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| 覚悟 |
| ここまでは比較的楽だったが |
| ここからが正念場だという地点に立つことがある。 |
| そこに立ったとき 考えなければならないことはただ一つ |
| たとえ何が起ころうと すべては己の才覚で乗り切り |
| 責任を決して他に転嫁しないということ・・・・・・ |
| 思い通りにいかなくても 愚痴をこぼすことだけはすまい。 |
| 自分で決断し 実行しているはずなのに |
| うまくいかない結果を他人のせいにしている話を聞くのは見苦しい。 |
| 覚悟を決めるとは |
| 孤独で静かな 己との闘いである。 |
| 拳 |
| 広げてみると 5本の指は向きも長さも不ぞろい |
| だが 固く握ると |
| 長さのちがう4本の指先はまっすぐ一直線に並ぶ。 |
| それまでは ひとり他を向いていた親指は |
| その4本の上にしっかりと 包み込むように乗る。 |
| もっとも力のみなぎる姿には |
| 個性が調和し 融合した美しさがある。 |
| 我にふりかかる不条理な敵に向かうとき |
| 人はそうして固めた拳を 空高く突き上げる。 |
| 疾風知勁草 |
| 濁流に洗われた草花も 満身創痍の中から |
| 人知れず やがて新しい芽をふく。 |
| 強風に葉を飛ばされ 枝を折られた木々も |
| やがて新しい葉や枝を身につけ 立ち直る。 |
| 理不尽な災難や突然の不幸に打ちのめされたとしても |
| やがて 確かな足取りで立ち上がる人がいる。 |
| 試練に耐え 厳しく 激しいものに晒されて |
| なお生き残ったものに贈られる賛辞は |
| 遠慮せずに素直に受け取るがいい。 |
| 耐え抜いたその意思は本物だったという証だから・・・・・・・ |
| 疾風知勁草 |
| 疾風(しっぷう)に勁草(けいそう)を知る |
| 嵐が過ぎ去ったあとで 本当に強い草がわかる・・・・・・ |
| 曲線 |
| 人が疲れたときに花や木、自然の風景を見たくなるのは |
| きっと直線に囲まれた生活に疲れてしまったからだろう。 |
| 直線と曲線・・・・・・・ |
| 自然の中には直線で構成されるものはない。 |
| 花びらや木の葉、雨粒、石ころ・・・どれをとっても |
| 実に多様な曲線でできている。 |
| 人間の作り上げた文明は それに反して |
| 直線を組み合わせて作り上げられたもの・・・・ |
| 本来心地よいはずの曲線を排除することに全力を注いだ結果だ。 |
| いくら適応能力があるとはいっても |
| 一分の無駄や隙のない空間の中にばかりいると |
| 疲れるのはあたりまえのこと。 |
| 曲線が生み出す無駄や隙間の中に包まれたいという気持ちになったら |
| 気力や体力とはちがうところで |
| 今 自分は疲れているんだと思うことにしている。 |
| 祈り |
| 元気でやっていますかと 便りをくれる人がいますか。 |
| 電話でも 手紙でも メールでもいいじゃありませんか。 |
| そんな人がいる幸せを忘れないようにしたいものですね。 |
| 一日の終わりに |
| 「今日はいい一日だった・・・」と思えたら |
| それはきっと あなたのことを遠くで想ってくれた誰かが |
| ささやかな贈り物として届けてくれた幸せだったのかもしれません。 |
| そんなことって 確かにあるのだと思います。 |
| あなたにとって 今日がいい一日でありますように・・・・・・ |
| 緑 |
| 色彩心理学というものがある。 |
| それぞれの色には固有の特徴があって |
| 人間にある一定の心理的効果をもたらすとのこと・・・・ |
| 森や林、草原に立つと心地よいのは |
| 「緑色」の持つ効果らしい。 |
| そういえば 部屋の壁の色に薄い緑は使っても |
| あの森で見る深い緑を使う人は少ない。 |
| 癒されるとわかっていても 使わないのは |
| 本物の緑の効果には 所詮偽物は敵わないと思うから。 |
| 緑が無条件に人間を癒してくれるのは きっと |
| 人類の歴史の中で 長い間森や林のなかで暮らした祖先たちのDNAが |
| 私たちに受け継がれているからにちがいない。 |
| おまけ |
| ときどき思うのですが |
| 年を重ねてくると なぜか一つのことへのこだわりが増してくるようです。 |
| 次々に目の前を通り過ぎていく出来事の大半は忘れても |
| それだけは どうしても疎かにできないという、一つのことが・・・・ |
| 中身はとっくの昔に賞味済みで |
| 往時をしのばせる、空になった箱だけを眺めているのですが |
| かつてその中に詰まっていた珠玉の輝きを |
| 何度も思い出しながら 箱を捨て切れずにいます。 |
| 性懲りもなく馬鹿なことをやっているなと |
| 一人苦笑いをすることも |
| まあ この年になればおまけのようなものですが・・・・・・ |
| 憧れ |
| そんなものはいくら望んでも手には入らない・・・・ |
| そう思って心の奥にしまいこんでいたささやかな憧れが |
| 時折 光を求めて顔を出す。 |
| 制御の効かない 突然の我が身の造反にうろたえてしまうが |
| 考えてみれば それも自然のなりゆきなのだろう。 |
| 憧れは 時間と共に心の空虚を栄養として成長していくもの |
| 言ってみれば 自分で育てているようなものなのだから・・・・・ |
| 顔を出した憧れを もう一度心の奥にしまいこみながら |
| 「すまんな。」と声をかけてみる。 |
| おそらく もう二度と陽の目をみることはないかも知れない密かな憧れに |
| なぜか愛着を覚える。 |
| 証し |
| この世に生を受けて 何十年という年月の中で |
| 誰かのために 何かを残すという意識はなくても |
| 人は「わたし」が「わたし」であったという証しを残してきているもの・・・・ |
| 積み上げてきた日々の暮らしの中に |
| 出会いと別れを繰り返した忘れ得ぬ知人や友人たちの中に |
| それは人知れず埋もれているはずなのだが・・・・・ |
| そう考えれば 過ぎ去った昔を懐かしむという心の動きも |
| 証しを探す営みの一つなのかもしれない。 |
| 「わたし」が残してきたものは いったい何だったのだろう・・・ |
| 若いころは欲しいとさえ思わなかった その証しが |
| 最近 妙に欲しくなっている自分がいる。 |
| 路 |
| 振り返れば どこまでも続くあの一本道を歩いてきたのですね。 |
| 日差しをさえぎる木陰や 路傍の名もない草花に励まされ |
| どうにかここまで来ました。 |
| 途中で出会った多くの人たちは みんな笑顔で挨拶を交わし |
| 手を振りながら別れていきました。 |
| にぎやかだった街中の通りももうはるか遠くになってしまいました。 |
| 歩き続けることが生きるということなら |
| この先何が待っていても 止まることはできません。 |
| この路をゆくほかない 草の深くも(山火頭)・・・・・ |
| そうですね。 |
| 元気を出して もう少し先までいってみましょうか。 |
| 針と布 |
| 尖った針は布を突き破ることができる。 |
| しかし それで物を包むことはできない。 |
| 研ぎ澄まされた鋭さの最大の弱点は |
| 一方向にしか役に立たないということ・・・・・・ |
| かつて ひたすら鋭さを求めて研ぎあげてきた自分の針が |
| 実は直線的な力しか持っていなかったのだと |
| 最近 思い知らされている。 |
| 布が1枚あれば それをまとい 寒さを防げるが |
| 針はたとえ何本身に付けても 身を守ることはできない。 |
| 己の持つ針のような鋭さを自慢する人もいれば |
| 鋭さとは無縁のところで多くの人を包み込む布のような人もいる。 |
| 一方向にしか役に立たないものは |
| 自慢して持つものではない。 |
| 一期一会 |
| 「はじめまして」はやがて来る「さようなら」を暗示する。 |
| 出会いの幸せが永遠に続いて欲しいと願うのは当然だが、 |
| 世の中 そううまくはいかないものらしい。 |
| 古の一期一会(いちごいちえ)とは |
| やがて来る別れを見据えた上で |
| 出会いの今を至福のときと心得よ・・・という教え。 |
| なんだかよくわからないが |
| 胸にツンと来る言葉である。 |
| 寂寥 |
| ひとりぼっちになることは 無論寂しい。 |
| しかし それよりも もっと寂しくなるのは |
| 自分と心の通わない たくさんの人に囲まれているとき・・・・ |
| たった一人でもいい 心の通い合う人がどこかにいれば |
| たとえ今 目の前にいなくても |
| その人を想うことで 寂しさは呑み込める。 |
| 自分を取り巻く人間の数を増やしても |
| 寂寥感を埋めることはできない。 |
| 代償 |
| 今 本当にやりたいことをやろうと思えば |
| その代償に これまで大事にしてきた多くのことやものを |
| 犠牲にしなくてはならない。 |
| それほどに 「夢」は現実の生活とかけ離れてしまっている。 |
| こんなはずではなかったが 今となってはしかたがない。 |
| さて どうするか・・・・・・・ |
| 「夢」と「現実」を天秤にかけるなどという 姑息な計算は |
| もう真っ平ごめんだ。 |
| その「夢」に 残りの人生のすべてを賭けてもいいと思えるのなら |
| 躊躇せず 突き進むべきなのだろう。 |
| 若いころなら 決してできなかった決断を |
| この年になって 迫られている。 |
| 残された時間は 思ったより少ないのだから・・・・・・ |
| 夏休み |
| 一つずつ終わっていく日々の出来事が |
| 何だか妙にいとおしい。 |
| 今日のこの出来事はもう二度と目の前に現れることがないかもしれない・・・・ |
| そんな予感が心のどこかに小波のように生まれている。 |
| 別に寂しいというわけでもない。 |
| 感傷に胸をかきむしられるわけでもない。 |
| ああ こうやって今自分は年をとっているんだという静かな実感だけが |
| 流れていく時間の中で立ち止まる。 |
| 子どものころとは違うものがいっぱい詰まった夏休み・・・・・ |
| ほんのしばらくだったが |
| 自分を見つめる時間をもらったこの夏の夏休みであった。 |
| 夏 |
| 湧き起こる入道雲を見ていると |
| 幼い日の夏を思い出すのは誰しも同じこと。 |
| あの雲を見ながら 無邪気に遊んだ遠い日の記憶は |
| いくつになっても不思議に消えることはない。 |
| 紫外線がどうとか 熱中症がどうだとか |
| まるで無縁の時代・・・・・ |
| 一夏に背中の皮が2回はむけていた。 |
| 蝉時雨が騒音だと感じる人がいるのだとか・・・・・・ |
| いい年になっても 唯一童心に戻れる季節だというのに |
| 何か大切なものを置き忘れてきてしまっている。 |
| 勇気 |
| みんなが空を見上げているときに |
| 一人地面を見つづける勇気がありますか。 |
| 不安 |
| 穏やかな時が流れていると 何だか少し不安になることがある。 |
| そのうちきっと大波がくる・・・・そんな予感に襲われながら |
| こんな安穏がいつまでも続くはずがないのだが、という気がしてくる。 |
| 若いころなら そんな思いに落ち着かないこともあったが |
| この年になれば 来るものは来る じたばたしてもしかたがないと |
| どこかで開き直っている自分を感じる。 |
| それはきっと 横着になったのではなく |
| 少々の波ならどうよければいいかを 何度も塩水を呑みながら |
| 学んできたから・・・・・・・ |
| できることならもう塩水は呑みたくないが |
| 侮ることのできない 経験の重みを |
| 素直に評価できる年になったのだと思うことにしよう。 |
| 手中 |
| 失われたものが再び我が手に戻ることはない。 |
| 失おうとしているものなら まだ我が手の中にある。 |
| 手放すか 抱きしめるか・・・・・・ |
| 迷いはそれの値打ちを吟味する試薬のようなもの。 |
| 後悔という苦い結果を味わいたくないなら |
| 存分に迷い 存分に確かめること。 |
| たとえ輝きが失せ 埃をかぶっているとしても |
| 今はまだ手中にあるものを 忘れまい。 |
| 運 |
| これでもかと襲ってくる災難に |
| 我が身の不運を嘆きたくなるときがある。 |
| 思いがけない慶事の連続に |
| 我が身の幸運を感じるときもある。 |
| その本質は「確率」だとわかっていても |
| 人は幸運や不運という言葉で 人生を納得したいと思うことがある。 |
| 悪いことではない。 |
| 運がいいとか悪いとかが気になっているのは |
| 少なくとも生きることに挑み続けている証しだから・・・・・・ |
| おみくじや今日の占いに一喜一憂している人の顔には |
| 明日を信じる前向きの意思が見える。 |
| 真理 |
| そんなものが入り込む余地などないと思い込んでいたら |
| ある日 突然前触れもなく心の奥のほうで小さな灯がともる。 |
| 信じられない速さで増殖し、 |
| 気がつけばすっかり虜になっている。 |
| 人の心が動き 熱せられる方程式はたいていこの順で成り立つ。 |
| 対象が物や事であれば それを感動と呼び、 |
| 人であれば恋心と言う。 |
| 教科書には決して書かれていないこの方程式は |
| 鉛筆をもって何時間机に向かっても解けないが |
| たった一度経験すればみごとに理解できる。 |
| 恐るべき真理である。 |
| 涙 その1 |
| 人は言葉で表せない気持ちを涙で表すことがありますね。 |
| どうして と聞かれても わけなどすっきり話せるものではありません。 |
| こみ上げてくる あふれる想い・・・・・ |
| 心の容器に入りきれない想いが自然とこぼれていくだけです。 |
| あえて理屈をつけるなら |
| 長い間 人知れず大切にしてきたものと |
| 目の前の出来事が 不思議と重なって響き合い |
| 抑えきれない 熱い血潮のように体の奥から噴出してくるからでしょうか。 |
| 悲しいときなら誰だって涙を流せるのですが |
| うれしい時 切ない時に涙が流れる人でありたいと思います。 |
| どんな詩人や作家でも こみ上げてくるあの想いを |
| 書き表すことはできません。 |
| 涙のわけは 自分だけが知っていればいいのです。 |
| 涙 その2 |
| わけもなく目頭が熱くなって |
| いま私は一体何に心を揺さぶられているのか、 |
| どうしてこんなにも柔らかくなってしまうのか・・・・・ |
| そんな追求も忘れてしまうほどに 心が潤んでくることがある。 |
| 思わず叫びだしたくなる衝動をやっとのことで抑えて |
| 我を忘れたひとときを愛しくかみしめる・・・・・・・ |
| いくつになってもそんな瞬間が確かにある。 |
| 神様は 年を重ねても魂を柔らかくする術だけは |
| 取り上げずに残しておいてくれたようだ。 |
| 涙が流れる・・・・・それはきっと |
| 人生の中で 自分も気づかないまま大切にしてきたものに |
| 思わずめぐり合えた証しなのだろう。 |
| そうか、私はこんな気持ちを大事にしながら生きていたんだ、と |
| 気がつくのもそんな時だ。 |
| 思い出 |
| 思い出は多いほうがいいが |
| 思い出すことは 少ないほうがいい。 |
| その一つひとつを反芻しながら |
| 味わい 噛みしめるためには |
| それなりの時間が必要だから・・・・・・・ |
| 思い出したくないことと |
| 思い出せないことの狭間に |
| 私の数十年の人生が埋もれている。 |
| 夢 |
| たどり着きたい、手に入れたいと |
| 夢見ている間がいい。 |
| 実現したら夢はぬけがらになってしまうから・・・・・ |
| そこへたどり着く道のりを楽しむ夢もある。 |
| 土 |
| 私たちが踏みしめている大地の土は |
| 空間の所有権は自分にあっても |
| むろん私だけのものではない。 |
| あなたやあなたの子供たちが花を植え、走り回る土でもある。 |
| 50年、100年先の子供たちが家路を急ぐ道になっている土かも知れない。 |
| 岩が砕け 小石から砂になり、やがて土になっていったように |
| 私もあなたもやがて地表の土になる身なのだから |
| 足元にあるわずか一握りの土であっても |
| それを共有し、生きてきた多くの人間がいたことを忘れまい。 |
| 土から離れた暮らしを長くやっていると |
| かつて私たちの先祖がみんな持っていた 土と会話をする術を |
| きれいに忘れていく。 |
| 条件 |
| 私とあなたが今立っている地表には |
| そこに立つことが許される条件がある。 |
| どんなに広大な地表でも |
| 占有が許されるのは自分の足の裏の面積だけだということ・・・・・ |
| 忘れないでおこう。 |
| 最適 |
| 仕方なく選んだものでも |
| 長い年月慣れ親しめば その時の重みが |
| いつの間にか 最適なものに変えてくれる。 |
| 身の回りをみてみるといい。 |
| そう思えるものがたくさんあるはず・・・・・・ |
| かつては あれほどいやだったことが |
| 今はちゃんと自分の中で あるべきところに収まっている。 |
| 初めから最適なものを手にする必要はない。 |
| 彼岸花 |
| 彼岸花が満開である。 |
| 1枚の葉っぱも持たず ただ花1輪・・・・・ |
| 手折る者を躊躇させる、その凛とした立ち姿には |
| 安易に妥協はしないぞという、意思が見える。 |
| 人の手が入った場所にしか花を咲かせない気位の高さ |
| 根には花と似つかわしくない毒を有し |
| 秋を先駆ける この花に惹かれる。 |
| 人目 |
| 人の目が気になる・・・というのは |
| 日本人としてごくあたりまえの感覚である。 |
| だが 自分の考えや生き方を大事にし 自分らしさを主張することを |
| 価値あることだと思うなら |
| 少なくとも人目を気にして生きたくはない。 |
| 長いものには巻かれろ・・・・ |
| 出る釘は打たれる・・・・ |
| 寄らば大樹の陰・・・・・・ |
| そんな言葉を一つひとつ打ち破る勇気は |
| 少しでも早いうちから我が身に培うべきだ。 |
| 尋常な勇気では歯が立たない相手であるがゆえに |
| だれにも迷惑をかけない範囲で 人目を気にしながらでも |
| ひそかに勇気を育む練習をしておこう。 |
| 負け |
| いくら逆らっても勝てる相手ではないとわかったら |
| 潔く降参して頭を下げる・・・・・・ |
| かつては それでも一矢を報いんと抗ったこともあるが |
| 所詮無駄な努力であったと 今ならわかる。 |
| 自分の能力や持てる力を過大評価する傾向は |
| 若さの特徴であり、決して悪いことではない。 |
| だが |
| 負けはどう言い訳をしても負け、 |
| 負けて地べたに這いつくばることも 人生の一部だと |
| この年になって 何となくわかりかけてきた。 |
| 負ければすべてが終わりだと思い込んでいたあのころと |
| 決定的に違うのは |
| なあに、また立ち上がって 服についた泥を払い |
| 歩き出せばすむことだ と強がりではなく思えるようになったこと・・・・・ |
| 影 |
| 最近始めた趣味の油絵・・・・・ |
| 立体を平面に写し取る技法の奥義は |
| 影をどう描くかにあると気づいた。 |
| 明るくみえる部分は、実は影の力で際立っている。 |
| 輝いているものが大きければ |
| それだけ影の部分も強く大きい。 |
| 日が当たらないからできる影が |
| 陽光の輝きをささえている。 |
| 甘え |
| 誰かに甘えたくなるということは |
| 自分の弱さを隠さずにそっと両手に載せて |
| 「これがほんとうの私です。」と相手に差し出すということ・・・ |
| 弱音を吐かないで生きていこうと決めたつもりでも |
| 誰しもふと そんな気持ちになることがある。 |
| 自分の弱さを共有し 受け止めてくれそうな人がもしもいるのなら |
| 思い切って差し出してみるのもいい。 |
| ほんの少し弱音を吐いたからといって |
| 自分らしさがなくなるわけではないのだから・・・・・・ |
| その人のおかげで肩の荷物が少しでも軽くなったら |
| またいつもの足取りで 明日からしっかりと歩き始めればいい。 |
| 別れ |
| 二度と会うこともないだろう、と思える人と別れるときなら |
| 大きな声で「じゃ、また会おう。」と握手などしながら言うのがいい。 |
| 本当にまた会いたい人と別れるときは |
| 小さな声で「じゃ、また・・・・・」がいい。 |
| 「また会いましょう。」と言って別れた人を思い出してみるといい。 |
| 輪郭 |
| 足跡をつけずに歩くことができないように |
| 思い出を残さずに人とつき合うことはできない。 |
| それが心地よいものか、どうかで |
| 出会った人の輪郭線の太さが決まる。 |
| 太ければ太いほど |
| 指でなぞるときに正確になる。 |
| 支え |
| そんなに落ち込むことはありません。 |
| 支えにしていたものが外れただけだと思いましょう。 |
| また新しい支え棒を探せばすむ事です。 |
| よろけたり つんのめったり |
| 不安定な姿勢はしばらく続くでしょうが、 |
| あなたの足は確かに地面を捉えています。 |
| その足があるかぎり 倒れて立ち上がれなくなることはありません。 |
| 頼りにしていた支え棒が外れれば |
| だれだって よろめくものです。 |
| よくあることです。 |
| 夢 |
| これから夢を探す人・・・・・ |
| これから夢に向かって歩き出そうとする人・・・・・ |
| これから手に入れた夢を味わおうとする人・・・・ |
| 夢という言葉とは無縁の明日を迎えようとする人・・・・・ |
| あなたはどんな人ですか。 |
| 記憶 |
| 一人でぼんやりしていると ふと |
| 遠い昔に遊んだ近所の草原や |
| 見慣れた小学校の通学路が浮かんでくる。 |
| その頃もきっと悩みもあったはずなのに |
| なぜか思い出されるのは楽しく過ごした時間だけ・・・・・・ |
| それはきっと 神様が |
| 子どもが生きていくのに必要のない思い出は |
| さりげなく消してくれたからだろう。 |
| 記憶しておくべき思い出は |
| しっかり自分の胸の中に埋め込まれ |
| これまでの私の人生のあちこちで折にふれて |
| 確かに私を支えてくれた・・・・ |
| 今を生きる子どもたちにも どうか幸せな思い出が |
| いっぱい いっぱいありますように・・・・・・・ |
| 勇気 |
| 自分は肝の小さい 臆病な人間だと思う。 |
| 自分なら到底耐えられないだろうと思える局面を |
| 平然と乗り切ろうとしている人を見ると |
| うらやましさを通り越して 尊敬したくなる。 |
| だが あるとき そんな彼がもらした一言を聞いた。 |
| 「私だって逃げ出せるものならそうしたかった・・・・」 |
| 人間だれだって 逃げ出せないところに追い込まれたら |
| ありったけの勇気を振り絞ることができるのだと知った。 |
| 小心で臆病であることを恥じるまい。 |
| 大事なことは いざというときに搾り出せる勇気を |
| 私も心のどこかに持っているのだと信じること・・・・・・・ |
| 難局の中に放り込まれたら |
| そう思うことにしている。 |
| 面影 |
| 大切な人の面影が浮かんできたら |
| そのときはその人も私のことを偲んでくれている・・・・・・ |
| 二人の想いの波動が重なり合って 千里の彼方でも届くのだと |
| 昔何かの本で読んだことがあります。 |
| 科学的にはまったくの荒唐無稽な話でしょうが |
| そんな話でも信じたくなるときがあるのが人間です。 |
| 大切な人だったのだと 日が経つにつれて心の奥のほうで |
| 蠢く衝動が抑えられない・・・・・・ |
| 人が本当に寂しくなるのは そんな時でしょう。 |
| 取り返しのきかない時間の向こうに今も輝いて立っている・・・・・ |
| そんな人はいませんか。 |
| 賞賛 |
| おめでとう よく頑張ったね・・・・・・・ |
| 今までに何度その言葉をかけてもらっただろう。 |
| 長い人生 こんな言葉一つで大抵の苦難は乗り切れるもの・・・・ |
| おめでとうって言われた数だけ |
| 人は豊かになれる。 |
| 人知れぬ努力への評価は さりげないこの一言でいい。 |
| 焦点 |
| 何を見ようとしているのか それをはっきりさせておこう。 |
| 視野に入るものはだまっていても見えるのだが |
| 自分の本当に見たいものは その中のどこにあるのか・・・・ |
| 雑多なものを見すぎると 焦点の合わせ方がむずかしくなる。 |
| 見るものは 欲張らずに一つにしておくほうがいい。 |
| 笑い |
| 笑えるときに うんと笑っておこう。 |
| 腹の底を洗いざらい引っ張り出してでも しっかり笑っておこう。 |
| やがて笑いの時が終わったら |
| 次に来るのは恐るべき手ごわい敵かもしれない。 |
| 出口の見えない 深い悲しみかもしれない。 |
| それらに立ち向かう決意を固めるときに |
| 笑いが蓄えてくれた前向きの生きる力が必ず必要になる。 |
| 大抵の人はそれを武器にして |
| もはやこれまでと思えるような手ごわい難局でも |
| 逃げずにきちんと向き合って生きてきたのだ。 |
| だから 笑えるときには うんと笑っておこう。 |
| いい話 |
| この時期 森や林の中では |
| 落ち葉の上にたくさんのどんぐりが落ちていて |
| 野ねずみたちがせっせとそれを巣に運んでいるそうです。 |
| やがて来る厳しい冬を乗り切るために |
| 出来る限りのものを蓄えるという知恵は |
| 一体だれに教わったのでしょうね。 |
| クヌギやミズナラの木たちは |
| そんな彼らに惜しみなく木の実を与え |
| 温かい巣穴のために有り余る落ち葉を用意してやります。 |
| 冬の厳しさを一番知っている彼らが |
| こうして寄り添って生きようとしている・・・・・・・ |
| 何だか いい話ですね。 |
| 掟 |
| 人を好きになるという感情は |
| この世に生まれてきたものが等しく共有する摂理であろう。 |
| もしもこの感情がなかったら |
| 星の数ほどいる地表の人間のだれとも絆を築くことができない。 |
| だから だれだって人を好きになることができる。 |
| しかし、 |
| 好きであり続けるためには |
| 相応の努力と情熱がいる。 |
| だれもが一応知っているが 理解するのがむずかしい掟である。 |
| 幸せ |
| 静かに時が流れていると感じられるときは |
| 小さな幸せが訪れていると思うべきです。 |
| 他人から見れば笑われそうな ほんの小さな出来事が |
| 私を 信じられない密度で満たしてくれます。 |
| そんなとき もしも鏡を見れば |
| きっと私は素敵な顔をしているのでしょうね。 |
| そして やさしい目をしているにちがいありません。 |
| 嵐のように過ぎ去った時の流れを思い出しながら |
| ほんのささやかな 小さな幸せを味わう時間があっても |
| いいんじゃありませんか。 |
| だれも傷つけることなく 慎ましく生きようとしている 自分への |
| ご褒美だと思って・・・・・・ |
| 輝き |
| あのころを思い出せば 胸が熱くなる・・・・・ |
| そんな時の流れの中の1コマを持っている人は幸せです。 |
| 夢を追い求めて 一切の見返りを求めず駆け抜けた時間・・・・ |
| 愛しい人に静かに想いを馳せ |
| その人にふさわしい自分であるのかと問い続けた時間・・・・・ |
| 友と語らい 酒を飲み |
| ともにこれから立ち向かう「社会」という相手に闘志を燃やした時間・・・ |
| 大切な人との別れの中で |
| ともに過ごした時の重みに打ちのめされた時間・・・・・・ |
| 一つひとつは断片的な思い出でも それらを全部ひっくるめて |
| 実は「わたし」の人生だったのですね。 |
| そう思えるようになったら |
| 年老いたなあ などと思わずに |
| 輝いていた時間が自分にも与えられたことに感謝しながら |
| もう一度輝ける路をこっそりさがしてみましょう。 |
| 共感 |
| 同情と共感はまったく異質のもの。 |
| 同情されると傷つくことがあるが 共感されても腹は立たない。 |
| いったい何が違うのか・・・・・・ |
| 突き詰めれば 相手が自分と同じ土俵の上にいるかどうか |
| 似たような境遇にいたり 同じ経験をしたりすれば |
| 目の前の人にかける言葉はおのずから変わってくる。 |
| 気休めの同情は 苦しい中でも必死で守ろうとしているプライドまで |
| 容赦なく剥ぎ取ろうとする。 |
| 相手が自分と同じ土俵にいるかどうかを |
| 打ちのめされ 心に傷を負った人間が一番間違いなく |
| 嗅ぎ分ける。 |
| 残されたもの |
| 人は人生のゴールの灯が遠くに見え始めると |
| 自分に残されたものが少しずつ はっきりと見えてくる。 |
| 若いころは気にもしなかった我が身の余力が |
| あと どれほどか、知らず知らずの間に推し量っているし、 |
| 現役でまだばりばり仕事をこなしていても |
| 心の深いところでは 人知れずひそかな計算が始まっている。 |
| だが 落ち込むことはない。 |
| ゴールにたどり着く準備は 必ずしなくてはならないのだから・・・・・ |
| 残された時間、体力、気力、そして命と折り合いをつけながら |
| 今日を生きればいい。 |
| 準備 |
| 人は手に入れたくてもそれが叶わないとき |
| その短所を見つけて自分を納得させようとする・・・・・ |
| 「酸っぱいブドウの論理」と心理学では言う。 |
| 食べたいのだが手の届かないブドウを見て |
| 「あれは酸っぱいからだめだ。」と自分に言い聞かせてあきらめる心理のこと。 |
| ブドウを「夢」に置き換えると 実によくわかる。 |
| 自分で見つけた夢なのに |
| それにケチをつけてあきらめることはよくあることだが |
| 本当に手に入れたければ |
| 遠回りでもハシゴを作る準備をすればよい。 |
| 手が届かないのが原因なら |
| そうするしかない。 |
| 目線 |
| 上の雪 さむかろうな |
| つめたい月がさしていて |
| 下の雪 重かろうな |
| 何百人も載せていて |
| 中の雪 さみしかろうな |
| 空も地べたもみえないで・・・・・ |
| 金子みすず |
| この稀有の詩人の感性のすごさは |
| 最後の2行にある。 |
| 上や下にあるものには 誰でも思いが至る。 |
| だが |
| 中にあるものがどんな思いでいるかという視点は |
| 誰もが持てるものではない。 |
| 生きることの哀しさを一度でも味わったものだけが持てる |
| 研ぎ澄まされた 静かで温かい目線である。 |
| ロマンチスト |
| 「おまえはロマンチストだ。」って言われたって? |
| そりゃあ その人の言うとおり 痛い目に遭うこともあるけど |
| ロマンチスト、大いに結構じゃないのかな。 |
| 厳しい現実にあえて目をつぶって 遠くの夢にあこがれるのも |
| ひとつの能力だと思うんだが・・・・・・・ |
| 夢を持ち それに向かって歩くことのできない連中の |
| ひがみだと思って 聞き流しておけばいい。 |
| 君は今の君のままでいいんだ。 |
| そして 死ぬまで君らしい夢を見続けろ。 |
| 自分の人生が輝いていたかどうかは |
| 人に決めてもらうのではなく 最期に自分で決めるものだ。 |
| 楽しい夢を見させてもらった・・・・・ |
| そう言い残せればいいだろう。 |
| 貫く意思 |
| 蔦(つた)は 遥かに見上げる壁でも上ることをためらわない。 |
| 樹根は 厚い岩盤の下にある土を求めて伸びることをためらわない。 |
| 上であれ、下であれ |
| それを使命と心得るものは 一途に貫く意志をもっている。 |
| こんな所は上れない、こんな所は掘れないとやる前から尻込みするのは |
| おそらく人間だけではあるまいか。 |
| 涓滴 岩をも穿つ(けんてき いわをもうがつ)・・・・・ |
| 雨だれの一滴でも 一途に貫く意志をもてば岩にも勝る。 |
| やると決めたらとことんやってみる・・・・・ |
| 雨だれに負けるわけにはいかないだろう。 |
| 老い |
| それまで普通だと思っていたことが |
| ある日もうできなくなっていることに気づく・・・・・・ |
| 認めたくはないが「老い」を悟る瞬間だ。 |
| 気力、体力、情熱・・・・対象はさまざまだが |
| まちがいなくその瞬間はやがて誰にでもやってくる。 |
| 来るべきものが来たかと苦笑いするもよし |
| 受け入れることを拒み 抗ってみるもよし |
| そのうち自分の置かれている状況が次第にわかってくるのだから |
| あわてて右往左往するのは無駄な努力だと心得たい。 |
| 枯れていくことを嫌がる草花はない。 |
| 岐路 |
| 岐路に立っているんですね。 |
| さて、どちらへ行こうかと思案が続いているんでしょう? |
| 右へ行けば 心休まる景色はないけど、まっすぐな道が約束されます。 |
| 左の道をとれば、野の草花に覆われた、先の見えない曲がり道が続きます。 |
| 道を選ぶ決め手となるものがあるとすれば |
| 本当は欲しかったのに、守るべきもののために |
| これまで我慢してきたものはなかったのかと自分に問い直すことでしょう。 |
| 欲しかったものはどちらの道にありそうか・・・・・・・・ |
| それを考えてとりあえず一歩を踏み出すことです。 |
| 未練 |
| ふんぎりをつけなくてはならないのに |
| なかなか決断ができない・・・・・・・ |
| そんな状況を「未練」と言います。 |
| 読んで字のごとく 「未だ 練られず」と解釈しましょう。 |
| 異質のものを混ぜ合わせるときに |
| よく練らないと均一にならないように |
| 心の中にある いろんな思いや気持ちをうまく整理しておかないと |
| それぞれが勝手に自己主張を始めてしまいます。 |
| 折り合いをつけたり あきらめたり 理屈をつけて納得したりと |
| 方法はどうであれ とにかく |
| 心の中を均一にすること・・・・それが肝要です。 |
| 時間 |
| あなたと共に過ごした時間があった・・・・・・ |
| それだけで 頼りない私でも生きていけそうです。 |
| いまさら「ありがとう」は陳腐だけど |
| かけがえのない 時の流れの中で |
| あなたに出会えたことに感謝しながら |
| 生きてみます。 |
| 点 |
| 喜びも哀しみも 過ぎてみれば一つの点でした。 |
| ありったけの情熱を傾けた仕事も |
| 持ち得るすべての愛情を注いだ恋も |
| 人生では 一つの通過点だったのだとわかり始めたとき |
| ようやく これから進むべき道が見えてきたという気がしています。 |
| 何が待ち構えているのかは定かではありませんが |
| とにかく 進む方向だけは指し示してもらったようです。 |
| 思い切って この道を行ってみようと思います。 |
| この決断も やがては一つの点になるのでしょうが・・・・・・・ |
| 形あるものは やがて消えていき、何もなくなったところから |
| また新しい生命が生まれる・・・・・・ |
| 人の世はこの繰り返しだという教えがあります。 |
| 色即是空 空即是色 |
| そろそろ 色を捨てるときが近づいてきたようです。 |
| 後悔 |
| 結果はうまくいかなかったが とにかく |
| やれることはやったという思い・・・・・・・・・ |
| 失敗してもいいから あのとき |
| やれるだけのことをしておけばよかったという思い・・・・ |
| どちらも日常の中で 誰もが経験するものだ。 |
| この二つの記憶には 大きな違いがある。 |
| 前者は やがて薄れていくが |
| 後者は なかなか消し去ることができない。 |
| 人は 行動した結果の後悔より |
| 行動しなかったという後悔の方が |
| 深く心に残る。 |
| 音 |
| その昔 西洋音楽は数学で成り立っていると教わった。 |
| 音符の長さや音程の違いは 実に見事な数字で表されることを知った。 |
| ふだん何気なく歌ったり 聴いたりしている音楽の中には |
| 驚くべき法則が隠されている。 |
| だが もっと驚くのは |
| 生まれたばかりの赤ちゃんの産声は |
| ハ長調の「ラ」の音程で、しかも世界共通なのだという。 |
| 今急にその音程の音を出してみろといわれて まともに出せる人は少ない。 |
| しかし、遠い昔だれもが驚くべき精度でこの音を体内に持っていた。 |
| 音楽を聴くと心が癒されるのは きっと |
| 昔持っていたあの音にめぐり合えているからに違いない。 |
| 絆 |
| 最近よく思うんです。 |
| 46億年というこの星の歴史の中で |
| ほんの一瞬でも ともに同じ時間を共有することができたんですね。 |
| すごいことじゃありませんか。 |
| あなたも私も やがて時空の彼方に消えていく運命ですが |
| この大地に刻める記憶をほんの少しでも残せたことを素直に喜びましょう。 |
| 出会うこともなかったはずのあなたと不思議な縁でめぐり会えて |
| ささやかな絆を持てたことに感謝しています。 |
| この絆が どうかあなたにとってもいい想い出でありますように・・・・・・・ |