道標

           道標   
    やさしく在れ
    どんなときも やさしく在れ
    限りなくやさしく在れ
       まっすぐに生きる人に出会ったら
       その余分なものを持たぬ生き方に 心が震える人で在れ
    笑顔の美しい人をみたら 
    その中に魂の輝きが見える人で在れ
       無邪気な子らの歓声が聞こえたら
       我も童心に帰れる人で在れ
  心のとびらを固く閉じていては
  あふれる陽光はどこから差し込めばいいのか・・・・・
  やさしさとは 生命にたいする畏敬を我が身の中にしかと刻むこと
  どうしようもなく 自分が醜く見え始めたら
  大地に体を横たえて ふり注ぐ天空のやさしさを呑み込めばいい
  いくら探しても見当たらぬと あきらめかけていた道標は
  手を伸ばせば届くところにあるだろう
  何の見返りも求めず 素直な自分に立ち返れ
      それでいい  それでいい



              祭りの後
         忘れかけていた記憶がふと甦る
         もう二度と あんな時代には戻れないと  
         通り過ぎていった私の時間を何度見送っただろう
         後ろを振り返るな 前を向いて歩けなどというのは
         苦しい上り坂で言うせりふ・・・・
         峠を越えた今では ちょっと格好よすぎるんだよな・・・ 
         後ろを振り向いて 自分の歩んできた軌跡を確かめるのも
         下り坂で転ばないための 大事な歩き方
         狂ったような夏が去り 痛めつけられた傷口を癒す秋風が
         肌にやさしく感じられたら そんな時間を持つのもいいだろう 
         祭りの後の寂寥感も まんざら捨てたもんじゃない



                     幼きもの     
         およそ 命あるものの誕生間もない姿の愛らしさ
         おぼつかない足取りで 必死に親の後を追いかけるその姿に
         表現できない感動を覚えるのは 何故か・・・・・・・・・・
         遠い太古の昔から 種の保存のために営々と築かれてきた 
         我が子を慈しみ 守ろうとする父性や母性の本能が
         種は違っても 同じ幼子に投影されているとは考えられないか・・・・・・  
         外敵から身を守る術を知らない幼子たちを 
         守ろうとする大きな力が わたしの中に息づいているとは言えないか・・・・・
         幼きものがかわいいと感じたとき
         壮大な宇宙の中に仕組まれた 偉大なる叡智に思いを致すべきかもしれない
         幼きもの 
         それは紛れもなく わたしが生きてきた「生」の原点に横たわる
         したたかな道標である



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