雑感バックナンバーNo.6
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| 節目 |
| 竹は自分の生長を一つずつの節で区切って育つ。 |
| 木々は年輪という足跡を残しながら年を重ねている。 |
| 顧みて自分には区切りと言える節目があったのだろうか。 |
| その節目を増やすごとに大きく、人間として豊かになれた、 |
| そう感じさせるものが・・・・・・・・ |
| 転勤や子どもの誕生、大切な人との出会いや別れ |
| なんだか少し頼りないが、それが節目だったんだろうと |
| 今になってみると思えるのだが、 |
| 目に見える形で残っていないから確かではない。 |
| 人間がいくら威張ってみても |
| そこらに自然に生えている竹や木々に結局勝てないのは |
| 節目を残す術を磨いてこなかったから・・・・・・ |
| 節目は時とともに固くなり その上に伸びるものを支える。 |
| 抵抗 |
| 物忘れの頻度が増えるにつれて |
| かつてコンピーター並の記憶力を誇った自分の脳みそにも |
| 金属疲労が蓄積していることを痛感する。 |
| 若い頃なら病気を疑うが 今は少しのテレ笑いを含めて |
| こんなものなんだろうと素直に受け入れている。 |
| 刃向かってみても太刀打ちできる相手ではないことは |
| 黙っていても自分の五感の中に染み込んでくる。 |
| 逆らえないものを黙って受け入れるということは |
| 決して ひれ伏して隷属に甘んじることではない。 |
| 無駄な力は使わずに |
| やがて来る決戦に備えよという予告である。 |
| かつてはたとえ天地が裂けても許容できないと思ったものが |
| 今は 実に素直に自分の中にある。 |
| 興味 |
| 日本刀に興味を持っていろいろと調べている。今まで全く知らなか |
| った世界なので、見るもの、聞くものがみんな新鮮なことばかり・・・・ |
| 名刀と呼ばれる所以は何か、刀工秘話、刀を扱う作法、研ぎの極 |
| 意、鑑定書の真偽など、下手な小説を読むよりずっと面白い。 |
| 日常生活の中で使われる言葉にも刀に関連したものがある。 |
| 「折り紙つき」・・・・刀の目利きをした半紙の鑑定書のこと、「しのぎを |
| 削る」・・・・しのぎ(鎬)とは刀身の背に近いところにある膨らんだ部 |
| 分で、つばぜり合いをするとここが互いにこすれることを言う。 |
| 「目抜き通り」・・・・めぬき(目貫)とは刀の柄の中にある装飾の金具 |
| で、柄の中央に位置する。「切羽詰る」・・・・せっぱ(切羽)とはつばと |
| さや(鞘)のがたつきを調整する薄い金具で、これを入れることで一 |
| 分の隙もなくなる。長い歴史の中で育まれた言葉であろう。 |
| 知らない世界に足を踏み入れる心地よさを味わっている。 |
| 決断 |
| 若い頃 自分を奮い立たせてくれるものは |
| 黙っていても向こうからやってきた。 |
| 寄り付くことさえ困難だと思える大きな壁や高い山の頂が |
| いつのまにか忍び寄り 気がつけばそれを踏破するための一歩を |
| ちゃんと踏み出していた・・・・・・ |
| 行く手をさえぎるものには 果敢に挑む力と意思があった。 |
| 人生少し長く生きてくると そんなワクワクするような目標は |
| 黙っていては もうやって来なくなる。 |
| こちらから探しに行かない限り 巡り合う機会はないのだろう。 |
| 日溜りに座して今日と変わらぬ明日を待つか |
| ときめきを求めて寒風の中に一歩を踏み出すかは |
| すべて私の決断にかかっている。 |
| 土 |
| 秋に植えたジャガイモの収穫をした。 |
| 土の中から思いもかけぬ大きさのイモが続々と出てくる。たった一 |
| つの種芋がこんなにもたくさんの実をつけるのかと、その生命力の |
| 強さに感動であった。以前ある農家の人に「土は人間を裏切らない」 |
| と聞いたことがある。手間隙をかけてやれば土はちゃんとその見返 |
| りを人間に与えてくれる。原始の昔からそうやって人は土とともに生 |
| きてきた。ささやかではあるが、小さな畑ですばらしい宝物を掘り出し |
| た気分であった。2度の台風で、その茎は根元から大きく曲がり、石 |
| ころだらけの土でありながら、彼らは悲鳴一つあげることなく自らの |
| 使命をまっとうする。その誇らしさがたっぷり詰まった我が家のジャ |
| ガイモの味は格別であった。土に感謝・・・・・である。 |
| 再会 |
| 娘の車の車検に付き合って、近くのディーラーへ行った。応対して |
| くれた若い男性の社員は、物腰が柔らかく、親切に説明をしてくれ、 |
| 「この店を選んでよかった。」と感じさせる雰囲気であった。 |
| あちこち調べてもらって、見積もりを検討し、車検の手続きを済ま |
| せて帰ろうとしたとき、「あのう、先生、僕を覚えていますか?」といき |
| なり聞かれた。突然のことで一瞬戸惑ったが、出身の小学校の名前 |
| を聞いたときに記憶がよみがえった。「ああ、○○君じゃないか。な |
| んだ、君だったのか。」・・・・・・・16年も前に5,6年の担任をしたとき |
| の教え子であった。口数の少ない、物静かな子どもであった。よく見 |
| ると当時の面影がうかがえる。ひとしきり昔話をしてから別れた。 |
| 見送りのとき、元気な声で「ありがとうございました。」という彼の声 |
| が耳に残った。彼にとって私はどんな教師であったのだろうと思わず |
| にはいられない。こうしてかつての教え子たちが元気で仕事をしてい |
| る姿を見せてもらえることがこの仕事の楽しみでもある。○○君、が |
| んばれよ。かけがえのない時間をともに共有した仲間として、君の健 |
| 闘を祈っています。 |
| 追憶・青春 |
| あなたにもわたしにも 等しく流れた時のはざ間に |
| 思い出という道標をいくつ置いてきたのでしょう。 |
| 数える間もなく流れていったところを見ると |
| きっと駆け足で通り過ぎてしまったのですね。 |
| 振り返っても もう見えなくなりかけたその道の向こうに |
| 間違いなく あの頃の熱く澄んだ情熱や |
| 力いっぱい踏みしめた大地の匂いが刻まれています。 |
| 何の見返りも求めず ただ一途に駆け抜けることが |
| あの頃の私たちの憧れだったように |
| 今 置き忘れてきた思い出という道標を一つずつ拾いながら |
| 青春という名の時間がわたしたちにもあったのだと |
| 新たな憧れと少しの照れくささで噛み締めています。 |
| 絆 |
| わずらわしい人間関係などまっぴらごめんだと粋がってはいても |
| 自分ではなかなか気がつかないところで |
| 実は多くの人とかかわりながら「わたし」は生きている。 |
| 思い出したり 口論したり ほのかな恋心を抱いたりするのも |
| みんな自分とどこかで繋がっている人たちだ。 |
| 時には厄介な関係を押し付けてくる人もいるが |
| そんな人も含めて彼らの中で 「わたし」は今ここにいる。 |
| 自分で望んだのではないが 気が付けば多くの隣人たちと |
| 2005年の今日を共有している。 |
| 断ち切らなくてもよい繋がりなら |
| そっとしておくのもいいだろう。 |
| 2005年・雪国 |
| 年末から正月の間を信州の山里で過ごした。日本屈指の豪雪地 |
| 帯というだけあって、年末から大雪に見舞われた。一晩で50センチ |
| から80センチの積雪、わずか3日間で1メートル近い雪であった。 |
| 朝起きて家から出るためには、腰の下まで積もった雪をスノーダン |
| プと呼ばれる雪かき道具で掻き分けないと、道に出られない。 |
| 朝5時ごろから大きな除雪車が道に積もった雪を捨てるために何 |
| 度も往復する。車は完全に雪だるま状態で、エンジンをかけて動け |
| るようになるまで30分はかかる。いやはや大変な事態であった。 |
| 標高800メートル近いこのあたりでは、2,3メートルの積雪があた |
| り前だと地元のおじいさんが言う。「これからが本番だで・・・。」と笑い |
| ながら話してくれた。村中がひっそりと息をひそめて遠い雪解けの時 |
| を待っている。しんしんと降り積もる雪を見ていると、不思議に謙虚な |
| 気持ちになる。じたばたしても仕方がないという、開き直りの心境が |
| 自分の中に芽生えていることに気づかされ、雪国で暮らす人々の気 |
| 持ちに少し近づけたような気がした。 |
| 一面の銀世界の中で新しい年を迎えることができた。 |
| 守る |
| 忘れがたい思い出を刻んでくれた多くの人に教えられて |
| ひたすら城壁を高くして守ることだけを大切にしてきた人も |
| 少しずつ柔らかくなっていく。 |
| 人が年を重ねながら生きていくということは |
| 一旦守るために積み上げた城壁の石を |
| 一つずつ外していく営みなのかも知れない。 |
| 高い城壁はそれだけ多くの日陰を作ってしまう。 |
| 一生懸命に生きている人を見たら |
| 心が熱くなることも |
| 小さな優しさをさりげなく渡してくれる人に出会ったら |
| 心が震えることも |
| 陽の差し込む城壁の外では普通のことだったのだと |
| 今になってしみじみ思う。 |
| リズム |
| 音楽にはメロディーの後ろで刻まれるリズムがある。若者が歌う歌 |
| を聞いていて16ビートと呼ばれる、テンポの速い曲が多いのに気づ |
| く。少し前は8ビートと呼ばれる、8分音符を基本にした軽快な曲が |
| 多かった。我々の青春時代には4ビート、つまり4分音符を基本にし |
| たゆったりとした曲が巷にあふれていた。 |
| こうしてみると、時代の流れが少しずつ速くなっているのがわかる。 |
| 世の中のテンポが曲のリズムにも反映され、その速さを心地よいと |
| 感じて受け入れる心が働くからだろう。 |
| 多感な時期に4ビートを叩き込まれたおじさんやおばさんたちには |
| 8ビートは速すぎてついて行けないし、16ビートに至ってはただもう |
| やかましい騒音でしかない。 |
| 感性の底流には、自分が聞いた心地よいリズムが固有のテンポで |
| 鳴り響いている。そのテンポが思考や生き方にも実は投影されてい |
| るのだと気がつけば、少しは気が楽になる。 |
| 自分にとって心地よいテンポとリズムで生きればよい。 |
| 回り道 |
| 結果を予測するのはむずかしい。 |
| 思い通りの結果に導くのは至難の技だ。 |
| こうすればこうなるだろうと立てた予想は |
| 多くの場合予期せぬアクシデントのために狂う。 |
| しかし だからといって結果を考えずに行動すれば |
| とんでもない方向に流されて こんなはずではなかったと |
| 後悔することになる。 |
| だから 結果を予測するなら |
| 最低2つの事態を想定することにしている。 |
| これで行く だめならこうする |
| 用心深く生きるということは 回り道を避けることではない。 |
| あえて回り道を用意すること。 |
| 覚悟 |
| 長い年月生きてきたという証は |
| 振り返ったときに見える自分の足跡でわかる。 |
| もはや取り戻すことができない時間の意味は |
| その中で出会った多くの人の顔を思い出すことでわかる。 |
| あの人も あのこともみんな私に付属する記憶の再生装置 |
| なつかしさや いとおしさを織り交ぜて |
| 出会えてよかったとほんとうにしみじみ想う。 |
| まだこれから出会うであろう 多くの人や物事が |
| かけがえのない記憶になるためにも |
| 目の前にいるあなたと他人を見間違えない覚悟をしようと思う。 |
| そのために ささやかだが今日も |
| 私の足取りと歩幅で歩いてみる。 |
| 夜明け |
| 何事もなかったように東の空が白み 夜が明けていく。 |
| 人々の営みの中では一大事があった昨日も |
| そんなことは関係ないと言わんばかりの潔さで |
| みごとに再起動されて 今日が始まる。 |
| いい加減に目を覚ませと言われているようで |
| 何だか気持ちがいい。 |
| 夜明けに立ち会うことができた日は |
| 何かいいことがありそうな気がする。 |
| 囲炉裏 |
| 囲炉裏を作ったのはいいが、困ったことが起こっている。あまりの |
| 居心地のよさについ晩酌のお酒の量がふえていること・・・・・・・ |
| 炭火の心地よい温かさと目の前に火がある安心感で、ついもう一 |
| 杯ということになってしまう。ありふれた材料も網で焼くと立派な肴に |
| 変身することも原因の一つ。 |
| もっぱら日本酒党だが、囲炉裏にはやはり日本酒が似合う。最近 |
| はお酒に燗をつけて飲むことがめっきり少なくなったが、熱燗の酒を |
| ちびちび飲むというのは、アルコールの急激な摂取を防ぐという、古 |
| 来からの酒飲みの知恵である。教訓をかみしめながら実践している |
| 「石油ストーブがいらなくなったから、灯油代が浮くね。」と喜んでい |
| る奥方だが、実際は炭代のほうがはるかに高いのである。いまや炭 |
| は高級品、炭火で暖を取るというのは贅沢なことになっているのだ。 |
| 必要に迫られて、家族みんなが炭火の起こし方をそれなりにマス |
| ターした。これも経験、賢くなることは悪いことではない。 |
| 余力 |
| 何日か先に 気の重い出来事が待っているとしたら |
| なんでこんなにわずらわしい目に遭わなくてはならないのかと |
| 腹立たしくなることがある。 |
| その日が終わればきっと素敵な開放感が味わえるのだろうなと |
| それだけをより所に今日を生きている。 |
| 生きていくことはわずらわしさと向き合うことだ、などと |
| カッコいいことを言うのは |
| もうそろそろ終わりにしてもいいのかなと思う。 |
| 性懲りもなく 勝手に向こうからやってくる厄介な事態には |
| いやでも付き合うしか仕方がないが |
| 苦悩するだけの価値が見出せない対象であるなら |
| 自ら求めて渦中に飛び込む必要はない。 |
| いずれ本気で立ち向かわなければならない相手が現れるまで |
| 余力として残しておくのも 生きる知恵といえる。 |
| 目標 |
| 目標を立てる。それに向かって準備をはじめる。 |
| そこに至る道のりが長く 険しいほど |
| 周到な用意がなくてはならないと思うから |
| 相当の覚悟とともに助走距離を長くする・・・・・ |
| 若いころの目標なら 失敗もまた肥料になるのだろう。 |
| しかし この年になっての目標には |
| 失敗は許されない。 |
| そう腹をくくってみれば |
| 案外難しいことではないかもしれない。 |
| 途中で投げ出すわけにはいかないと決めた目標なら |
| 今日そのために何をしたか、 が |
| 明日を生きる力になる。 |
| 邂逅 |
| いろんな意味で気になる人がいる。 |
| どうせ他人なのだから どうでもいいようなものだが |
| その人の存在が心のどこかにひっかかる。 |
| 何気なく交わす言葉の端々に |
| 妙に気を遣う自分を感じて 少しうろたえる。 |
| 異性であれば 淡い恋心 |
| 同性であれば ライバル心・・・・・・ |
| 平静な心が揺れ動き しかもそのことが |
| わずらわしいと感じていないのなら |
| 今自分は とても大切な人に巡り合っているのだと |
| 思うことにしている。 |
| さざんか |
| 山茶花の花が咲き始めている。 |
| 凍てつくような寒中でも みぞれ交じりの雨の中でも |
| 我が意に介さずとばかり 可憐な花を開く。 |
| およそ生命の営みには不向きと思えるこんな時期に |
| 何ゆえあえて花を開くのか・・・・・ |
| 流れに逆らう気負いや 高慢な自己主張もなく |
| そんなふうにありたいと願う人間を横目に |
| 泰然自若としてたたずむ意思だけが見える。 |
| 顧みて 我に冬に開く花の用意があるか |
| だれかのためでなく 自分だけのために彩る花を咲かせるか |
| 寒中寸暇の暖あり・・・・・ |
| 物言わぬ一本の木に 教えられている。 |
| 自分 |
| 今ある自分と こうありたいと思う自分とは |
| もうずいぶん長い間 せめぎあってきた。 |
| 未だ勝敗の決着はついていないが |
| どうやら 今の自分の方に分がありそうである。 |
| こうありたいと願う自分になるためには |
| 今の自分の大部分を捨てるか 変えないと叶わない。 |
| それは ちと骨が折れる。 |
| というわけで 加減のよいところで折り合いをつけながら |
| 今日まで生きている。 |
| しかし 悠々と流れる雲を見上げながら |
| これでいいのかと問い続けることだけは |
| 決して忘れないようにしたい。 |
| 人はみんな そうやって生きているのかな・・・・・ |
| 刀 |
| 加州行光・・・・・・手に入れた日本刀の銘である。室町時代の末期 |
| の刀で、加賀の刀工「行光」という人の作品だと聞いている。 |
| その昔、父がどこかのスクラップ屋で見つけてきた脇差が我が家 |
| にあった。確か銘があり、「長門国住○○」とあった記憶がある。 |
| もちろん登録などしていないので、銃刀法に完全に違反していたの |
| だが、その刀をもって近くの野原でチャンバラごっこ・・・・切るのはも |
| っぱら草であった。赤く錆付いていたが、手にずっしりと伝わる重量 |
| 感にすっかり参っていた。しかし、捕まったらいけないというので、父 |
| が処分してしまった。記憶のどこかに「いつか本物の刀を手に入れる |
| ぞ。」という思いが刻まれた。 |
| ようやく念願が叶って、本物の刀を手に入れることができた。座敷 |
| に座り、刀身をじっと見ていると不思議に気持ちが落ち着く。 |
| 500年近い年月を生き延びてきた刀である。誰かが腰に帯び、戦 |
| 場で抜かれたこともあるのかもしれない。雪深い加賀の里でこの刀 |
| を打った行光という刀工はどんな人だったのだろう・・・・・ |
| 「また、何を血迷ったの?気は確かなの?」という奥方の声は耳に |
| 届かない。チャンバラごっこに興じたあのころの夢をまた一つ、手に |
| いれたおじさんは、いたって満足なのである。 |
| 「なんでも鑑定団に出せる家宝ができたね。」という娘の言、主が |
| いなくなれば、すぐにでも売り払おうという魂胆か・・・・・? |
| 記憶 |
| 新米のほのかな甘味をかみしめながら |
| 昔食べた麦飯の味を懐かしく思い出し 食べてみたくなる。 |
| 家族の温かい団欒の談笑の中で |
| ふと一人で冷や飯を食べていた 遠い昔の夕暮れを思い出す。 |
| 信じあえる多くの人に囲まれながら |
| 自分は一人ぼっちだと傷心に沈んだ 遠い過去が甦る。 |
| 人は十分に満たされると |
| そうではなかった日々を不思議と思い出す。 |
| 足りなかったものが満たされていく過程には |
| その年月をともに歩んでくれた自分自身がいたことを |
| あらためて確かめようとしているからだ。 |
| どうやら それが年をとるということらしい。 |
| 渋柿 |
| 渋柿に教えられている。 |
| 赤く色づいてはいても その強い渋みのために |
| 鳥でさえ近寄ろうとはしない。 |
| 寒がしまり 動物や人が冬ごもりの準備を始めるころ |
| ようやく熟して絶妙の甘柿になる。 |
| さあ もういい頃だよとささやいているのか どうか |
| どこからともなく鳥たちがやってきて |
| その実を冬を迎える糧として頂戴する。 |
| 人の一生を柿に例えるなら |
| 年を重ねて そろそろ渋みも取れ 熟して甘柿になる頃・・・・ |
| そんなふうに都合よくは なかなか行かないので |
| おまえは大した奴だと あの渋柿を見ながらつぶやいている。 |
| テレビドラマ |
| そんな ドラマのような生き方などあるはずがないと |
| わかっていても |
| 多くの人が憧れる そんな生き方やそんな人がいる。 |
| 作り物しか見てこなかった人に |
| 本物と思わせる小さな輝きがちりばめられた |
| そんな生き方が・・・・・・ |
| たとえ作り物でも そこに自分なりの虚構が |
| つくれる余白を埋め込んでくれている話なら |
| 人は自分なりの感動をその余白に重ねながら |
| 主人公たちとともに生きることができる。 |
| 最近見たテレビドラマの中に |
| 私は「夢」をみることができた。 |
| 友へ |
| そうですか そんなに長い時間がかかったのですか |
| いや 粘り強い貴方のことだから |
| いつかきっとたどりつくとは思っていたのですが・・・・ |
| でもいいじゃないですか |
| だれにもできないことに一人で挑んで |
| だれの力も借りずにそこまでやれたのなら・・・・ |
| あきらめずに貫き通した一筋の意思に 素直に敬意を表します |
| 今度遭ったら ぜひ話を聞かせてください |
| 貴方の真似は到底できませんが |
| 夢に向かって歩き続ける情熱くらいなら |
| 私にも何とか手に入ると思います |
| 時間をかけ 回り道をした分だけ |
| 貴方の今いる場所が輝いて見えます |
| 切れ味 |
| 長い時間をかけて研ぎすましてきたものが |
| 年を重ねるごとに 少しずつ錆びていく寂しさがある。 |
| 切れ味の悪くなった自分の感性を |
| 年のせいにはしたくないから |
| 新しい砥石を探して 右往左往している毎日・・・・・・・ |
| 達人と呼ばれる人たちは |
| かつてかみそりの刃のような切れ味を誇った自分の感性が |
| 今は大木を断ち切るマサカリに変わりつつあることを |
| 知っている。 |
| 大切なのは刃の厚みだと言うことを |
| 立ち向かう相手の大きさに打ちのめされながら |
| 学んできたからだ。 |
| かみそりの刃では 小枝一本も切ることはできない。 |
| 七五三 |
| 孫娘が3歳ということで、七五三参りに宮崎まで車を走らせた。 |
| 日ごとに大きくなっていく孫娘が、着物を着て、きれいに髪を結い、薄 |
| 化粧をした姿は、おじいちゃんにはまぶしいばかりの輝きである。 |
| 神社は同じような子どもや親たちで大賑わい・・・・しかし、どう見て |
| も我が孫がやはり一番かわいい。 |
| 神主の神妙な祝詞を聞きながら、今こうしてこんな場所にいる幸せ |
| を与えてくれた娘夫婦に感謝。心づくしのお祝いの食卓を囲んで、し |
| ばし楽しいひと時を過ごすことができた。 |
| 10年後、20年後の成長した姿を想像しながら、あらためてこの世 |
| に生きてきた証しを残せたという実感をかみしめることができた。 |
| 全国で何万人もの幼子たちが、両親や祖父母の祝福の眼差しの |
| 中で目を輝かせ、満面の笑みを浮かべ、幸せな時間を迎えたことだ |
| ろう。願わくば、この幼子たちに幸多かれ!! |
| 何としても孫の結婚式までは長生きをする、と言うのがこの夏逝っ |
| た父の口癖だった。無事に孫の結婚と曾孫の誕生を見届けて旅立 |
| った。その言葉の意味が最近自分に重なっている。 |
| 備蓄 |
| これは性分なんだろうと思っている。使いたいときにそれがないと |
| いう事態がいやで、なくなる前に予備を仕入れておく・・・・・・・ |
| この傾向は生活用品のあらゆる分野に及ぶ。車だってスペアーの |
| タイヤを積んでいるではないか。必要なものは前もって準備しておく |
| のが鉄則だと家族にも前々から言い含めているのだが・・・・・・・ |
| 「ちょっと醤油がなくなったので、買ってきます。」と奥方がいそいそ |
| と近くのコンビニまで車を飛ばす。コンビニやスーパーが近くにある |
| からいいものの、そんなものがなければたちまち困ってしまう。 |
| 顧みるに、この性分は幼いころから自然に身に付いたものらしく、 |
| 次にいつ手に入るかわからない不安をぬぐうために、もう一つ余分 |
| に持ち合わせておく習性ができた。 |
| おかげでずいぶん助かったが、ただ一つ困ることがある。予備を |
| 持つと言うことはそれだけ荷物が増えるということ、この性分のおか |
| げで我が家にはすぐには使わないものがあふれている。 |
| 予備を持っている安心感と引き換えなので、仕方がないとあきらめ |
| ているが、いつかきっと役に立ち、家族から「さすがお父さん」と尊敬 |
| の眼差しで見られる日がくる・・・・そう信じてせっせと備蓄に努めてい |
| る。どうやら前世はリスであったという気がしている。 |
| 笑い |
| 最近腹の底から笑ったことですか? |
| 残念ながらありませんね。 |
| 何でもないようですが 笑うのも結構大変なんです。 |
| 時 場所 場合を考えない笑いは人を傷つけたり |
| 不愉快な思いを押し付けたりすることになりますから・・・・・・ |
| でも 思い切り笑えたらいいだろうなと思います。 |
| 疲れや嫌なことがいっぺんに吹き飛んでいくでしょう? |
| なかなかそんな笑える話題や場面に出くわさないから |
| 仕方がないので 普通の顔をして生きています。 |
| 苦笑いならよくするんですが あれは後ろ向きの笑いですね。 |
| 思い切り口をあけて 大声で笑ってみたいものです。 |
| 切り札 |
| 男にとって 社会的な地位や肩書きは |
| 自分の居場所を常に確認するための定点になる。 |
| 自分の能力や技術や自分の存在そのものが |
| 周囲の誰にも必要とされていない事実を見るのはつらいものだ。 |
| 仕事に力を注ぐという営みも |
| 潜在的には居場所があることを確かめるためのもの・・・・・・ |
| 仕事をやめて自由になったとたんに体調を崩して |
| おかしくなる人が多いのもその理由による。 |
| 誰にも必要とされなくてもいいと腹をくくるためにも |
| 必要だと思われているうちに |
| 自分らしい身の引き方を探しておくべきだろう。 |
| それが やがてやってくる有り余る時間を |
| 体力や気力を損なわずに乗り切る切り札となる。 |
| 決断 |
| 飛び込むことは決めていても 最後の決断に迷うとき |
| そっと背中を押してくれる人がほしくなる。 |
| 多くは語らず 餞は「がんばれよ」の一言でいい。 |
| そのやさしいまなざしと 背中に伝わる手の温もりがあれば |
| 新しい道への最初の一歩を踏み出す勇気が手に入る。 |
| 長い人生 |
| みんなそうやって誰かに背中を押してもらって生きてきたのだ。 |
| 後戻りはできない道だが |
| 振り返れば遠くで手を振る その人が見えないか。 |
| 構え |
| 大声で叫んでみても 小さな声でつぶやいても |
| 伝えたいことの本質は変わらない。 |
| ただ ほんの少し相手の構えが違うだけ・・・・ |
| 伝えたいことが重いものであればあるだけ |
| 小さな声で話せる人でありたい。 |
| 相手に不要な身構えをさせなくてすむように。 |
| 道具 |
| いやはや、驚きの機械である。「角のみ」というその道具を行きつけ |
| のホームセンターで見つけたとき、一目で私の心は決まった。「よし、 |
| これを買うぞ。」・・・・・・・しかし、どう考えても回転式のドリルで四角い |
| 穴をあけるという理屈が理解できない。見本として展示してあるその |
| 道具にはドリルの刃がついていない。店員さんを呼んでその仕掛けを |
| 尋ねた。店員さんがドリルの刃を持ってきてくれた。真中に回転式の |
| ドリルがあり、その周囲を正方形の鋭い刃が取り囲んでいる。 |
| 「なるほど、これで四角い穴が彫れるんだ。」と納得。早速買い求め |
| た。使ってみるとこれがまたすごい。あっという間に望みどおりの四角 |
| いほぞ穴がきれいに彫れる。今までのみとかなづちで四苦八苦してい |
| たのがウソのようである。日曜大工の腕前が数段上がったような錯覚 |
| に陥る。「これを考えた人はノーベル賞ものだな。」と一人感心してい |
| たが、調べてみるともう何十年も昔から存在する道具であった。 |
| 回転式のドリルで四角い穴を開けられないか・・・・と苦心した先人が |
| いたということ、必要は発明の母というが、まさにそのとおり。 |
| この道具を使って今は行灯(あんどん)製作に取り組んでいる。ただ |
| 奥方はこの大きな道具を見て「また何か変なものを買ってきたね。道 |
| 具に負けているんじゃない?」と厳しいお言葉。 |
| おっしゃる通りです。頑張って腕を磨きます。 |
| 童心回帰 |
| 「来年からいよいよ家を探しますよ。」・・・・・・・・行きつけの床屋の |
| ご主人が言う。私と同年代のこのご主人、夢は長崎県の生月島に移 |
| 住すること。数年前から2人の間ではここを離れて田舎暮らしをする |
| 作戦で話が盛り上がっている。「先生は山がいいと言うけど、私は海 |
| ですね。さすがに電気はないと大変だが、ガスはいりません。海岸に |
| いって流木を探して、薪にします。おかずは魚、それも食べたいだけ |
| 自分で釣ってきますよ。・・・・」夢を語り合っていると1時間はすぐにた |
| つ。若い人はどうなのかわからないが、おじさんたちにはスイッチ一つ |
| で簡単に童心に帰れる特技がある。この童心モードに入ると、なぜか |
| 「何もない」生活に憧れが強まる。便利な道具や機械の力を借りずに |
| 自分の腕と知恵で欲しいものを作り出していく生活に不思議な郷愁が |
| あるからだ。「なにもない」ことに不安はない。 |
| 幼いころに刷り込まれた生活実感は、何十年もたった今になっても |
| 色あせることはないと見える。 |
| 「田舎で暮らすには健康が一番、互いに体には気をつけましょう。」 |
| という挨拶で作戦会議は終了。ご主人、いい年をしたおじさん二人が |
| 子どもみたいにウキウキしながらこんな話をしているところを他の人が |
| みたら、きっと笑うんでしょうね。お互いにいい夢をみましょう。 |
| 大樹 |
| 原野の真中に立つ一本の大木のように |
| 生きていけたらいいな。 |
| 誰に気兼ねや遠慮もせず 伸ばしたいだけ枝を伸ばし |
| 鳥や虫や動物たちに自分が作った果実を存分に分け与え |
| 下を歩く者には涼しい木陰を用意して・・・・・・・ |
| 雷や大風がくれば 一人で受け止めなくてはならないが |
| しっかりと大地に張った根を信じてじっと耐える。 |
| そんな大木に憧れる自分が今いるのは 仲間をかき分けて |
| 少しでも上に伸びなければ日光がもらえない雑木林・・・・ |
| この中では大樹になることを夢見ながら枯れていく木が多い。 |
| 叶わない夢だとは知りながら |
| 原野に立つ大樹に憧れる。 |
| 温もり |
| 出口の見えない暗闇の中で |
| 目の前に差し出された手があれば |
| 素直に握ってその力を借りるものです。 |
| 誰の助けも借りたりしないと粋がってみても |
| 一人ではどうすることもできない闇の中にいるのなら・・・・・ |
| ほんの少し誰かの力を借りたからといって |
| それで自分の値打ちが下がることは決してありません。 |
| 差し出された手で少なくとも難局が打開され |
| 貴方の新しい一歩を生み出す力になるのなら |
| 恥ずかしがらずに 素直に 謙虚に |
| その温もりをいただきましょう。 |
| 謝意は貴方の踏み出す足取りで示せばいいのだと思います。 |
| 自戒 |
| 清流の水の冷たさを知るには |
| 手をつけてみるしかない。 |
| きれいなせせらぎに出会ったら |
| だれもがそうするではないか。 |
| 眺めているだけでは 水の冷たさはわからない。 |
| 平凡な時の流れの中にいると |
| 時折かすんでしまう夢や憧れを |
| もう一度引き寄せるには そうするしかない。 |
| 答え |
| 対象となる異性はたくさんいるのに |
| なぜその人だけに惹かれるのか・・・・・ |
| ほのかに芽生える恋心をだれもが経験するが |
| この問いの答えを進んで見つけようとはしない。 |
| 簡単には説明できないその答えは |
| 多くの場合 その気持ちに終止符を打つときに |
| 黙っていても現れてくる。 |
| 抑えきれない情熱にめぐり合えたら |
| 少し早めに考えてみるべきかもしれない。 |
| ギアダウン |
| 車に例えるなら、私たちの世代はギアチェンジをしないと走らないマ |
| ニュアル車であった。加速するにはクラッチを使ってギアを一段ずつ |
| 上げていき、減速するのもギアを下げていく必要がある車・・・・・・ |
| 家庭や家族を守るためにいつもトップギアで走り続けてきた。トップ |
| ギアからいきなり減速するのはちょっと難しい技を要する。だれもが |
| ギアダウンしたいと思いながら、なかなかできずに気が付けばいつも |
| トップギア・・・・・・・それが団塊の世代と呼ばれるおじさんたちの乗る |
| 車であったような気がする。 |
| それがいつの間にかオートマチック車に変わり、無理なくスピードの |
| 加減ができるようになっていた。走ることに関して言えば、不器用とも |
| 言えるマニュアル車はそれに合わせて姿を消しつつある。 |
| だが、忘れまい。不器用だと言われてもおじさんたちはその車に家 |
| 族を乗せてひたすらトップギアで走り続けてきたのだし、自分の生き方 |
| を変えるために踏むクラッチは、少なくとも自分の意志で踏んでいた。 |
| 威張るほどのことでもないが、人生のスピードを自分の手と足でコン |
| トロールすることができる車が、ほんの少し前までは普通に走ってい |
| た。スマートなオートマチック車に乗りながら、おじさんたちはあのクラ |
| ッチを踏む感触をなつかしく思い出している。 |
| JAF |
| 車を車庫に入れるため、エンジンをかけようとしたとき、「カチカチ」 |
| という音がすると同時に突然インジケーターランプ類が暗くなり、とうと |
| う消えてしまった。当然セルモーターも動かず、「えっ?ウソだろう?」 |
| 頭の中が一瞬真っ白に・・・・・・・・ |
| ついさっきまで機嫌よく動いていたのに、この突然の異変は何だ。 |
| 少し冷静になって考えてみると、どうやらバッテリーの不調らしい。修 |
| 理工場に電話すると、JAFを呼んでエンジンをかけてもらって車を持ち |
| こんでくれという。すぐにJAFに連絡を入れる。30分ほどで到着。 |
| 「やはりバッテリーですね。」と言いながらあちこちを見ていたが、「こ |
| こが緩んでいますよ。」と言う。よく見るとバッテリーの端子をしめるネ |
| ジがゆるんで手で簡単に動く。それをしめてみて再度エンジンスタート |
| ・・・・・・なんと一発で始動である。JAFのお兄さんが神様に見えた。 |
| JAFは12年来の会員である。修理費はいらないと言われ、丁重に |
| お礼を言って別れた。予期せぬトラブルは突然にやってくる。こんな日 |
| のために毎年会費を払っていたのだ。無駄ではなかったと思い知らさ |
| れた。JAFで働く皆さん、何でもない原因でも動かなくなった車の前で |
| は貴方たちが輝いて見えます。いやな顔一つせず対応していただい |
| てありがとう。感謝しています。 |
| ソーセージ |
| 「先生、たいへんです。」・・・・先日、1年生の女の子2人が目を輝か |
| せて職員室に飛び込んできた。 |
| 「ビオトープにへんなものがあります。」「へんなものって何?」と聞く |
| と、「ソーセージに棒がさしてあります。」・・・・・・・ |
| 学校のビオトープの担当をしているので、私に報告にきたのだろう。 |
| 一瞬何のことか理解できなかったが、やがて思い当たった。「ああ、そ |
| れはね、ガマの穂というんだよ。ソーセージみたいだけどあれが花な |
| んだ。あとでそっとさわってみてごらん。」と言うと、「花なの?へえっー |
| 、変な花。」納得した様子で2人は帰っていった。わずか2,3分の出 |
| 来事だったが、心の奥に熱いものがこみあげてきた。 |
| 大人なら誰もが知っているガマの穂をソーセージだと感じる心、そし |
| てそれが串刺しのように池の周りに生えている事実に驚く心・・・・・・ |
| 私たち大人がとっくの昔に置き忘れてきた、やわらかい感性をこの |
| 子たちはさも当然のように持ち合わせている。その事実に感動・・・・ |
| 幼い子どもたちの瞳に宿る純粋な感性を、ほんの少しおすそ分けし |
| てもらった気分になってうれしかった。 |
| ソーセージが串刺しになって、池の周りに立っている・・・・考えただ |
| けで痛快ではないか。 |
| 危惧 |
| 国立天文台が小学生を対象にした調査で、4割の子どもが「太陽が |
| 地球の周りを回っている」と答えたという。 |
| 折りしも学力低下が話題となっている時期でもあり、あちこちで波紋 |
| が広がっているようである。 |
| 確かに小学校の理科で教える内容なのだが、以前と違って太陽の |
| 動きをじっくり観察して地球や他の星との関係について学ぶ時間が |
| うんと減っている。学校に責任がないとは言えない。 |
| だが問題は「知らない」ということではないだろう。知識として教えれ |
| ばこんなことはすぐに身につくもの、それよりも子どもたちが宇宙を含 |
| めた自然に関心を持たなくなったことを懸念すべきであろう。 |
| 首をかしげ、「なぜだろう。」と考える機会を増やさない限り、もっと |
| 驚くような事態が今後も起こるかも知れない。 |
| 自然を知ることは、感動の源であり、生命への畏敬の念を育てる |
| 最も有効な方法だと思うのだが・・・・・・ |
| 問い | |||
| 自分はいったい何者であるかという問いに | |||
| 答えを見出せないまま 今日まで何とか生きている。 | |||
| 見つけたいとは思うが 結局見つからないのかもしれない。 | |||
| まあ いいか 今さら仕方がない。 | |||
| 竹が節を作って伸びていくように | |||
| その時々の締めくくりをちゃんとしてこなかったのだから・・・・ | |||
|
|||
| それも間違いなく自分の一部であり | |||
| 答えを見つける資料ぐらいにはなるだろう。 |
| 荷物 |
| 自分の背負っている荷物の重さは |
| それを肩から下ろしたときにわかる。 |
| ほっと一息ついてその荷物をみると |
| 我ながらよくこんなものを担いで歩いていたなと |
| 少々照れながら思う。 |
| 歩き続けることが人生と言うなら |
| 肩に食い込む荷物は軽いほうがいい。 |
| 簡単には捨てられないとわかっているものでも |
| 思い切って捨てていかないと足取りが重くなる。 |
| 粋がってみてもすべてを背負い込む余力は |
| 残っていないと自分に言い聞かせながら |
| さて 何から捨てようかと思案する日々である。 |
| 思い出 |
| 心に残る思い出は多いほうがいい |
| 鮮明に刻まれた過去の記憶が |
| 進むべき道を見失いかけたときに ふと甦り |
| 行く手に小さな灯を示してくれることがある |
| しかし |
| 一つだけはっきりしているのは |
| 明日を切り拓く勇気と力は |
| 後ろを向いていては手に入らないということ・・・・・・ |
| 行くべき道が見えたなら |
| もう一度前を向いて歩き出す |
| 幸せ |
| 小さな幸せがひとつあれば |
| 今日という日を生きることができる |
| 小さな幸せがふたつあれば |
| 今日という日を |
| かけがえのない日として記憶することができる |
| それ以上は望むまい |
| 両手に持ちきれない幸せにめぐり合っても |
| 味わいきれないと荷物になる |
| 時には幸せであることをも 忘れてしまうから・・・・ |
| 夢 |
| 心の奥にポツンと生まれた 熱い魂のうごめきを |
| ありったけの理性で理解しようと試みても |
| ほとんどの場合 徒労に終わります。 |
| なぜ今 こんな気持ちになるのか・・・ 原因不明の熱病のように |
| 日ごとに膨らんでいく その力の大きさにうろたえるだけです。 |
| ほんの少し前までは夢、憧れだったのに |
| やがて そんな言葉では説明できない力となって |
| 臆病な私を突き動かしています。 |
| 理屈で理解しようとしないで |
| しみじみと味わってみるものなのかもしれません。 |
| 畏敬 |
| 台風16号九州直撃・・・・・・驚きました。雨や風のすさまじさ、大木 |
| を揺らし、草花をなぎ倒し、逆らうものは容赦しないとばかりの咆哮。 |
| 日ごろは感じることの少ない自然のエネルギーを、肌身で感じるこ |
| とができました。天気予報などなかった古代の先祖たちがこの雄叫び |
| に遭遇すれば、きっと人知の及ばない崇高な「神」をみたことでしょう。 |
| どんな科学の力を持ってしても、このすさまじいエネルギーに太刀打 |
| ちすることは適いません。その正体は低気圧のかたまりだとわかって |
| はいても、ただ黙って通り過ぎるのを待つしかない、本当に小さな存 |
| 在なのだと思い知らされます。大自然を前にすれば嵐の遠ざかりをい |
| ち早く察して鳴き始めた虫たちと同列のところにいる、という事実を |
| 謙虚にかみしめています。 |
| あるがまま |
| 多くの人に好かれようと努力した時期がある。 |
| 誰からも好かれるということが |
| 天性の資質として備わっているわけでもないのに |
| 自分だけは特別だと思い込もうとした。 |
| やがてその努力は徒労であるとわかってきた。 |
| いくら努力しても波長の合わない人間は 必ずいるし、 |
| そんな人間に自分を合わせることがひどく疲れることだと |
| 気が付いたからだ。 |
| だれからもよく思われたいという願望は執念深く生き残っているが |
| 無理はしないと決めて |
| あるがまま こんな私ですと飾らずに見せられたらいい。 |
| そう思うことにしている。 |
| ある母親との話・・・・「子どもと言えども、世の中には醜いこともある |
| ということを見せなくてはなりませんね。」「いえ、私は子どもには思い |
| きり美しいものを見て大きくなってほしいと思います。醜いものは黙っ |
| ていてもそのうち向こうからやってきますから・・・・」 |
| 返す言葉がなかった。大人が作り上げた社会の汚れを敢えて子ど |
| もには今は見せないと言い切るお母さんの強さ、是非は別にしてその |
| 潔さに感服したのは、今から20年も前のことであった。 |
| その子も今では2児の母親、おばあちゃんになったあのお母さんも |
| きっと孫たちにまだ夢を語りつづけているのだろう。 |
| 美しいものを美しいと感じる心は、子どものころに育つものだと信じ |
| てみるのもいい。 |
| 証し |
| 最近だれかと心ゆくまで話し合ったことはありますか。 |
| 互いに垣根を取り払い、思いのたけをぶつけ合ったことが・・・・・ |
| 年を重ねるとともに そんな友が少なくなっていきます。 |
| 自分だけが背負わなくてはならない荷物が 若いころより増えたからでしょう。 |
| 互いの重荷の中身まで詮索するのは気が重いので |
| ついそっとしておこうと思ってしまうのです。 |
| 寡黙もまた 年を重ねて生きてきたという証しになるのかも知れません。 |
| 利害 |
| 利害が絡むと、それまで平穏に手をつないでいた者同士が互いに相手を全 |
| 力で排除しようとし始める。多くの場合、その利を独占しようと考えるか、ある |
| いは火の粉がわが身に降りかかるのを避けようとするからだ。 |
| いずれにしてもそんな時に相手の人物の本当の姿を知ることになる。 |
| 信ずるに足る人物かどうかの判断は、確固たる信念がないのなら互いの利 |
| 害がぶつかったときが来るまで待ったほうがいいのかもしれない。 |
| 愚痴 |
| 愚痴をこぼしてみても始まらない、と思うことは多いが、それでもこぼしたく |
| なることがある。自分の思い通りにことが運ばないと、不平や不満が募り、つ |
| い誰かのせいにしたくなる心理が働くからだ。 |
| 心理学的には、愚痴とはそうやって精神の安定を図る、一種の安全弁の働 |
| きをしているらしいのだが、問題は誰かに聞いてもらわないと効果がないとい |
| うこと・・・・・・・聞いてくれる人が身近にいればよいが、いないと不満は自分の |
| 中に蓄積されていく。許容範囲を越える前に吐き出さないとえらいことになる。 |
| わかってはいるが、なかなかそうはいかない現実に、ふくれるばかりの腹を |
| なでながらため息をついているお父さんたちも多いことだろう。 |
| 軽く受け流されても、とりあえず聞いてくれる人がいるということは案外幸せ |
| なことなのかもしれない。 |
| ここだけの話 |
| ここだけの話だと言われて聞かされる話には、何かかすかな違和感がある。 |
| そんな話を聞いてもいいのだろうか、何となく「共犯者」になった気分に襲われ |
| るからだ。この人はなぜそんな大事な話をこんな場でするのだろう、なぜ今に |
| なって口外しようとしているのか・・・・・・・・・ここだけと言うからには他言するな |
| という押し付けも感じる。 |
| 秘密が暴かれるスリルはあるが、できればそんな話は聞きたくない。 |
| 言いたいことがあるなら、どうしてその時に言わなかったのかを合わせて説 |
| 明する人は少ない。 |
| 価値観 |
| 人の行いのほとんどは「善悪」という価値観で計ることができる。 |
| 白黒がはっきりしているので 異論をはさむ余地がない。 |
| だが 善悪だけでは計れない行いがあるのも事実だ。 |
| その行いを判断するためには もう一つの検証軸が必要になる。 |
| それは「美醜」・・・・・・・・ |
| 善い行いだが醜い、悪いのだが美しい、という背反した価値観で見ると |
| 不思議に納得できる場面が結構あるものだ。 |
| 豊かに生きたいのなら |
| 美醜という価値観を自分の辞書に書き込むことだ。 |
| それはないでしょう |
| 長野県安曇村白骨温泉と言えば、その名を知られた秘湯、まだ行ったこと |
| はないが、ぜひ一度は行ってみたいと思っている温泉だ。 |
| 白濁したお湯が有名だが、泉質の変化で濁らなくなったお湯に入浴剤を入 |
| れていたという報道、7年間も客を謀り続けたとは・・・・・・・・・・・・ |
| 白濁したお湯が売り物の温泉だけに、気持ちはわかるが、それはやっては |
| いけないことだった。白濁しなくなったのなら、正直にそのことを表示すべきで |
| 客は自然のあるがままの姿をそのお湯から学べる場になっていただろう。 |
| 作り物に囲まれた日常生活から脱出して、本物の自然に溶け込みたいと願 |
| う人々の気持ちをもっと大切にしてほしい。つくりものはもう十分なのです。 |
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