| そう思えるようになったら | 
| 年老いたなあ などと思わずに | 
| 輝いていた時間が自分にも与えられたことに感謝しながら | 
| もう一度輝ける路をこっそりさがしてみましょう。 | 
| 幸せ | 
| 静かに時が流れていると感じられるときは | 
| 小さな幸せが訪れていると思うべきです。 | 
| 他人から見れば笑われそうな ほんの小さな出来事が | 
| 私を 信じられない密度で満たしてくれます。 | 
| そんなとき もしも鏡を見れば | 
| きっと私は素敵な顔をしているのでしょうね。 | 
| そして やさしい目をしているにちがいありません。 | 
| 嵐のように過ぎ去った時の流れを思い出しながら | 
| ほんのささやかな 小さな幸せを味わう時間があっても | 
| いいんじゃありませんか。 | 
| だれも傷つけることなく 慎ましく生きようとしている 自分への | 
| ご褒美だと思って・・・・・・ | 
| 掟 | 
| 人を好きになるという感情は | 
| この世に生まれてきたものが等しく共有する摂理であろう。 | 
| もしもこの感情がなかったら | 
| 星の数ほどいる地表の人間のだれとも絆を築くことができない。 | 
| だから だれだって人を好きになることができる。 | 
| しかし、 | 
| 好きであり続けるためには | 
| 相応の努力と情熱がいる。 | 
| だれもが一応知っているが 理解するのがむずかしい掟である。 | 
| いい話 | 
| この時期 森や林の中では | 
| 落ち葉の上にたくさんのどんぐりが落ちていて | 
| 野ねずみたちがせっせとそれを巣に運んでいるそうです。 | 
| やがて来る厳しい冬を乗り切るために | 
| 出来る限りのものを蓄えるという知恵は | 
| 一体だれに教わったのでしょうね。 | 
| クヌギやミズナラの木たちは | 
| そんな彼らに惜しみなく木の実を与え | 
| 温かい巣穴のために有り余る落ち葉を用意してやります。 | 
| 冬の厳しさを一番知っている彼らが | 
| こうして寄り添って生きようとしている・・・・・・・ | 
| 何だか いい話ですね。 | 
| 笑い | 
| 笑えるときに うんと笑っておこう。 | 
| 腹の底を洗いざらい引っ張り出してでも しっかり笑っておこう。 | 
| やがて笑いの時が終わったら | 
| 次に来るのは恐るべき手ごわい敵かもしれない。 | 
| 出口の見えない 深い悲しみかもしれない。 | 
| それらに立ち向かう決意を固めるときに | 
| 笑いが蓄えてくれた前向きの生きる力が必ず必要になる。 | 
| 大抵の人はそれを武器にして | 
| もはやこれまでと思えるような手ごわい難局でも | 
| 逃げずにきちんと向き合って生きてきたのだ。 | 
| だから 笑えるときには うんと笑っておこう。 | 
| 焦点 | 
| 何を見ようとしているのか それをはっきりさせておこう。 | 
| 視野に入るものはだまっていても見えるのだが | 
| 自分の本当に見たいものは その中のどこにあるのか・・・・ | 
| 雑多なものを見すぎると 焦点の合わせ方がむずかしくなる。 | 
| 見るものは 欲張らずに一つにしておくほうがいい。 | 
| 賞賛 | 
| おめでとう よく頑張ったね・・・・・・・ | 
| 今までに何度その言葉をかけてもらっただろう。 | 
| 長い人生 こんな言葉一つで大抵の苦難は乗り切れるもの・・・・ | 
| おめでとうって言われた数だけ | 
| 人は豊かになれる。 | 
| 人知れぬ努力への評価は さりげないこの一言でいい。 | 
| 面影 | 
| 大切な人の面影が浮かんできたら | 
| そのときはその人も私のことを偲んでくれている・・・・・・ | 
| 二人の想いの波動が重なり合って 千里の彼方でも届くのだと | 
| 昔何かの本で読んだことがあります。 | 
| 科学的にはまったくの荒唐無稽な話でしょうが | 
| そんな話でも信じたくなるときがあるのが人間です。 | 
| 大切な人だったのだと 日が経つにつれて心の奥のほうで | 
| 蠢く衝動が抑えられない・・・・・・ | 
| 人が本当に寂しくなるのは そんな時でしょう。 | 
| 取り返しのきかない時間の向こうに今も輝いて立っている・・・・・ | 
| そんな人はいませんか。 | 
| 勇気 | 
| 自分は肝の小さい 臆病な人間だと思う。 | 
| 自分なら到底耐えられないだろうと思える局面を | 
| 平然と乗り切ろうとしている人を見ると | 
| うらやましさを通り越して 尊敬したくなる。 | 
| だが あるとき そんな彼がもらした一言を聞いた。 | 
| 「私だって逃げ出せるものならそうしたかった・・・・」 | 
| 人間だれだって 逃げ出せないところに追い込まれたら | 
| ありったけの勇気を振り絞ることができるのだと知った。 | 
| 小心で臆病であることを恥じるまい。 | 
| 大事なことは いざというときに搾り出せる勇気を | 
| 私も心のどこかに持っているのだと信じること・・・・・・・ | 
| 難局の中に放り込まれたら | 
| そう思うことにしている。 | 
| 記憶 | 
| 一人でぼんやりしていると ふと | 
| 遠い昔に遊んだ近所の草原や | 
| 見慣れた小学校の通学路が浮かんでくる。 | 
| その頃もきっと悩みもあったはずなのに | 
| なぜか思い出されるのは楽しく過ごした時間だけ・・・・・・ | 
| それはきっと 神様が | 
| 子どもが生きていくのに必要のない思い出は | 
| さりげなく消してくれたからだろう。 | 
| 記憶しておくべき思い出は | 
| しっかり自分の胸の中に埋め込まれ | 
| これまでの私の人生のあちこちで折にふれて | 
| 確かに私を支えてくれた・・・・ | 
| 今を生きる子どもたちにも どうか幸せな思い出が | 
| いっぱい いっぱいありますように・・・・・・・ | 
| 夢 | 
| これから夢を探す人・・・・・ | 
| これから夢に向かって歩き出そうとする人・・・・・ | 
| これから手に入れた夢を味わおうとする人・・・・ | 
| 夢という言葉とは無縁の明日を迎えようとする人・・・・・ | 
| あなたはどんな人ですか。 | 
| 支え | 
| そんなに落ち込むことはありません。 | 
| 支えにしていたものが外れただけだと思いましょう。 | 
| また新しい支え棒を探せばすむ事です。 | 
| よろけたり つんのめったり | 
| 不安定な姿勢はしばらく続くでしょうが、 | 
| あなたの足は確かに地面を捉えています。 | 
| その足があるかぎり 倒れて立ち上がれなくなることはありません。 | 
| 頼りにしていた支え棒が外れれば | 
| だれだって よろめくものです。 | 
| よくあることです。 | 
| 輪郭 | 
| 足跡をつけずに歩くことができないように | 
| 思い出を残さずに人とつき合うことはできない。 | 
| それが心地よいものか、どうかで | 
| 出会った人の輪郭線の太さが決まる。 | 
| 太ければ太いほど | 
| 指でなぞるときに正確になる。 | 
| 別れ | 
| 二度と会うこともないだろう、と思える人と別れるときなら | 
| 大きな声で「じゃ、また会おう。」と握手などしながら言うのがいい。 | 
| 本当にまた会いたい人と別れるときは | 
| 小さな声で「じゃ、また・・・・・」がいい。 | 
| 「また会いましょう。」と言って別れた人を思い出してみるといい。 | 
| 甘え | 
| 誰かに甘えたくなるということは | 
| 自分の弱さを隠さずにそっと両手に載せて | 
| 「これがほんとうの私です。」と相手に差し出すということ・・・ | 
| 弱音を吐かないで生きていこうと決めたつもりでも | 
| 誰しもふと そんな気持ちになることがある。 | 
| 自分の弱さを共有し 受け止めてくれそうな人がもしもいるのなら | 
| 思い切って差し出してみるのもいい。 | 
| ほんの少し弱音を吐いたからといって | 
| 自分らしさがなくなるわけではないのだから・・・・・・ | 
| その人のおかげで肩の荷物が少しでも軽くなったら | 
| またいつもの足取りで 明日からしっかりと歩き始めればいい。 | 
| 影 | 
| 最近始めた趣味の油絵・・・・・ | 
| 立体を平面に写し取る技法の奥義は | 
| 影をどう描くかにあると気づいた。 | 
| 明るくみえる部分は、実は影の力で際立っている。 | 
| 輝いているものが大きければ | 
| それだけ影の部分も強く大きい。 | 
| 日が当たらないからできる影が | 
| 陽光の輝きをささえている。 | 
| 負け | 
| いくら逆らっても勝てる相手ではないとわかったら | 
| 潔く降参して頭を下げる・・・・・・ | 
| かつては それでも一矢を報いんと抗ったこともあるが | 
| 所詮無駄な努力であったと 今ならわかる。 | 
| 自分の能力や持てる力を過大評価する傾向は | 
| 若さの特徴であり、決して悪いことではない。 | 
| だが | 
| 負けはどう言い訳をしても負け、 | 
| 負けて地べたに這いつくばることも 人生の一部だと | 
| この年になって 何となくわかりかけてきた。 | 
| 負ければすべてが終わりだと思い込んでいたあのころと | 
| 決定的に違うのは | 
| なあに、また立ち上がって 服についた泥を払い | 
| 歩き出せばすむことだ と強がりではなく思えるようになったこと・・・・・ | 
| 人目 | 
| 人の目が気になる・・・というのは | 
| 日本人としてごくあたりまえの感覚である。 | 
| だが 自分の考えや生き方を大事にし 自分らしさを主張することを | 
| 価値あることだと思うなら | 
| 少なくとも人目を気にして生きたくはない。 | 
| 長いものには巻かれろ・・・・ | 
| 出る釘は打たれる・・・・ | 
| 寄らば大樹の陰・・・・・・ | 
| そんな言葉を一つひとつ打ち破る勇気は | 
| 少しでも早いうちから我が身に培うべきだ。 | 
| 尋常な勇気では歯が立たない相手であるがゆえに | 
| だれにも迷惑をかけない範囲で 人目を気にしながらでも | 
| ひそかに勇気を育む練習をしておこう。 | 
| 彼岸花 | 
| 彼岸花が満開である。 | 
| 1枚の葉っぱも持たず ただ花1輪・・・・・ | 
| 手折る者を躊躇させる、その凛とした立ち姿には | 
| 安易に妥協はしないぞという、意思が見える。 | 
| 人の手が入った場所にしか花を咲かせない気位の高さ | 
| 根には花と似つかわしくない毒を有し | 
| 秋を先駆ける この花に惹かれる。 | 
| 最適 | 
| 仕方なく選んだものでも | 
| 長い年月慣れ親しめば その時の重みが | 
| いつの間にか 最適なものに変えてくれる。 | 
| 身の回りをみてみるといい。 | 
| そう思えるものがたくさんあるはず・・・・・・ | 
| かつては あれほどいやだったことが | 
| 今はちゃんと自分の中で あるべきところに収まっている。 | 
| 初めから最適なものを手にする必要はない。 | 
| 条件 | 
| 私とあなたが今立っている地表には | 
| そこに立つことが許される条件がある。 | 
| どんなに広大な地表でも | 
| 占有が許されるのは自分の足の裏の面積だけだということ・・・・・ | 
| 忘れないでおこう。 | 
| 土 | 
| 私たちが踏みしめている大地の土は | 
| 空間の所有権は自分にあっても | 
| むろん私だけのものではない。 | 
| あなたやあなたの子供たちが花を植え、走り回る土でもある。 | 
| 50年、100年先の子供たちが家路を急ぐ道になっている土かも知れない。 | 
| 岩が砕け 小石から砂になり、やがて土になっていったように | 
| 私もあなたもやがて地表の土になる身なのだから | 
| 足元にあるわずか一握りの土であっても | 
| それを共有し、生きてきた多くの人間がいたことを忘れまい。 | 
| 土から離れた暮らしを長くやっていると | 
| かつて私たちの先祖がみんな持っていた 土と会話をする術を | 
| きれいに忘れていく。 | 
| 夢 | 
| たどり着きたい、手に入れたいと | 
| 夢見ている間がいい。 | 
| 実現したら夢はぬけがらになってしまうから・・・・・ | 
| そこへたどり着く道のりを楽しむ夢もある。 | 
| 思い出 | 
| 思い出は多いほうがいいが | 
| 思い出すことは 少ないほうがいい。 | 
| その一つひとつを反芻しながら | 
| 味わい 噛みしめるためには | 
| それなりの時間が必要だから・・・・・・・ | 
| 思い出したくないことと | 
| 思い出せないことの狭間に | 
| 私の数十年の人生が埋もれている。 | 
| 涙 その2 | 
| わけもなく目頭が熱くなって | 
| いま私は一体何に心を揺さぶられているのか、 | 
| どうしてこんなにも柔らかくなってしまうのか・・・・・ | 
| そんな追求も忘れてしまうほどに 心が潤んでくることがある。 | 
| 思わず叫びだしたくなる衝動をやっとのことで抑えて | 
| 我を忘れたひとときを愛しくかみしめる・・・・・・・ | 
| いくつになってもそんな瞬間が確かにある。 | 
| 神様は 年を重ねても魂を柔らかくする術だけは | 
| 取り上げずに残しておいてくれたようだ。 | 
| 涙が流れる・・・・・それはきっと | 
| 人生の中で 自分も気づかないまま大切にしてきたものに | 
| 思わずめぐり合えた証しなのだろう。 | 
| そうか、私はこんな気持ちを大事にしながら生きていたんだ、と | 
| 気がつくのもそんな時だ。 | 
| 涙 その1 | 
| 人は言葉で表せない気持ちを涙で表すことがありますね。 | 
| どうして と聞かれても わけなどすっきり話せるものではありません。 | 
| こみ上げてくる あふれる想い・・・・・ | 
| 心の容器に入りきれない想いが自然とこぼれていくだけです。 | 
| あえて理屈をつけるなら | 
| 長い間 人知れず大切にしてきたものと | 
| 目の前の出来事が 不思議と重なって響き合い | 
| 抑えきれない 熱い血潮のように体の奥から噴出してくるからでしょうか。 | 
| 悲しいときなら誰だって涙を流せるのですが | 
| うれしい時 切ない時に涙が流れる人でありたいと思います。 | 
| どんな詩人や作家でも こみ上げてくるあの想いを | 
| 書き表すことはできません。 | 
| 涙のわけは 自分だけが知っていればいいのです。 | 
| 真理 | 
| そんなものが入り込む余地などないと思い込んでいたら | 
| ある日 突然前触れもなく心の奥のほうで小さな灯がともる。 | 
| 信じられない速さで増殖し、 | 
| 気がつけばすっかり虜になっている。 | 
| 人の心が動き 熱せられる方程式はたいていこの順で成り立つ。 | 
| 対象が物や事であれば それを感動と呼び、 | 
| 人であれば恋心と言う。 | 
| 教科書には決して書かれていないこの方程式は | 
| 鉛筆をもって何時間机に向かっても解けないが | 
| たった一度経験すればみごとに理解できる。 | 
| 恐るべき真理である。 | 
| 運 | 
| これでもかと襲ってくる災難に | 
| 我が身の不運を嘆きたくなるときがある。 | 
| 思いがけない慶事の連続に | 
| 我が身の幸運を感じるときもある。 | 
| その本質は「確率」だとわかっていても | 
| 人は幸運や不運という言葉で 人生を納得したいと思うことがある。 | 
| 悪いことではない。 | 
| 運がいいとか悪いとかが気になっているのは | 
| 少なくとも生きることに挑み続けている証しだから・・・・・・ | 
| おみくじや今日の占いに一喜一憂している人の顔には | 
| 明日を信じる前向きの意思が見える。 | 
| 手中 | 
| 失われたものが再び我が手に戻ることはない。 | 
| 失おうとしているものなら まだ我が手の中にある。 | 
| 手放すか 抱きしめるか・・・・・・ | 
| 迷いはそれの値打ちを吟味する試薬のようなもの。 | 
| 後悔という苦い結果を味わいたくないなら | 
| 存分に迷い 存分に確かめること。 | 
| たとえ輝きが失せ 埃をかぶっているとしても | 
| 今はまだ手中にあるものを 忘れまい。 | 
| 不安 | 
| 穏やかな時が流れていると 何だか少し不安になることがある。 | 
| そのうちきっと大波がくる・・・・そんな予感に襲われながら | 
| こんな安穏がいつまでも続くはずがないのだが、という気がしてくる。 | 
| 若いころなら そんな思いに落ち着かないこともあったが | 
| この年になれば 来るものは来る じたばたしてもしかたがないと | 
| どこかで開き直っている自分を感じる。 | 
| それはきっと 横着になったのではなく | 
| 少々の波ならどうよければいいかを 何度も塩水を呑みながら | 
| 学んできたから・・・・・・・ | 
| できることならもう塩水は呑みたくないが | 
| 侮ることのできない 経験の重みを | 
| 素直に評価できる年になったのだと思うことにしよう。 | 
| 勇気 | 
| みんなが空を見上げているときに | 
| 一人地面を見つづける勇気がありますか。 | 
| 夏 | 
| 湧き起こる入道雲を見ていると | 
| 幼い日の夏を思い出すのは誰しも同じこと。 | 
| あの雲を見ながら 無邪気に遊んだ遠い日の記憶は | 
| いくつになっても不思議に消えることはない。 | 
| 紫外線がどうとか 熱中症がどうだとか | 
| まるで無縁の時代・・・・・ | 
| 一夏に背中の皮が2回はむけていた。 | 
| 蝉時雨が騒音だと感じる人がいるのだとか・・・・・・ | 
| いい年になっても 唯一童心に戻れる季節だというのに | 
| 何か大切なものを置き忘れてきてしまっている。 | 
| 夏休み | 
| 一つずつ終わっていく日々の出来事が | 
| 何だか妙にいとおしい。 | 
| 今日のこの出来事はもう二度と目の前に現れることがないかもしれない・・・・ | 
| そんな予感が心のどこかに小波のように生まれている。 | 
| 別に寂しいというわけでもない。 | 
| 感傷に胸をかきむしられるわけでもない。 | 
| ああ こうやって今自分は年をとっているんだという静かな実感だけが | 
| 流れていく時間の中で立ち止まる。 | 
| 子どものころとは違うものがいっぱい詰まった夏休み・・・・・ | 
| ほんのしばらくだったが | 
| 自分を見つめる時間をもらったこの夏の夏休みであった。 | 
| 代償 | 
| 今 本当にやりたいことをやろうと思えば | 
| その代償に これまで大事にしてきた多くのことやものを | 
| 犠牲にしなくてはならない。 | 
| それほどに 「夢」は現実の生活とかけ離れてしまっている。 | 
| こんなはずではなかったが 今となってはしかたがない。 | 
| さて どうするか・・・・・・・ | 
| 「夢」と「現実」を天秤にかけるなどという 姑息な計算は | 
| もう真っ平ごめんだ。 | 
| その「夢」に 残りの人生のすべてを賭けてもいいと思えるのなら | 
| 躊躇せず 突き進むべきなのだろう。 | 
| 若いころなら 決してできなかった決断を | 
| この年になって 迫られている。 | 
| 残された時間は 思ったより少ないのだから・・・・・・ | 
| 友へ | 
| やあ 久しぶり。元気でやってるか? | 
| 君も孫ができたんだって? とうとうおじいちゃんだな。 | 
| 俺たちもそんな年になったってことだ。 | 
| いつかゆっくり酒でも飲みたいと思いつつ あれから30年・・・・ | 
| あのころの憧れのマドンナたちも いいおばあちゃんになってるんだろうな。 | 
| 君と交わした約束 覚えているか? | 
| 俺は田舎教師で一生を終わる・・・・・・ | 
| あまり自慢できることでもないが あの約束だけは守ってきた。 | 
| 君は今ごろ 多くの部下を率いて頑張っているんだろうな。 | 
| 空を流れる雲を見ていたら なんだか急に | 
| 君のことを思い出していた。どうしているかなって・・・・・ | 
| 積もった思い出話を肴に 一杯やれる日を楽しみにしているよ。 | 
| たまには電話でいいから 声を聞かせろよ。 | 
| 奥さんや子どもたちにもよろしく。 | 
| 寂寥 | 
| ひとりぼっちになることは 無論寂しい。 | 
| しかし それよりも もっと寂しくなるのは | 
| 自分と心の通わない たくさんの人に囲まれているとき・・・・ | 
| たった一人でもいい 心の通い合う人がどこかにいれば | 
| たとえ今 目の前にいなくても | 
| その人を想うことで 寂しさは呑み込める。 | 
| 自分を取り巻く人間の数を増やしても | 
| 寂寥感を埋めることはできない。 | 
| 一期一会 | 
| 「はじめまして」はやがて来る「さようなら」を暗示する。 | 
| 出会いの幸せが永遠に続いて欲しいと願うのは当然だが、 | 
| 世の中 そううまくはいかないものらしい。 | 
| 古の一期一会(いちごいちえ)とは | 
| やがて来る別れを見据えた上で | 
| 出会いの今を至福のときと心得よ・・・という教え。 | 
| なんだかよくわからないが | 
| 胸にツンと来る言葉である。 | 
| 針と布 | 
| 尖った針は布を突き破ることができる。 | 
| しかし それで物を包むことはできない。 | 
| 研ぎ澄まされた鋭さの最大の弱点は | 
| 一方向にしか役に立たないということ・・・・・・ | 
| かつて ひたすら鋭さを求めて研ぎあげてきた自分の針が | 
| 実は直線的な力しか持っていなかったのだと | 
| 最近 思い知らされている。 | 
| 布が1枚あれば それをまとい 寒さを防げるが | 
| 針はたとえ何本身に付けても 身を守ることはできない。 | 
| 己の持つ針のような鋭さを自慢する人もいれば | 
| 鋭さとは無縁のところで多くの人を包み込む布のような人もいる。 | 
| 一方向にしか役に立たないものは | 
| 自慢して持つものではない。 | 
| 路 | 
| 振り返れば どこまでも続くあの一本道を歩いてきたのですね。 | 
| 日差しをさえぎる木陰や 路傍の名もない草花に励まされ | 
| どうにかここまで来ました。 | 
| 途中で出会った多くの人たちは みんな笑顔で挨拶を交わし | 
| 手を振りながら別れていきました。 | 
| にぎやかだった街中の通りももうはるか遠くになってしまいました。 | 
| 歩き続けることが生きるということなら | 
| この先何が待っていても 止まることはできません。 | 
| この路をゆくほかない 草の深くも(山頭火)・・・・・ | 
| そうですね。 | 
| 元気を出して もう少し先までいってみましょうか。 | 
| 証し | 
| この世に生を受けて 何十年という年月の中で | 
| 誰かのために 何かを残すという意識はなくても | 
| 人は「わたし」が「わたし」であったという証しを残してきているもの・・・・ | 
| 積み上げてきた日々の暮らしの中に | 
| 出会いと別れを繰り返した忘れ得ぬ知人や友人たちの中に | 
| それは人知れず埋もれているはずなのだが・・・・・ | 
| そう考えれば 過ぎ去った昔を懐かしむという心の動きも | 
| 証しを探す営みの一つなのかもしれない。 | 
| 「わたし」が残してきたものは いったい何だったのだろう・・・ | 
| 若いころは欲しいとさえ思わなかった その証しが | 
| 最近 妙に欲しくなっている自分がいる。 | 
| 憧れ | 
| そんなものはいくら望んでも手には入らない・・・・ | 
| そう思って心の奥にしまいこんでいたささやかな憧れが | 
| 時折 光を求めて顔を出す。 | 
| 制御の効かない 突然の我が身の造反にうろたえてしまうが | 
| 考えてみれば それも自然のなりゆきなのだろう。 | 
| 憧れは 時間と共に心の空虚を栄養として成長していくもの | 
| 言ってみれば 自分で育てているようなものなのだから・・・・・ | 
| 顔を出した憧れを もう一度心の奥にしまいこみながら | 
| 「すまんな。」と声をかけてみる。 | 
| おそらく もう二度と陽の目をみることはないかも知れない密かな憧れに | 
| なぜか愛着を覚える。 | 
| おまけ | 
| ときどき思うのですが | 
| 年を重ねてくると なぜか一つのことへのこだわりが増してくるようです。 | 
| 次々に目の前を通り過ぎていく出来事の大半は忘れても | 
| それだけは どうしても疎かにできないという、一つのことが・・・・ | 
| 中身はとっくの昔に賞味済みで | 
| 往時をしのばせる、空になった箱だけを眺めているのですが | 
| かつてその中に詰まっていた珠玉の輝きを | 
| 何度も思い出しながら 箱を捨て切れずにいます。 | 
| 性懲りもなく馬鹿なことをやっているなと | 
| 一人苦笑いをすることも | 
| まあ この年になればおまけのようなものですが・・・・・・ | 
| 緑 | 
| 色彩心理学というものがある。 | 
| それぞれの色には固有の特徴があって | 
| 人間にある一定の心理的効果をもたらすとのこと・・・・ | 
| 森や林、草原に立つと心地よいのは | 
| 「緑色」の持つ効果らしい。 | 
| そういえば 部屋の壁の色に薄い緑は使っても | 
| あの森で見る深い緑を使う人は少ない。 | 
| 癒されるとわかっていても 使わないのは | 
| 本物の緑の効果には 所詮偽物は敵わないと思うから。 | 
| 緑が無条件に人間を癒してくれるのは きっと | 
| 人類の歴史の中で 長い間森や林のなかで暮らした祖先たちのDNAが | 
| 私たちに受け継がれているからにちがいない。 | 
| 祈り | 
| 元気でやっていますかと 便りをくれる人がいますか。 | 
| 電話でも 手紙でも メールでもいいじゃありませんか。 | 
| そんな人がいる幸せを忘れないようにしたいものですね。 | 
| 一日の終わりに | 
| 「今日はいい一日だった・・・」と思えたら | 
| それはきっと あなたのことを遠くで想ってくれた誰かが | 
| ささやかな贈り物として届けてくれた幸せだったのかもしれません。 | 
| そんなことって 確かにあるのだと思います。 | 
| あなたにとって 今日がいい一日でありますように・・・・・・ | 
| 曲線 | 
| 人が疲れたときに花や木、自然の風景を見たくなるのは | 
| きっと直線に囲まれた生活に疲れてしまったからだろう。 | 
| 直線と曲線・・・・・・・ | 
| 自然の中には直線で構成されるものはない。 | 
| 花びらや木の葉、雨粒、石ころ・・・どれをとっても | 
| 実に多様な曲線でできている。 | 
| 人間の作り上げた文明は それに反して | 
| 直線を組み合わせて作り上げられたもの・・・・ | 
| 本来心地よいはずの曲線を排除することに全力を注いだ結果だ。 | 
| いくら適応能力があるとはいっても | 
| 一分の無駄や隙のない空間の中にばかりいると | 
| 疲れるのはあたりまえのこと。 | 
| 曲線が生み出す無駄や隙間の中に包まれたいという気持ちになったら | 
| 気力や体力とはちがうところで | 
| 今 自分は疲れているんだと思うことにしている。 | 
| 疾風知勁草 | 
| 濁流に洗われた草花も 満身創痍の中から | 
| 人知れず やがて新しい芽をふく。 | 
| 強風に葉を飛ばされ 枝を折られた木々も | 
| やがて新しい葉や枝を身につけ 立ち直る。 | 
| 理不尽な災難や突然の不幸に打ちのめされたとしても | 
| やがて 確かな足取りで立ち上がる人がいる。 | 
| 試練に耐え 厳しく 激しいものに晒されて | 
| なお生き残ったものに贈られる賛辞は | 
| 遠慮せずに素直に受け取るがいい。 | 
| 耐え抜いたその意思は本物だったという証だから・・・・・・・ | 
| 疾風知勁草 | 
| 疾風(しっぷう)に勁草(けいそう)を知る | 
| 嵐が過ぎ去ったあとで 本当に強い草がわかる・・・・・・ | 
| 拳 | 
| 広げてみると 5本の指は向きも長さも不ぞろい | 
| だが 固く握ると | 
| 長さのちがう4本の指先はまっすぐ一直線に並ぶ。 | 
| それまでは ひとり他を向いていた親指は | 
| その4本の上にしっかりと 包み込むように乗る。 | 
| もっとも力のみなぎる姿には | 
| 個性が調和し 融合した美しさがある。 | 
| 我にふりかかる不条理な敵に向かうとき | 
| 人はそうして固めた拳を 空高く突き上げる。 | 
| 覚悟 | 
| ここまでは比較的楽だったが | 
| ここからが正念場だという地点に立つことがある。 | 
| そこに立ったとき 考えなければならないことはただ一つ | 
| たとえ何が起ころうと すべては己の才覚で乗り切り | 
| 責任を決して他に転嫁しないということ・・・・・・ | 
| 思い通りにいかなくても 愚痴をこぼすことだけはすまい。 | 
| 自分で決断し 実行しているはずなのに | 
| うまくいかない結果を他人のせいにしている話を聞くのは見苦しい。 | 
| 覚悟を決めるとは | 
| 孤独で静かな 己との闘いである。 | 
| ルール | 
| 子どものころに 缶けりという遊びがあった。 | 
| 鬼ごっこの一つだが 鬼になった子が幼いと | 
| 何度も缶を蹴られて 鬼が続く。 | 
| しまいには 泣きべそをかきながら隠れた者を探している。 | 
| そんな時に 年長者の子どもがわざと見つかって | 
| 鬼を交代してやっていた。 | 
| 遊びの中にも社会のルールが生きていた。 | 
| 缶けりをして遊ぶ子どもを とんと見かけなくなった今 | 
| 彼らはどこで 子どもの社会にもあるはずのルールを | 
| 学んでいるのだろう。 | 
| 空き缶一個あれば 何人でも遊べるあの遊びには | 
| 先生や親が教えてくれない 共生の基本的なルールが | 
| ぎっしりと詰まっていた。 | 
| 今は遠い昔の話である。 | 
| 後戻り | 
| もう後戻りはできないとわかったとき どうするかで | 
| 人は大きく二つのタイプに分けられる。 | 
| その衝撃に打ちのめされ しばらくは立ち直れない人と | 
| そっちが駄目なら 別の道を探そうと瞬時に考える人・・・・・・ | 
| どちらもやがては目的地にたどり着くのだろうが | 
| 途中で費やす労力には大きな差が出る。 | 
| 今 後戻りはできない道にいるのだと心得ていれば | 
| あわてふためく前に 視線は自ずと前方に向けられる。 | 
| 新しいことを始めるのなら | 
| もはや後戻りは叶わないと腹をくくることで | 
| 今日を生きる力が湧いてくる。 | 
| 自省 | 
| 思い起こせば 恥じ入ることの多い我が人生 | 
| 若気の至りという言葉では到底容赦してはもらえない過ちを | 
| 過去 幾度となく 繰り返してきた。 | 
| 人生とはそんなものさ と慰める友人もいるが | 
| 迷惑をかけた人の顔が 時折脳裏をかすめていく。 | 
| かといって | 
| 「風の中 おのれを責めつつ歩く (山頭火)」と格好よく反省したいが | 
| そんな度胸もない。 | 
| ただただ恥じ入るばかり・・・・・・・ | 
| 「どうしようもない私が歩いている(山頭火)」 | 
| どうやら こちらのほうが的を得ているようである。 | 
| 第二ラウンド | 
| 今 同世代の人の中で眩しく輝いて見えるのは | 
| 仕事をばりばりこなす有能な人ではない。 | 
| 人生の第二ラウンドを求めて 未知の生活に飛び込んだ人たちだ。 | 
| 安定した生活や収入に見切りをつけて | 
| 温め続けてきた夢に向かって一歩を踏み出した その勇気に | 
| 素直に感動する。 | 
| 漠然とした憧れはありながら 自分にはできないことだと | 
| あきらめかけているからだろう。 | 
| 人生の第二ラウンドは | 
| それを求めて リングに立った者にだけ | 
| 与えられる。 | 
| 美学 | 
| 団塊の世代・・・・ | 
| そう呼ばれてきた人たちが 間もなく | 
| 現役を引退する時期が近づいたと報じられる。 | 
| 技術や仕事の重要なノウハウを持った人たちが | 
| 一斉に現場からいなくなることは 大変な事態だというが | 
| そんなことは 知ったことではない。 | 
| 昭和という激動の時代の中で | 
| おじさんたちは 精一杯できることをやってきた。 | 
| 幕引きのときまで あれこれ言われてはたまらない。 | 
| 残すべきものは 残してきた。 | 
| 静かに黙って去っていくのも | 
| おじさんたちの美学なのだ。 | 
| 結菜へ | 
![]()  | 
    
| 4歳の誕生日 おめでとう。 | 
| お前が生まれて もう4年になるんだね。 | 
| 日に日に大きくなっていくお前の姿は | 
| おじいちゃんの心の中にはちゃんと残っています。 | 
| こうやって一つずつ年を重ね やがてお前も大人になるのだろう。 | 
| いつか 囲炉裏でも囲んで お前とゆっくり話がしたいな。 | 
| 赤ちゃんのときの お前の匂いを思い出しながら | 
| いっぱい いっぱい お前に伝えておきたいことがあるんだ。 | 
| その日がいつかくることを おじいちゃんは心待ちにしています。 | 
| 一つだけ | 
| 他の誰でもない たった一人の人のために | 
| 一つだけできることがある。 | 
| その人のことを忘れずにいること・・・・・・ | 
| 共有した時のぬくもりを 時空を越えて何度も反芻し | 
| 面影の輪郭をなぞってみること・・・・・・・・ | 
| もはや届けることが叶わなくなった想いは | 
| そうすることで増幅し 消えることはない。 | 
| たった一つだけできることが まちがいなくある。 | 
| 戦力外通告 | 
| 新聞の求人広告を見ていると、採用資格欄に年齢40歳まで、とか35 | 
| 歳までという記述がある。たまに自分に近い条件があっても、50歳までと | 
| なっている。「そうか・・俺の歳ではもう雇ってくれるところはないのか。」 | 
| と、改めて自分が置かれている社会的立場を思い知らされる。 | 
| かつて日本は、終身雇用、年功序列という鉄壁の雇用体制で高度経済 | 
| 成長を作り上げてきた。頑張っていい企業に就職することがステータスで | 
| あった時代、子供たちには将来の自分像を描くための道筋があった。 | 
| 親も子供たちへ将来の進路を説く、はっきりとした根拠があった。 | 
| それが失われ始めた今、子供たちは老人と同じように「戦力外通告」を | 
| 受けたという感じ方をしているのかも知れない。 | 
| 酵素 | 
| 地中に染み込んだ水が やがて伏流水となって | 
| 地表に出でくるように | 
| 自分の中に取り込んだものが | 
| 豊かな実りを伴ってやがて表に現れる、そんな人になれたらと思う。 | 
| 熟成の期間を経て 芳醇な香りが加わればなおいいだろう。 | 
| 人は年を重ねるごとに 社会生活で得た知識や体験、喜怒哀楽を | 
| 熟成させ、消化する酵素を持つのだと聞いたことがある。 | 
| それが本当なら そろそろその酵素の効き目が | 
| 顕れてもいいころなのだが・・・・・・・ | 
| 我が身から染み出る伏流水には 未だ | 
| 人の喉を潤し 感嘆させる味はないと心得ている。 | 
| 小鳥 | 
| 早朝 自室の窓をあけると | 
| 近くの林からいろんな小鳥の鳴き声が聞こえてくる。 | 
| 名前や姿はわからないが 仲間を呼び 家族を探すあの声が | 
| 私たちに心地よく響くのはなぜだろう。 | 
| 同じ地表で 多くの生き物たちと共に生きているという実感を | 
| 彼らほど鮮明に伝えてくれるものはいないから | 
| あの鳴き声を聞くと どこかでほっとする気持ちになるのだろう。 | 
| 花や雲や風、魚や小さな虫たちも同じ地表の仲間だが | 
| 声でその存在を確かめることはできない。 | 
| 再生 | 
| たいていの人は過去の出来事の痛手を | 
| 一つや二つは引きずって生きている。 | 
| 今は笑い話ですむ話にも | 
| 手痛い記憶が潜んでいることを忘れることはない。 | 
| 時折 突然顔を出すその記憶におびえることはなくても | 
| 生涯消えることはないだろうという予感だけは | 
| 漠然と精神の深層部で息づいている。 | 
| 最近 用心深くなった自分に気が付いたら | 
| あの痛手から学んだものが再生を始めていると | 
| 思うことにしている。 | 
| 去華就実 | 
| 外面を気にするな 人間は中身で勝負だ・・・ | 
| などと言うのは格好よいが | 
| 外面がどうしても気になるのが普通の人。 | 
| それはそれでいいのだろう。 | 
| ただ 外面を磨くのと同時に内面を磨くことを忘れなければ・・・ | 
| 内面を磨く秘訣はただひとつ | 
| 感動する心を持つことだ。 | 
| 身近なものの中に命の温もりを見出せる心を持つことだ。 | 
| それができれば いずれ外面の体裁は気にならなくなる。 | 
| 去華就実(華を去りて 実に就く) | 
| 華やかに見える花びらが散れば | 
| やがて実が太る。 | 
| 特権 | 
| 若者の特権は | 
| 目の前にあるものに全力で立ち向かえること。 | 
| そのことが何年か先に どんな形で自分に返ってくるかを | 
| 考えたりはしない。 | 
| 年を重ねた者の特権は | 
| 今やっていることは 数年先には | 
| きっとこんなふうに思い出されるんだろうなと | 
| 思い描くことができること。 | 
| その違いがあるから お互いに相手から学ぶものがある。 | 
| 若いころ 困難な局面でも全力で立ち向かう経験があったから | 
| その見返りに 今 将来を予見する能力を手にしている。 | 
| 多くの場合 その仕組みの凄さには気づかないのだが | 
| 胸に手を置いて考えてみるべきかもしれない。 | 
| 意味付け | 
| どんな仕事でも | 
| その中に意味を見出しているから 続けられる。 | 
| 意味を見出すと その仕事の中で自分が育っていく。 | 
| そして 人間として大切なものが満たされていく。 | 
| 人はそうやって大人になっていくものだ。 | 
| 迫力のある人格を磨きたければ | 
| いまやっている ささやかな仕事に | 
| 最大限の意味付けをすること・・・・・・ | 
| 天啓 | 
| 人は何のために生きているのか・・・・・・ | 
| 若いころ 友人と夜を明かして語り合ったことがある。 | 
| 口角泡を飛ばしての激論が続いたが | 
| 結局結論は見出せなかった。 | 
| 今なら その答えは簡単に出せる。 | 
| たとえ何が起ころうと 明日という日を迎え | 
| 精一杯やれることをやるために 人は生きている。 | 
| 生きるという営みに 人はいろいろと理屈をつけたがるが | 
| 答えはこれしかない。 | 
| その証拠に 眠りにつくとき | 
| 明朝 この目が開かないとは誰も考えない。 | 
| 明日もおまえらしく生きてみろという 天啓である。 | 
| 忘却 | 
| 忘れるという心の作用は | 
| おそらく人が生きていく中で編み出した傑作のひとつである。 | 
| 痛みや辛さをみんな抱え込んでしまっては | 
| どんな頑丈な精神でもたまらない。 | 
| 二度と立ち上がれないと思える窮地に追い込まれても | 
| やがて傷が癒えて立ち直れるんだと思えれば | 
| 今日を生きる元気がわいてくるという事実・・・・ | 
| 年を重ねた者の特権は | 
| そんな忘却の効能を肌身に刻み込んで生きているということ。 | 
| そうやって生きてきたという自信が | 
| 迫りくる老いと闘う武器になっている。 | 
| 共有 | 
| あの人は今ごろどうしているかなあ と思いを馳せる・・・・・ | 
| そんな人が心の中にいる幸せを忘れてはいけない。 | 
| 星の数ほどいる地球上の人間だが | 
| 「わたし」とつながっているのはほんのわずか。 | 
| つながりに深い、浅いはあっても | 
| 今日という日、今という時間を共有して生きている友人たちが | 
| 間違いなく私とともにいることのすばらしさを | 
| 忘れまい。 | 
| かけがえのない、一度きりの人生 | 
| たった一人で生きていくには 少し淋しすぎる。 | 
| 絆 | 
| 若い二人は お互いを見つめあう。 | 
| 見つめ合っていないと 幸せが逃げていく不安に襲われるから・・・ | 
| 年を重ねた夫婦は 並んで遠くにある同じものを見ている。 | 
| 黙っていても それが絆の証しだと知っているから・・・・・ | 
| 共存 | 
| 見渡すかぎりの草原を私たちは「草原」と呼んでいるが | 
| 実は小さな名もない草や花たちが | 
| 無数に集まって生きているだけ・・・・・ | 
| 美しいと映るその景色の中にも | 
| 明日の我が命を賭けた熾烈な生存競争がある。 | 
| 我が目にどう映ろうと | 
| そこに在るものはみなそうやって生きているということを | 
| 忘れないでいると | 
| 私と彼らが同じ地平にいることの凄さに胸が熱くなる。 | 
| 踏みつけようとした雑草に | 
| 声をかけたくなるのも そんなときだ。 | 
| 別れ | 
| 大切なあなたへ贈る言葉が見つかりません。 | 
| 思いは山ほどあるのに それを伝える言葉が見つからないのです。 | 
| 交わした会話やともに過ごした時間の温もりだけが | 
| 空白の心の中で点滅しています。 | 
| 別れの哀しさは何度も味わっているはずなのに | 
| それを定めとして呑み込むことに躊躇しています。 | 
| 新しい道を歩き始める勇気をもらい | 
| かけがえのない一度きりの人生に彩りを与えてもらいながら | 
| 何のお返しもできないまま 今日まできてしまいました。 | 
| どうぞお元気でお過ごしください。ご多幸をお祈りしています。 | 
| 今日庭に5本目の梅の苗木を植えました。 | 
| 長所 | 
| 自分の短所を挙げろと言われれば | 
| 瞬時に十指に余る欠点を言うことができる。 | 
| だが 長所となるとそうはいかない。 | 
| 何ゆえ 自分にもあるはずの長所がすぐに思いつかないのか・・ | 
| 長年自分を育んだ教育の根幹には | 
| よりよき人間になるには 短所を直せという教えがあった。 | 
| 短所には目をつぶり 長所を伸ばせという指導は | 
| 残念ながら記憶にない。 | 
| 叱るよりも誉めろというのも 実は | 
| そんな経験を持たなかった大人たちが | 
| 自分をお手本にして遅蒔きながらようやく気づき始めてきたからだ。 | 
| 他人から見ればすぐにも見えるはずの自分の長所が | 
| 自分で見えないという 情けない事態を回避するためにも | 
| 思いあがりや自己満足でもいいから | 
| 自分をもう一度見つめなおしてみるべきかも知れない。 | 
| 負け犬 | 
| 負け犬というのは | 
| 自分より上位の犬に立ち向かったとき | 
| 決して寝転がって腹を見せない犬を言う。 | 
| 最大の弱点である腹を相手に見せることで | 
| 服従の意思を表す犬が多い中で | 
| たとえその結果かみ殺されることになっても | 
| 決して自分の弱点で媚を売らないという決意の固さゆえに | 
| 「負け犬」と呼ばれる孤高の生き物に感動する。 | 
| 群れで生きる彼らにとって 力あるものに従わないことは | 
| その群れに属することが叶わないということ・・・・・ | 
| それを良しとする潔さは | 
| 半端な覚悟ではない。 | 
| 決意 | 
| あきらめるための口実を探すのは 誰にでもできる。 | 
| だが あきらめない決意を育むのは | 
| そう簡単ではない。 | 
| あきらめないということは | 
| これから先の 気の遠くなる時間の流れに向かって | 
| 決しておまえには流されないぞ という | 
| 反逆の狼煙をあげること・・・・・ | 
| 小さなことでもいいから | 
| あきらめないと決めたことを一つぐらい持っていても | 
| 人生 邪魔にはならないだろう。 | 
| 「切ない」という言葉には | 
| それはどんなに辛くても乗り越えなくてはならないという | 
| 意味が付加されている。 | 
| うれしい、悲しい、なつかしい、などと | 
| 人の気持ちを表す言葉はたくさんあるが | 
| 「切ない」という言葉の意味を味わったときから | 
| 人は大人になる。 | 
| 夜空を飾る満天の星たちは | 
| 誰かのために光っているわけではない。 | 
| ロマンとは | 
| 偉大な勘違いである。 | 
| 抜け殻 | 
| 満たされないと感じる日々の暮らしの中にいると | 
| どこか遠くに まだ自分に割り当てられた幸せが | 
| 残っていると思うのは 仕方がないのかも知れません。 | 
| 人は 小さな幸せを一つずつ手繰り寄せながら | 
| それを糧として生きていくものだからです。 | 
| 味わい尽くされた幸せの抜け殻ばかりを見ていると | 
| どこかで踏ん切りをつけなくては、という気持ちが揺らぎます。 | 
| 殻はどう見ても殻・・・・・・ | 
| 潔く見切りをつけて 新しい糧を探すしかありません。 | 
| 割り当てられた幸せがまだ残っていると思っている間は | 
| 自分の手元にある小さな輝きと温もりは見えないものだと | 
| 心得るべきでしょう。 | 
| 道 | 
| 世俗の汚れなど持たない 純粋な生き方があるはずだと | 
| 考えたくなるときはありませんか。 | 
| そんな夢のような話はないと否定する自分のどこかで | 
| かすかに蠢く 小さな意思を感じることが・・・・・・ | 
| 生きていく指針となる 確固とした信念を求めて | 
| 日々 右往左往していますが | 
| そんなものは そう簡単に手にはいるものではありません。 | 
| こんなふうに生きてみなさい と指し示してほしいから | 
| 人は本を読み 話を聞き 誰かを頼るのですが | 
| それで「道」を得る人は稀です。 | 
| ・・・・朝に道を聞かば 夕に死すとも可なり・・・・・ | 
| 古の人がそう考えたことも素直にうなづけます。 | 
| 足元 | 
| 見つけようと必死になって探していたものが | 
| 気がつけば 自分の足元にあったという話はよくあること | 
| 目に触れたとき 大切なものになる予感がはたらいて | 
| 知らず知らずのうちに足元に引き寄せておいたのだろう。 | 
| なんだ こんなところに在ったのかと一人照れ笑いをしながら | 
| ここまで引き寄せておいた自分の周到さに感心する。 | 
| 大切だと思ったものは | 
| 心配しなくても自分の身近なところにちゃんとある。 | 
| うろたえて 右往左往しながら探す前に | 
| 手を伸ばして触れるものの中にあるはずだからと | 
| 自分に言い聞かせることにしている。 | 
| 別れ | 
| 娘夫婦と孫に会うために宮崎を訪れた。3日間にぎやかに過ごして | 
| いよいよ別れのとき・・・・・孫娘が急に涙顔になり、「お風呂にいっし | 
| ょに入ろう。」と言い出す。別れたくないという、彼女なりの精一杯の | 
| 意思表示である。何とかなだめすかして車に乗ったが、目にいっぱ | 
| いの涙をためて、手を振る姿にこちらまで胸が熱くなる。 | 
| もうすぐ4歳の誕生を迎える孫だが、つい最近までこんな光景はな | 
| かった。いつのまにか「別れ」の意味とそれに伴う惜別の情を感じる | 
| までに成長していた。 | 
| 遠い昔、田舎に住む祖父母を訪ねて、別れのとき、土埃の中でい | 
| つまでも手を振りながらバスを見送ってくれたその姿に、わけもなく | 
| 涙があふれて止まらなかった日の記憶が重なった。 | 
| 大切な人との出会いと別れ、人生には大きな喜びもあるが悲しく切 | 
| ない別れもあるという掟を幼い彼女は今、学びはじめている。 | 
| 見えなくなるまで手を振る孫娘の心のどこかに、きっと柔らかい魂 | 
| が育ちつつあることをうれしく思いながら、宮崎を後にした。 | 
| 失礼 | 
| つくづく日本人は礼儀をわきまえない国民だと感じることがある。 | 
| 外国人にマイクを向けて質問し、その人の片言の日本語が正しくな | 
| いとき、あるいは発音が正しくない場面で「笑う」ということ・・・・・・ | 
| 外国人にとってみればそれが精一杯の日本語なのであろう。世界 | 
| でも指折りの難解な言語だと言われる日本語である。片言でも意味 | 
| を伝えられるまで習得したその人の努力が見えないから笑う。 | 
| 顧みて自分の英語力はいかが?路上でいきなりマイクを向けられ | 
| 英語で質問されて、うろたえない日本人はいるだろうか。 | 
| 英語コンプレックスの裏返しの所業であろうが、情けない。世界広 | 
| しと言えども、自国の言葉を懸命に話そうとする人の発音を聞いて笑 | 
| うのは日本ぐらいのものである。英語力をつけるのが急務だといきま | 
| く前に、外国人と接する最低の礼儀を教えるほうが先だと思うのだが | 
| なかなかそうもいかないらしい。 | 
| やさしさ | 
| やさしい心の持ち主は | 
| 人のつらさを 自分のつらさにすることができる。 | 
| そうしたいと思わなくても | 
| 心が勝手にそう思ってしまう。 | 
| 悲しみや苦しみに 歯を食いしばって耐えている人を見れば | 
| 心の奥で「がんばれ、負けるな。」とつぶやかずにはいられない。 | 
| いったい どこでそうでない人とそんなに違ってきたのか・・・・・ | 
| きっと 背負ってきた荷物や乗り越えてきた壁の分だけ | 
| 心のひだが柔らかくなっているのだろう。 | 
| 見せかけのやさしさと 決定的に違うのは | 
| それを笑顔に包んで あなたの前に差し出さないこと | 
| 見せかけのやさしさは 笑顔でくるまないと | 
| ボロがでてしまう。 | 
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