黒部 源流 釣り フライフィッシング 薬師沢 小屋 岩魚

黒部源流釣行 vol 2  2003年9月25日-27日
フライフィッシング(以下FF)を始めて2年、ついに黒部源流、憧れの地に足を踏み入れた。事前に本やホームページで調べてみると、まず真っ先にその魚影の濃さについて多くの人が触れている。そして次にはたいがい「爆釣〜♪」となっていくわけだが、果たしてそれはそのままこちらにも当てはまった・・・。
初日はあいにくの雨模様。雨脚は強い。太郎平から沢への急傾斜の登山道は水路となり、流れ込む薬師沢もコーヒーブラウンの濁流と化していた。「今日はフライ無理か・・」誰もがそう考え、今日の宿泊先「薬師沢小屋」を目指し黙々と歩を進めた。小屋に着いたのが14:00.折立を7:30に出たわけだから6時間半かかったことになる。小屋の前、まさに軒先は薬師沢と黒部川本流の出会いとなっており、状況は変らず濁流激流の様相を呈している。そんななか小気味よくフライを振っている人を見かけ、「釣れますか〜?」と上から尋ねると、「ハイ、釣れます!」と応えてくれた。「濁ってても大丈夫ですか〜?」と再び尋ねると、「ハイ、大丈夫です!」「どんな時でも釣れます!!」としっかりした口調、笑顔で応えてくれた。彼が小屋のご主人、坂本さんだった。「どんな時でも釣れます!!」・・・・黒部初心者の僕にとって、これはにわかには信じ難いことに思えた。
信じられないことは早速翌日、目覚めと共に起こった。「おぉ??」、川が透明で穏やかな流れになっている!!雨は昨晩、眠りに付く時間までは確かに降っていた・・・それが一晩明けて平水に戻るとは・・・?常識では考えられないこの素早い変わり身・・これが源流帯というものなのか。とにかくお天気も良く、水も透明に戻ったので、我々にとって願ってもない最高のコンディションとなった。
しかしなんと素晴らしい渓相だろう。そしてこの魚影の濃さは・・。釣るまでもなく、歩いているだけで魚が足元を走る。一つの淵には数匹の岩魚が群れており、それがまた上からよく見える。淵が大きくなるとそれは十数匹となり、大きな流れ込みと重なった場所などゆうに数十匹・・・うーーん、まったく竿を出す前から圧倒されて困ってしまう。これでフライを落として食いつかないかというと、これが片っ端から食ってくる!一匹引き上げて同じ場所に投げるとまた掛かる。また投げるとまた掛かる・・また・・また・・また・・。
こんなわけで最初の20匹はあっという間に釣れた。「釣れた」というよりも「釣れ過ぎた」。そして「釣れ過ぎた」ことが同時に、あっという間に僕のテンションを引き下げた。急激に釣りが面白くなくなった・・。
今までFFは能動的なものだと思ってきた。魚の潜んでいる場所を考え、居そうと思ったところに合ったフライを投げ込み、そこでドンピシャ、パシャッ!とくるわけだ。魚はもちろん隠れていて見えないから、想像力を働かせ、いつ飛び出してくるかを緊張して構えることになる。いずれにしろ気分的にでもこちらから攻めている。さて・・・黒部はどうかというと、フライを投げ込む動作こそは「攻め」となるも、こんなにどんどん、しかも堂々と掛かってこられる状況は・・なんというか・・まるで「攻め込まれて」いる気分になってくる(?)。受身!魚に煽られている状況・・。この感覚の戸惑いを通常に受け入れるのに小一時間ほどかかったかな。釣るのを一旦止め、皆の釣っている様を眺め、高巻きなどしているうちに・・また「さて!」という気持ちになってきた。このことは後から振り返ると、「単に考え過ぎだったかなー?」とも思えるのだけど、黒部の洗礼を受けたと思えばそれもそのように思えるのだった・・。
気分一新、相変わらずあまりに釣れるのでフックをバーブレス(反しの無い針)に交換。いつもやっているように、ゆっくり丁寧にポイントをついて進むことにした。直後、大きな瀬の脇、小さな流れ込みの底から尺上サイズ(写真右上)が上がった。結局2日間を通して尺上はこの一本だったが、アベレージは23cm〜27cm。岩魚の様相はというとおおまかに分けて三タイプ。まずは普段慣れ親しんだ日光岩魚。岩魚らしい模様が美しい。そしてその真っ黒タイプ。大きさに関係なく黒いものはすっかり黒い!?そして「黒部らしいなぁ〜」と思ったのが、頭と口が際立って大きく身体は細い、まるで深海魚みたいなタイプ。胸びれと背びれが通常の倍以上はあり、「これはきっと激流に対応したカタチなんだろーなー」と感心してみていたが、もしかして岩の上を這って登るための進化なのでは・・と、思ってもみたりして(・・んなわけないか 笑)。
今回は2泊3日だったので、真ん中の日と最終日の午前を釣りにあてることが出来た。釣果はもちろん、景色、渓相、小屋、どれをとっても満足な釣行だった。帰りは始まりかけた紅葉を眺めながらのゆっくり下山、17:30折立着。白樺ハイツの温泉に入って汗を流し、魚津のきときと寿司で夕飯、栂池には21:30到着。
岩魚が当たり前のように堂々と主として沢に群れる光景・・、これは単に自然環境からだけの成り立ちではなく、高山植物同様、黒部の岩魚を守ろうという方々の手の入ってのことだという。作業には敬意を表したいし、また来年、同じように岩魚と美しい景色がそこにあることを期待したい。最後に、今回誘ってくれた「かむるーぷす」の湯浅さん、そして釣行に参加された皆さん、どうもありがとうございました♪来年は是非ニ回は行きたいところですね(笑)!
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