生理学的春山スキーツアー講座
なるほど・・というのを本からご紹介致します!



ううぅーっ、フトモモに乳酸がぁー・・・
そう、よく聞く「乳酸」。筋肉にこれが溜まると疲れるんです!まずはエネルギー源のブドウ糖。酸素が十分であれば、水とニ酸化炭素に分解され、その時にエネルギーが生産されるという仕組み。問題となるのは、その酸素が不足した場合!ブドウ糖は嫌気性解糖という生産により、乳酸に変ります。しかもその時に生じるエネルギーは前者の20分の一!ハァ〜・・。で、このたまった乳酸はどうなるかというと、血液の流れに乗って筋肉から排除され、肝臓で代謝されるわけですが、これも程度の問題!量が多いと追いつかず、筋肉にのこり、筋肉が硬くなっていくというわけ・・。
酸素が不足:エネルギー効率の良い呼吸法
一般にする胸式呼吸。登山やスキーの登りなど多くの酸素を必要とする場合には、補助呼吸筋といって、肩のまわりの筋肉も使って、呼吸の手助けをします。「肩で呼吸する」というのがそれ。通常より酸素の取り込みは良くなるものの、筋肉を動かすためのエネルギー消費量も増えるわけで、効率的にはノーグッド!さらにザックなんか背負っている場合には、それだけで相当なエネルギーを使います。そこで今回お勧めなのが、「腹式呼吸〜」!腹式呼吸は横隔膜を上下に動かす方法だから、まず筋肉をあまり使わなくて良い!具体的には、お腹をふくらませて息を吸い込み、へこませて息を吐く〜。なかなかうまくいかない人は仰向けになり、お腹の上に1〜2キロの重りを置き、それを持ち上げるよう呼吸してみるとよいかも・・。で、もうひとつおまけに、息は鼻から吸って口からはくこと!しかもはくときは口をすぼめましょう!!一気にはくと肺に空気が残っちゃうんですね。この残気量が多いと、肺活量が小さい事と同じになってしまいます。ですから口をすぼめることにより肺にバックプレッシャーをかけ、全部出しきっちゃおうというわけ。鼻から吸うのは、加温、加湿、防塵のため。
代謝:たまった乳酸を早く代謝させたい〜
といって、じっとしていれば良いかというと、さにあらず!ある程度運動してた方が早いんですね。どの程度かというと、頑張って運動する量の半分くらい!?よくスキーの後に軽いジョギングなんかしているのを見かけますが、そのくらい。最大の乳酸蓄積時に腰を据えての冷え冷え生ビール一気飲み・・・あぁー耳が痛い(笑)!
乳酸:興味のある方は・・
乳酸測定器「ラクテート プロ」 \65000という、高価なマニアック向けなものもございます・・・
筋肉が硬くなっていく:過換気症候群と筋ケイレン
急な登りとか、人に遅れまいとオーバーペースになったりするときなんかに、突然呼吸が苦しくなったり、両手がしびれたりするのが「過換気症候群」。必要以上に呼吸が速くなることにより二酸化炭素が過剰に排出され、それによって血液がアルカリ性に傾いて起こるわけです。そんな時は切れ目を入れた紙袋やビニール袋を口にあて、自分のはいた息を吸うことによって、二酸化炭素を取り戻し、OKです。酸素不足は「筋ケイレン」も引き起こします。その代表はふくらはぎ。「つった!」という時は、足関節を上に曲げ、ふくらはぎの筋を2分間引き伸ばし、1分間休む・・これを繰り返すと良いようですよ!
エネルギー:靴を履くか背負うか?
こんなデータ-があります。「同じ重さのものを、足につけるのと背負うのでは、足につけたほうが6倍ものエネルギー消費となる」・・。林道に出たらスキーブーツは背負い、運動靴で歩けってことですか!
ん〜、水・・・
水のサイクルを簡単に申し上げますと・・口から入った水分は、消化管を通り、大腸で吸収されます。大腸に吸収されるということは、血管に入るということで、血液の液性分となるということです。ですから、もし血管内に水分が不足していると、とことん大腸で水分を吸収してしまうので、便は硬くなり、便秘傾向となります。さて、血管内に入った水分はやがて循環して腎臓でこされ、尿となります。このとき脱水気味ですと、こされた尿中の水分がもう一度再吸収され、血管にもどりますから、気付くとトイレに全然行っていない・・ということになるわけです。春山は結構汗をかきます。脱水症状にならないように、水はこまめに適量飲みましょう、ということです!
消化管を通り:胃を通過する速度?
緊急に水分補給をしたい場合、大腸まですばやく水が到達しなくてはいけません!しかしながら実際飲んでみてその到達を自覚できるのは、胃に入るまでではないでしょうか?実は胃から大腸まで流れるにあたって、なんでもかんでもスッといくわけではないんですね!例えば温度が高いものはダメ。糖分の多いものもダメ。それに塩分が加わるとさらにダメ!塩分や糖分が多く含まれ、浸透圧が高くなった飲み物は、胃を通過しにくいんですねぇー。ですから、早く水分を補給しようと思ったら、5℃くらいの冷水がいいみたいですよ!
春山は結構汗をかきます:電解質?
汗とともに失われるのが電解質(塩分など)と呼ばれるもので、重要なのはナトリウム。1リットルの汗で3グラム、だいたい茶さじの半分くらいの塩分が流れます。まあ失われるものですから補給しときましょう!他にカリウム・マグネシウム・カルシウム等がありますが、これは少量ですので、オレンジジュース一杯で十分ということです。
水はこまめに適量:食事前のがぶ飲みはダメ!
僕の知り合いなんですが、食事前に必ず大ジョッキで水を飲む、という変なクセのある人間がおります。彼曰く、ダイエット!そうなんです、食前の多量の飲水は胃液を薄めるため、消化吸収が悪くなり、また、食欲もなくり・・・という構図らしいのですが、少なくとも山ではやってはいけませんね!もちろんビールもね・・・ありゃりゃ!
冷えにたいしてあれこれ・・
さて、体の中で生産された熱を運ぶのが動脈血。ですから動脈から熱が奪われるという事があっては、それこそ体温低下はまぬがれません!気をつけなくてはいけない場所は、動脈が体表面を走っているところ・・つまり触って脈をとれる個所!そのなかでよく露出されるのは首かな?ネックウォーマーで随分違う感じはしますよね。あと、動脈ではないのですが、肛門周囲は静脈が密集して体の中心温度が下がらないようにしている場所です。立っているときはお尻の筋肉で保護されていますが、座った時に下が冷たいと、急速に体温が奪われます。ちょっとした休憩、断熱効果のあるものを敷いて座りましょう!!そして最後は頭。脳は熱生産が多く、また体全体の放熱量の3分の1を頭で請け負います。こめかみの所に浅側頭動脈も走っていますし、でもその割に寒さを感じ難いというのも事実・・。実は頭、温度の変化に弱く、脳に障害があらわれたりしますので、しっかり温度調節しときましょう!


つづく・・